きょう26日に放送されるフジテレビ系『奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP』(19:57~20:54)では、選手生命を絶たれた日本人ラガーマンの再起のドキュメンタリーを伝える。

  • 富士登山の様子=フジテレビ提供

主人公は、杉田秀之さん(31)。中学からラグビーを始めた杉田さんは07年、慶應義塾大学ラグビー部に入部。入部してすぐに選抜チームに選ばれるほどの実力の持ち主だった。チーム全体でも順調に力をつけ、希望に満ちあふれたメンバーたちは、その年の夏合宿の最後に「皆で富士山に登ろう」と誓った。

しかし、杉田さんの人生は一転。合宿中の練習試合で頚椎(けいつい)・頸髄(けいずい)を損傷し、医師から「二度と歩けない」と宣告され、ラグビーができない体になってしまったのだ。もちろん富士登山も中止に。

見舞いに来てくれた仲間や家族に八つ当たりしては、自己嫌悪に陥る日々。将来に絶望した杉田さんはラグビー部員との連絡を絶ってしまう。

杉田さんはリハビリに励み、少しずつ歩けるように。ある日、車椅子に乗った少年に「お兄ちゃんは歩けていいね」と声をかけられる。この言葉に奮起し、さらに真剣にリハビリに取り組んだ杉田さん。大学へ復学を果たすも、「障がいを持った人として外にでることに、すごく抵抗があった」と振り返るように、周囲との距離はなかなか縮まらなかった。

そんな中、同期の部員が4年生になった年に、仲間たちから「ラグビー部に戻って来ないか」という連絡が来るように。分析係という立場でチームをサポートしてほしいというのだ。最初は、戻ることをためらっていた杉田さんだったが、「最後の1年、みんなでラグビーやろう」という仲間たちの情熱に動かされ分析係として復帰を果たした。事故以前と変わらない態度で自分に接してくれる仲間たちに感謝する日々。その年、ラグビー部は10年ぶりに早稲田大学に勝利することに。その快挙に大きく貢献した杉田さんの恩返しとは…。

大学卒業後は社会人として忙しい日々を送っていた杉田さんだったが、事故から約10年たったある日、仲間たちから「いつ富士山に登るの?」とメッセージが。07年、杉田さんが入部した年の夏の合宿で中止になったあの計画を実現しようというのだ。

杉田さんも忘れたわけではなかったが、現実的ではないと思っていた。けれど仲間たちは諦めない。再び仲間たちの思いに動かされ、杉田さんは富士山を登る決心をする。そして、今年8月、杉田さんはラグビー部の仲間たち約80人と共に12年越しの約束を果たすべく富士登山へ挑む。

元慶應義塾大学ラグビー部員、その関係者約80名で挑む姿をカメラは追っていく。孤独と絶望の中で、周囲の人の出会いによって希望を見いだしてきた杉田さんが、杖を使い、仲間に支えられながら歩を進める。杉田さんは無事にゴールすることはできるのか…。

インタビューでは、杉田さんが事故当時から現在に至るまでの思いを明かし、杉田さんの家族やラグビー部の仲間たちも複雑な心境を率直に語る。それぞれが今回の富士登山をきっかけに「今だから言えること」を告白する。

VTRをスタジオで見ていたバナナマンの設楽統は「自分も頑張ろうと思えた」、武井壮は「知り合いがひとりもいないのに、自分の仲間のように見てしまった。すてきなものを見せていただいてお礼を言いたいです」と語っていた。

今回の密着取材に、杉田さんは「仲間との12年越しの約束である今回の富士登山を何か形に残るモノにしたいと思っていたので、こうしてテレビ番組として映像に残ることがうれしいです」とコメント。また、放送されることについて、「僕の脊髄損傷という障がいが取り上げられる点については、難しいというかセンシティブなことでもあり不安もありました。ただ、“仲間とやりたいことを楽しんで行う”という元々の目的に立ち返るとあまり気にしなくてもいいのかなと思いました。むしろ、この仲間たちと果たした約束に、何か取材をされる理由があるのかなと考えるようになりました。それは人と人とのつながりというか、友情が“アンビリバボー”ということだと思っています。準備も含めて大好きな仲間と過ごした時間は本当に楽しくて、夢のようでした。それをテレビ番組として見られることにワクワクしています」と心境を語る。

そんな杉田さんにとって、ラグビーとは「最高の仲間に出会わせてくれた、また人として大きく成長させてくれたモノ。そう気づけたからこのケガをしてもラグビーを嫌いになっていないですし、これからもラグビーは僕の人生において大切な存在です。そしてラグビーに感謝をしているので、今後は何かの形でラグビーに恩返しができれば良いです」と話した。

今回取材した、イースト・エンタテインメントの谷悠里氏は「『奇跡体験!アンビリバボー』は番組の性質上、過去の話の追跡取材を放送することが多いのですが、今回は進行形で取材することができました。そのため、『取材対象者の心情の変化』や『ライブ感のある映像』など普段の番組よりも感じられる部分が多いかと思います。また、番組を通して言いたいのは、自分は決してひとりじゃないと思ってほしいということです。杉田さん自身も心が強い方なので、今があると思うのですが…現在のこの状態があるのはラグビー部の皆さんの支えがあったからこそ、さらに限界を突破できたのではと感じました。取材を通して仲間のつながりの強さ・良さを感じたので、見た人に仲間っていいなって思ってもらいたいです」とコメント。

フジテレビの安村麻衣子氏は「杉田さんがケガをした当時、私は学生トレーナーとして現場にいました。約1年半前にこの富士登山計画の話を聞いた時、最初は元ラグビー部員として共に登ることを決めていましたが、『きっとどこかで誰かに勇気を与えられるような挑戦になるはずだ』と思い、カメラを回し、密着取材をはじめることに決めました。ケガして10年以上…“つらかった時のことを掘り下げる”より“楽しい思い出で上書きしていく”作業に徹してきましたが、今回の密着取材を通じて、人の『今だから話せる本当の気持ち』に耳を傾ける大切さを学びました。“大事な人の心に寄り添いたくなる”…そんな作品になっていれば、うれしいです」と話している。

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