仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダーX』が、2020年3月11日にBlu-ray BOX1として、東映ビデオより発売される。最新デジタル技術によって鮮明画像で全35話がよみがえるほか、映像特典として主演の仮面ライダーX/神敬介役・速水亮と、仮面ライダーXのスーツアクターを中屋敷哲也と共に務めた大野剣友会の新堀和男(現:レッド・エンタテインメント・デリヴァー代表)の対談&単独インタビューが収録される。12月3日にはBlu-ray BOXの発表会見が東映ビデオにて行われ、速水と新堀がマスコミ取材に応じた。

  • ガッチリ握手を交わす新堀和男(左)と速水亮

『仮面ライダーX』は、1974年2月16日から10月12日まで全35話を放映した連続テレビドラマで、『仮面ライダー』(1971~1973年)『仮面ライダーV3』(1973~1974年)に続く「仮面ライダーシリーズ」第3弾である。

巨大な悪の組織「GOD機関」に科学者の父・神啓太郎と共に襲撃された青年・神敬介は、瀕死の父の手によって深海開発用改造人間(カイゾーグ)=仮面ライダーXとなって甦った。仮面ライダーXはそれまでの1号、2号、V3と同じく風力をエネルギーとしながら、太陽エネルギーをも体内に取り込むことができるハイブリッドな仮面ライダーである。

前作『仮面ライダーV3』の終盤より登場した4号ライダー「ライダーマン」のコンセプト(仮面の装着をシステマチックに描写する/特殊な戦闘ツールを用いて怪人と戦う)を発展・強化させたXライダーは、全体にメカニック性が強くアピールされている。変身ベルト「ライドル」の腰に付いている「レッドアイザー」と「パーフェクター」を組み合わせるセット・アップ(セタップ)という変身方法や、万能武器ライドル(ライドルスティック、ライドルホイップ、ライドロープなどに変化)は、Xライダーの独自性として子どもたちの興味を引く要素となった。

Xライダーの戦う敵であるGODの怪人にも、それまでのシリーズでは見られなかった特色が与えられた。GOD怪人はみな、ギリシア神話に出てくる神々や英雄・豪傑たちの名前や属性を備え、そこに動植物のモチーフが加わることにより、独創的な「神話怪人」が誕生している。第9話よりGOD秘密警察第一室長のアポロガイスト(演:打田康比古)が登場。Xライダーの強力なライバルとして何度もその行く手を阻んだ。

第22話からは新展開となり、GODに君臨する大巨人「キングダーク」とGOD悪人軍団が登場。暗い洞窟に巨体を横たわらせ、鋭い眼光を輝かせるキングダークの威容には強烈なインパクトがあった。悪人軍団とは、歴史上にその名(悪名が多い)をとどろかせた人物と動植物を合体させた怪人のことで、カブト虫ルパン、ガマゴエモン、ヒトデヒットラー、クモナポレオン、カメレオンファントマといった個性豊かなキャラクターがぞくぞくと現れ、Xライダーを苦しめている。

速水亮は大映ニューフェイスとして俳優の道に進み、当初は「炎三四郎」をはじめとするいくつかの芸名を用いていたが、『仮面ライダーX』主役に選ばれたのを機に、速水亮と芸名を定めた。速水は『仮面ライダーX』で神敬介を演じていた当時をふりかえり「撮影現場にはほとんど女性がおらず、男ばっかりだった。ゲストで来る役者だって、子どもかジジイですから(笑)」と、華やかさに少々欠ける男くさい撮影環境だったことをジョークまじりに嘆いた。

新堀和男は10代で大野剣友会に入門し、日々立ち回りの稽古を重ねて「後楽園ゆうえんち野外劇場」(現:東京ドームシティシアターGロッソ)のヒーローショーや『仮面ライダー』の撮影現場で激しいアクションに明け暮れていたという。Xライダーは前作『仮面ライダーV3』に続いて中屋敷哲也が演じていたのが、途中から当時18~19歳だった新堀に交代している。その後、数々のヒーローアクションを華麗にこなして"レジェンド"と呼ばれる存在となる新堀の、テレビレギュラーのヒーロー初登板がこのXライダーだった。新堀は「右も左もわからない若手のころだったから、頭の中がパニックになるような感覚が思い出されました」と、当時を回想してしみじみと語った。

速水は新堀をはじめとする大野剣友会メンバーが見せる命知らずのアクション魂に当時驚きを感じたと言い「そこから飛び降りろ、とカシラ(高橋一俊)から言われると、みんな『ハイッ!』って、まるでタバコでも買いにいくみたいに気軽な感じで飛び降りるんだよ。俺もそういうのを見ていると刺激を受けてね、こいつらに負けちゃいけないと思って危険なこともがんばった」と、自身も体当たりでヒーロー・神敬介を演じていたことを明かした。

『X』で身についた「アクション」の経験が以後の仕事にも役立ったと語る速水は「京都で『銭形平次』に出演したとき、殺陣師の人が『よし、今日は仮面ライダーの立ち回りでいくで!』なんて言ってさ、何も文句を言われなかった(笑)」と、立ち回りに厳しい京都の映画人も納得のアクションをこなすことができたと笑顔を見せた。

思い出に残るアクションは?という問いに対して速水は「第8話で敵を投げ飛ばしたとき、フィルムでは相手をつかんで投げるところで切れているけど、実際は勢いあまって3メートル下に頭から落っこちてるんですよ(笑)」と、映像で観ることのできるOKカットの"その次"の光景を苦笑しながら説明した。

『X』を終えた速水は、『仮面ライダーストロンガー』(1975年)『仮面ライダー(新)』(1979~1980年)にゲスト出演した後『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(2014年)で数十年ぶりに「昭和ライダー」の神敬介を演じ、「平成ライダー」の仮面ライダーファイズ/乾巧役の半田健人と共演した。速水はこのときの撮影をふりかえって「現場スタッフのなんと優しいこと! 一回テストが終わると、メイクさんや衣装さんがバーッとかけよってきて、出演者にコートをかけてくれる。『X』の当時はあんなこと絶対になかった(笑)」と、1974年当時の過酷さとまったく違う、現在の撮影環境に感激するようすを見せた。

高画質のBlu-rayとして甦った『仮面ライダーX』について、新堀は「先輩の中屋敷さんと俺がXライダーを演じているので、画面を観ながら"どっちのXだろう"なんて思ってくれたら」と、若き日に全力を尽くしたヒーローアクションをじっくり観察してほしいと語った。速水は「役者というのはカメラが回っている中で、いかに緊張せず自然にセリフが言えるかが大事。仮面ライダーの現場では、カメラの前で演技をするのが"日常"になるくらい一日中撮影をしていたので、若手俳優にとって一生ものの財産になった」と、仮面ライダーの現場で役者として鍛えられたことを強くアピールし、改めてBlu-rayで仮面ライダーX/神敬介の激闘を観てほしいと多くの仮面ライダーファンに呼びかけた。

『仮面ライダーX』Blu-ray BOX1は2020年3月11日より、東映ビデオにて発売。映像特典として、速水亮インタビュー、新堀和男インタビューを収録。そして5月13日発売のBOX2には速水亮・新堀和男スペシャル対談が収録される。

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