日本デザイン振興会は2日、グッドデザイン賞の2019年度受賞結果を発表した。今年度のグッドデザイン賞は4月3日に応募受付を開始し、4,772件の応募を対象に審査を実施した結果、過去最多という全1,420件の受賞が決定している。

  • 鉄道車両では西武鉄道の新型特急車両001系「ラビュー」が「グッドデザイン・ベスト100」に選出

受賞対象は、独自性、提案性、審美性、完成度などの面において、とくに優れた対象であり、これからのモデルとなるデザインとして位置づけられる「グッドデザイン・ベスト100」の100件が含まれている。この中から今後、さらに審査を実施して、「グッドデザイン大賞」など特別賞が決定する予定となっている。

相鉄12000系、広島電鉄5200形がグッドデザイン賞

今年度、鉄道車両では西武鉄道の新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」が「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたほか、相模鉄道の相鉄・JR直通線用新型車両12000系、広島電鉄の新型車両5200形「Greenmover APEX(グリーンムーバーエイペックス)」がグッドデザイン賞に選出されている。

西武鉄道「ラビュー」は「いままでに見たことがない新しい車両」をめざし、同社の次世代のフラッグシップトレインとして製作された。「都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む特急」「みんながくつろげるリビングのような特急」「新しい価値を創造し移動手段ではなく目的地となる特急」のデザインコンセプトをもとにデザインされた。

審査委員からは、「アヴァンギャルドな球形の先頭車両、風景がファジーに映りこみ存在感を和らげる車体塗装色、驚くほど大きな客室窓、窓からはリビングルームを彷彿させる心地よい暖色イエローのシートが良く見える、乗車前から乗客の心を昂ぶらせる仕掛けが満載だ。広大な窓から見える車窓風景はあたかも外界と室内空間がシームレスでつながっているかの錯覚を起こさせ、普段見慣れた景色を新しいものへと変えるだろう。『100年の風景をつくる』という高い志のもと、デザインの力で革新的創造にチャレンジした姿勢とその実現力は賞賛に値する」と評価された。

  • グッドデザイン賞に選出された相鉄・JR直通線用新型車両12000系

相鉄12000系は、「安全・安心・エレガント」をコンセプトとした相鉄・JR直通線用の新型通勤車両。2016年・2018年にグッドデザイン賞を受賞した9000系・20000系のコンセプトを継承しつつ、安全性、機能性、デザイン性をさらに進化させ、ダイバーシティ時代のユニバーサルな通勤車両の典型をめざした。信頼を感じさせるエクステリア、安全に快適に過ごすためのインテリア、オリジナル色「ヨコハマネイビーブルー」を採用した地域を象徴するカラーなどがデザインのポイントに挙げられている。

同車両に対し、審査委員から「東京都心直通運転という相模鉄道の新しい経営環境への熱意と、相鉄沿線の地域性を意識したアイデンティティを感じる車両。通勤型車両としては珍しく、強い自己主張が感じられる挑戦は高く評価したい。好き嫌いはあるかも知れないが、フラッグシップとして利用者からの評価も高いのではないか。車内外のパーツひとつひとつも利用者本位で丁寧に作り込まれており、他社との差別化が見事に図られている点も評価したい」とコメントが寄せられている。

  • グッドデザイン賞に選出された広島電鉄5200形「グリーンムーバーエイベックス」

広島電鉄5200形「グリーンムーバーエイベックス」は、おもに広島駅~広電宮島口間の車両として開発。超低床車両はその利便性から増備を望む声があり、新しく生まれ変わる広島の街にふさわしい車両としてデザインされた。これからの新しい広島電鉄の車両として、「未来×スピード」を基本コンセプトに、「新しい広島のシンボル」となって多くの利用者に愛される車両をめざした。室内は色数を抑えて車内全体の広がりを演出し、都会的でメリハリのあるインテリアデザインとし、運転台は正面に主要な機器や画面を収め、パネルの角度を工夫することで視認性と安全性を向上させている。

審査委員からは、「広島の顔となりつつある新型路面電車グリーンムーバーに、デザイン基調を保ちながら、車両前面部をモノトーンで精悍なイメージに変え、側面の緑色もアクセントのみに抑えた新しい車両が導入された。増え続けるインバウンド観光客に向けた多言語室内表示板も親切である。周回遅れの先端的都市交通システムとなっている路面電車の進化には今後も期待したい」と評価された。