――今回、山本さんが演じられる石動律花は、たとえ敵であっても命を奪うことを嫌う「優しさ」を持つ女性として描かれています。そんな律花を、山本さんはどのように演じようと思われましたか?

律花と自分を比べると、真逆なところがけっこうあります。ふだんの律花は天真爛漫ですが、自分にそういったところがないので、乗り切れるかな、演じられるかなと不安になることがあったんです。そんなとき、坂本監督を見ていると底抜けに明るくて天真爛漫で……ああ、律花は監督なんだな、と思ってしまって(笑)。坂本監督を最高のお手本にさせてもらって、自然と明るい律花を演じることができましたね。そして律花はとても正義感が強い人なので、演じている自分のほうが精神面で負けそうになってしまうことが何回かありました。それでも律花の芯の強さだとか、大事な人を守りたいという思い、自分の信念を貫き通したいという「役」が私を支えてくれることがたくさんあったんです。身体的な役作りや、こういうお芝居をしようという意気込みはありましたが、やっぱり一番なのは"現場"なんだなって思いました。現場で律花として生きていく上で、役と一緒に自分を高めていく感覚がありましたね。

――正義感が強く、どんな命でも大切にするという信念を決して曲げない律花に対して、常に厳しい態度で接する祖父・石動兵衛(いずるぎ・ひょうえ)を演じられているのが、坂本監督の師匠にあたる伝説のアクションスター・倉田保昭さんでした。倉田さんと共演されて、山本さんはどんな思いを抱かれましたか?

とても緊張しました。坂本監督も横で「ずっと胃が痛いんだ」と緊張をあらわにしていましたから(笑)。凄い方だと知っていますので、倉田先生を目の前にしたときもこちらから何も言葉をかけられなかったです。倉田先生ご自身もおしゃべりな方ではありませんので、撮影の前後でもまったく会話を交わす機会がなかったんです。でも、撮影が終わったときに先生が「お疲れ~!」と明るく話しかけてくださって。その瞬間、私がずっと思っている「アクションをやっている俳優さんに悪い人はいない!」という持論を再確認することができました(笑)。終わってみてやっと、倉田先生は「兵衛と律花との距離感」を大事に思って、あえて会話をしなかったんだなって理解したんです。終わってから「また一緒に何かできたらいいね」とか「アクションがんばってね」なんて言ってくださって、すごく優しさを感じました。本当に感謝、感謝でしたね。

――矢島舞美さん演じる宮(みや)や、大久保桜子さん演じる明里咲(めりさ)と、年齢の近い女性共演者がいらっしゃったことで、撮影を離れたところでどんなお話をされていたのか、気になります。

女の子キャストが多かったこともあって、ほんとうに撮影の合間とかのわずかな時間、ちょっとした"女子会"のような感覚がありました(笑)。矢島さんはふだん、お姉さんみたいな感じで、2月ごろの撮影だったので私が寒そうにしていると「大丈夫?」と優しく声をかけてくださったりして、なんかこっちがついつい甘えたくなってしまうタイプの方でしたね。ですから律花と宮との関係と、ふだんの私と矢島さんとの関係とを比べるとかなりギャップがあったかもしれません。また、明里咲と町へ買い物に出かけるシーンなど、桜子ちゃんと一緒にいるところは私にとってとてもリフレッシュすることができる"癒し"の時間でしたね。アクションのときは常にグッと集中しないといけなかったので、明里咲とのシーンは"明るいふだんの律花でいられる"瞬間だと思ったんです。役を演じながら、友だち同士というのはこうして辛いときに支え合うものだなと、実感しました。本当に、この作品では女性の共演者に恵まれたな、と思います。

――女性の共演者といえば大事な方がいらっしゃいましたね。宮の命を狙う"根来衆(ねごろしゅう)"忍者集団のひとりで、拳による"突き技"を中心とした「琉球拳法」を使って律花に戦いを挑む女忍者のウトを演じられた宮原華音さんもまた、激しいアクションを見事にこなせるすばらしい女優さんでした。

宮原さんとはずっと肉弾戦の連続でした。そうするとケガも増えますし、身体にアザが出来てしまいます。それでも宮原さんは一度も弱音なんて吐かず、逆に「もっと来ていいよ!」と言ってくださったりして、とても"漢気のある"女性でしたね(笑)。坂本監督も同じことを話していましたけれど、宮原さんは私がこれまで出会ってきた女優さんの中で、いちばん「体育会系」の方なんです。私と年齢も一緒ですし、宮原さんのガッツに負けないよう私も頑張ろうとか、背中を押されることが多くありましたね。

――根来衆の4人はいずれも強敵ぞろいで、頭目の白(はく)は刀剣をふるう中国武術、ジンは蹴り技メインの朝鮮武術、ウトは拳を主体にした琉球拳法、巨漢の黒竜(こくりゅう)は棍棒や相撲と、異なる得意技を使って律花と戦うんですね。

今回、相手の技を"受ける"ことが多かったんですけれど、攻撃するほうと違って受けるほうはこんなに大変なんだなとつくづく思いました。いろんな個性の技に対応したアクションをしなければならないことで、身体も使いましたが頭も使いながら取り組んでいました。でも、いろいろな方の技を見ることができて、自分の中ですごく勉強になりました。劇中で律花は根来衆の技を吸収して自分の動きに取り入れるのですが、私自身にとっても同じような体験ができて、これからの自分の"強み"になると思いました。