京成グループ標準車両として、「受け継ぐ伝統と新たな価値の創造」をコンセプトに設計された京成電鉄の新型車両3100形。質実さ、実用本位といった基本思想を大切にしつつ、空港アクセスを担う車両として新たなデザインや設備を採用している。10月10日の報道公開にて、3100形の概要説明も行われた。

  • 京成電鉄の新型車両3100形。3151編成は日本車両が製造(写真:マイナビニュース)

    京成電鉄の新型車両3100形。報道公開された3151編成は日本車両が製造した

新型車両3100形は、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、2020年4月からバリアフリー整備ガイドライン(望ましい整備内容)の対応が必要となることを踏まえ、成田スカイアクセス線を走行するアクセス特急の車両として導入される。今年度は8両編成を2編成、計16両が製造され、既存の3000形7次車(3050形)にならい、車号は3150番台となった。製造会社は編成ごとに異なり、報道公開された3151編成(「3151-1」~「3151-8」)は日本車両(日本車輌製造)が製造。一方、3152編成は総合車両製作所の製造だが、日本車両の設計をベースとしており、外観はほぼ同一だという。

3100形の車体寸法は、1両あたり長さ18,000mm、幅2,845mm、高さ4,050mm(パンタ折りたたみ時)。先頭車の1・8号車は「M2c」で各33.6トン、中間車の2・7号車は「M1」で各34.2トン、3・6号車は「T」で各28.0トン、4号車は「M2」で31.5トン、5号車は「M1’」で33.8トン。パンタグラフは5号車に1基、2・7号車に2基ずつ設置した。

先頭車は絞りや折りを取り入れた形状とし、急行灯・尾灯は前面上部から降りてくるラインに合わせたシャープな形状に。空港への速達輸送を担う車両としてのスピード感を表現するとともに、成田空港方面の別ルートである京成本線との誤乗車防止のため、車体外板に成田スカイアクセス線の案内カラーであるオレンジ色を採用した。

  • 3100形の外観はオレンジを基調にデザイン。飛行機や沿線各所のイラストもアクセントに取り入れた。急行灯・尾灯や車外の表示装置はLED化されている

外観デザインのアクセントとして、京成電鉄の従来カラーの赤・青を用いたイメージイラストを車体に描いた。1両あたり片側3カ所ある乗降扉のうち、左側の扉付近に「千葉県側からの富士山遠景」、真ん中の扉付近に「浅草雷門とスカイツリー」、右側の扉付近に「成田山新勝寺」をデザイン。飛行機のイラストは1~4号車が成田空港方面、5~8号車が京成上野・押上・羽田空港方面に機首を向けてデザインされている。

急行灯・尾灯はLED化され、前面・側面の表示装置もフルカラーLEDを採用。側面の表示装置は縦192mm・横768mm(従来の3000形は縦128mm・横576mm)に拡大され、視認性向上に加え、4カ国語表示や駅ナンバリングの表示も可能とした。

3100形の定員は、先頭車の1・8号車が各122名、中間車の2~7号車が各133名。8両編成の合計で1,042名となる。車内はオールロングシートで、座席の背もたれに3000形より170mm程度高いハイバック仕様を採用。一般席の生地は外観カラーに合わせたオレンジ、優先席は青系の配色とし、ともに日本を象徴する桜と千葉県花の菜の花をモチーフとした模様をあしらっている。バリアフリー対応として、中間車に車いす・ベビーカー利用者向けのフリースペースを設置し、腰当てと一体化した2段手すりも用意。先頭車には従来と同等の車いすスペースを設けた。

3100形の特徴でもある折畳み式の座席は、先頭車に3カ所、中間車に4カ所ずつある扉間の8人掛け座席のうち、中央2席を使用。座面を上げて折りたたむことで、スーツケース置場として使用でき、1カ所につき大型のスーツケースを3個程度置ける。折畳み式の座席は乗務員室でのスイッチ操作により、座面を上げた状態・下げた状態で一括して固定でき、ロックしていない状態でも手動で座面を上げ下げできる。

  • 3100形の車内。扉間の8人掛け座席の中央2席を折畳み式とし、座面を上げてスーツケース置場として使用できるようにしている

アクセス特急の車両は空港利用者だけでなく、通勤などの一般利用者も多く乗車する。空港利用者から「荷物を手もとに置きたい」などの要望がある一方、大型のスーツケースが通路をふさぐ場合もあり、一般の利用者から「座れない」「不便だ」といった声もあったという。空港利用者の要望も考慮しつつ、空いている時間帯に乗客が着席できるようにしたいとの思いもあり、折畳み式の座席が考案されたとの説明もあった。

