神戸市の小学校で起こった教員のいじめ問題に、胸を痛めているビジネスマンも多いのではないだろうか。報道されている悪質な嫌がらせや暴力行為の数々は、事実であればとても見過ごせるものではない。どの職場でも起こりうる可能性がある"いじめ"の問題。今回、神戸市で起こった問題を例に、"職場いじめ"がどのような罪に問われるのか、弁護士法人 法律事務所オーセンスの中村穂積氏に意見を伺った。
神戸市の公立小学校で、30代から40代の教員4人が同僚の教員に対しいじめを行っていたとの報道がなされています。深刻な事態に文部科学省の亀岡副大臣らが今月15日、市教育委員会を訪れて早期の事実解明と加害者の厳正な処分を求め、市教育員会は調査委員会を設置し、背景や組織風土を解明する事態となりました。
報道によりますと、首を絞められた、羽交い絞めにされて激辛カレーを食べさせられた、コピー用紙の芯でお尻を叩かれた、別の女性教員に性的メッセージを送るよう強要された、「ボケ」「カス」等の暴言を受けた、被害教員が担当する学級の子どもに「言うことをきかんでいい」旨発言された等の被害の訴えがあったとされています。
現在事実関係は調査中ですので、刑事処分につき推測や断定をするのは慎重でなければなりませんが、仮に上記に挙げた被害申告事実が真実であったとして、成立を検討しうる刑法上の犯罪としては、下記のようなものが挙げられます。
暴行罪は、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときに成立しますので、首を絞められた、羽交い絞めにされて激辛カレーを食べさせられた、コピー用紙の芯でお尻を叩かれた等の行為は暴行罪の成立を検討することとなりますが、このような行為の結果、本人が怪我をしたような場合は傷害罪成立が検討されることになります。
また、傷害罪は必ずしも手段は暴行によるものでなくともよいので、精神的に負荷のかかる行為を継続する等により本人がPTSD等を発症した場合は傷害罪の成立が検討されることになるでしょう。他に、性的メッセージを送るよう強要されたのであれば強要罪が、また誹謗中傷行為は場合によっては名誉棄損・侮辱罪も問題となりえます。
そして、これら一連のハラスメント行為については、民法上は不法行為責任が問われる可能性があります。事情によっては、神戸市も責任を問われることになります。今後、確定された事実関係によっては、免職という厳しい懲戒処分を受ける可能性もあります。
今回の事件では、被害者が事前に管理職に対しハラスメント相談をしたにも関わらず適切な対応がなされなかったこと、神戸市教育委員会が職場でのハラスメント基準や対応マニュアルを作っていなかったことが批判されています。一般企業と同様職員室においてもハラスメントは十分起こり得る事象です。今後二度とこのような残念な事件が起こらないようしっかり対策を講じて欲しいと思います。
監修者プロフィール:中村穂積
弁護士(東京弁護士会 所属)。東京、神奈川、千葉、大阪に拠点を置く、弁護士法人法律事務所オーセンスにて勤務。知財・法務を得意とし、主に企業法務を数多く取り扱う。IT会社法務(上場会社)での勤務経験もあり、ビジネス感覚とコミュニケーション力は抜群。企業内研修をはじめとするセミナー・講演も、毎回ご好評をいただいている。