座席端部の袖仕切りや車両間の貫通扉にガラスを使用して開放感を持たせ、貫通扉のガラス部分にデザインされた衝突防止用のグラフィックに遊び心も見せる。乗降扉の上部には17インチLCD(液晶)車内案内表示器が2画面ずつ設置され、左側の画面でニュース・天気予報や広告の放映などを行い、右側の画面では停車駅の案内や乗換案内、運行情報等を4カ国語対応で表示。案内画面に「京成パンダ」も登場する。

車内のセキュリティ向上を目的とした防犯カメラは1両につき3台、車内環境の改善を図るプラズマクラスターイオン発生装置は1両につき4台を設置。冷房装置は「屋根上集中式ユニットクーラー(40,000kca/h)、電気ヒーター(6kW)」、暖房装置は「座席 : 下吊り下げ式 車いす / フリースペース : 壁掛け式」とされ、2系列を独立制御とすることで細かな温度調節が可能となり、3000形との比較で編成全体の暖房能力が約1.3倍向上。冬季の寒さ対策にも努めるとしている。

  • 中間車の車端部にフリースペースを設置した

  • 貫通扉のガラス部分にもイラストが見られる

  • 車内案内表示器は2画面。防犯カメラも設置

乗務員室は幅の広い運転台で操作性・視認性に優れた機器配置とし、主ハンドルはT字型ワンハンドルマスコンとして運転士が左右両手で機器を操作できるようにした。マスコンのブレーキは7段に細分化され、きめ細かなブレーキ操作で乗り心地の改善を図る。新たにタッチパネル式モニタを搭載し、行先種別設定や自動放送の操作も可能。貫通扉付近に非常用はしご(手すり付き)が用意されている。

3100形の最高運転速度は120km/h。加速度は「200%定員まで3.5km/h/s(積載条件 : 55kg/人)」、減速度は「200%定員まで初速70km/h 常用4.0km/h/s 非常4.5km/h/s」。ATS装置は「C-ATS装置」、列車無線装置は「大地帰路式誘導無線方式(比較回路付)」、非常通報装置は「押し釦スイッチ式通話回路内臓」とのこと。

台車は電動台車・付随台車ともに鋼板プレス溶接組立構造とし、車体直結式の空気ばね、モノリンク式の軸箱支持装置とユニットブレーキを採用。制御装置は「回生ブレーキ付VVVFパルス幅変調インバータ制御」とされ、装置の小型化・軽量化を図った。主電動機は三相かご形誘導電動機で「140kW 1,100V 96A 80Hz 2,375rpm(1時間)」。高効率な主電動機等により、回生電力を最大限に活用し、IGBTのVVVF制御装置と比べて消費電力を約15%削減するという。乗務員の要望を受け、25km/h以上において定速制御機能も採用した。

その他、制動装置は「MBSA型、抑圧、保安ブレーキ、応荷重装置付全電気指令式電空併用ブレーキ装置(常用7段、非常1段)」、駆動装置は「平行軸可撓接手一段減速方式 歯車比 85/14=6.07」、補助電源装置は「150kVA 静止型インバータ」、二次電源装置は「焼結式アルカリ蓄電池 DC100V50Ah」とされている。空気圧縮装置は「電動機直結駆動スクロール回転式(オイルフリー)」で「実吐出量1,155L/min以上、吐出圧力800kPa」。冗長性を向上させ、低騒音を図るとともに、潤滑油を使用しない環境に優しい仕様とした。

  • 3100形の台車

  • 新型車両3100形は10月26日に営業運転開始予定

  • アクセス特急で活躍する3000形7次車(3050形)

新型車両3100形は10月26日のダイヤ改正に合わせて営業運転を開始する予定。成田スカイアクセス線を走行するアクセス特急を中心に運用され、都営浅草線や京急線にも直通する。品川・羽田空港方面をはじめ、西馬込方面にも乗り入れるという。

3100形の導入ともない、アクセス特急などで運用される現行の3000形7次車(3050形)は代替が計画されている。全6編成のうち4編成はダイヤ改正後、オレンジを基調としたデザインに順次変更。3100形によって置き換えられる2編成は今後、京成本線などで運用される車両と同様の赤・青のカラーリングに変更予定とのことだった。