オリックスグループは9月8日、夫婦参加型育児セミナーを実施した。子どもを持つ女性だけではなく、男性も一緒に参加することで、キャリアと家庭の両立や働き方について夫婦で考えてもらうことが目的だ。当日の内容を紹介したい。

  • オリックスグループが実施した夫婦参加型育児セミナー

夫婦で参加するから意義がある

オリックスは男女雇用機会均等法施行前から、女性を積極的に採用するなどの取り組みで知られる。「夫婦参加型育児セミナー」は、2016年にスタートし、今年で4回目。講師を招いてグループワークを行うほか、新たな取り組みとして、親子の絆を深めるスキンシップ遊びを取り入れた。

  • スキンシップ遊びの様子

参加条件は、夫婦のどちらかがオリックスグループの社員であること(他社で働く配偶者も参加)、3歳以下(第一子)の子がいること。セミナーは午前と午後で行われ、参加夫婦は35組となった(女性社員からの申し込み20組、男性社員からの申し込み15組。夫婦ともに社内は6組)。

会場と別の部屋に託児コーナーを設け、シッターに子供を預かってもらえるサービス付きだ。参加者は6グループに分かれて着席し、夫婦はもちろん隣同士となる。

  • 別室に用意された託児コーナー

最初に人事部から、「セミナーをきっかけに、夫婦で育児と働き方を考える習慣を根付かせていただきたいと思います。この経験や考えたことは、家庭だけでなく職場にも持ち帰って広めてください」と、挨拶がなされた。

その後、ウェルネスライフサポート研究所 代表取締役 加倉井さおり氏が登場。「私も3人の母親であり、夫婦どちらの両親にも頼れず、2人で育児を乗り切ってきました。男の子ばかりなので、ご飯を8合炊いて4回洗濯機を回すような慌ただしい日々です」と、リアルながらもユーモアあふれるトークには、会場から笑いが起こった。

  • ウェルネスライフサポート研究所・代表取締役の加倉井さおり氏

以下に要点をまとめたので、参考としてほしい。

アンコンシャス・バイアスを捨てる

働くママは悩みが多い。「仕事も育児も中途半端な気がする」、「子供の急な発熱で早退したり休んだりするから、職場や子供に罪悪感を覚える」など。一方でパパは、「育児にもっと関わりたいのに仕事が終わらない」、「育休を取りたいが、現実はそんな雰囲気ではない」などといった悩みがある。

子育てしながら働くには大きな壁があるが、どう乗り越えるか? 答えの一つが、エゴグラム。自分の性格傾向や心のクセなどを分析することで、ストレスのない家庭運営とキャリア形成に役立てることができる。

子育て中、マイナス思考になり、「育休から復帰してもきっとうまくいかない」などと、悲観的な考えにとらわれる人は少なくない。それから、「女だから(母だから、男だから)こうあるべき」などといった、「べき」の思い込みが強い人は、あらゆることを自分のせいにして思い悩む傾向がある。

子育て中だと、「私のせいで子供が熱を出してしまった」などという考えに陥りやすい。ほめられても、「誰でもできます」、「母親だったら当たり前です」などと、素直な反応ができないケースも。

こうした思考のクセは、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)に基づくことが多い。解放されて楽に生きるためには、まず無意識の思い込みや心のクセに気付くことが重要。次は、それに対して「ちょっと待って、その考えって本当?」と、自分に質問する習慣を付けること。

セルフトーク=自分が自分にかける声を変えれば、自分が自分の元気をわざわざなくすようなことをしなくなり、プラス思考になれるはずだ。

折れない心を作る「リフレーミング」

リフレーミングとは、勇気付けのスキル。短所や悩み、障害など、マイナスにとらえていることを「そのこと自体や、その体験は自分にとってプラスの財産、体験、チャンスである」と、発想をプラスに転換することだ。

例えば、エゴグラムなどの診断で「頑固」と出ても、プラスに転換すれば「信念が強い」となる。これは、子育てでも役に立つ。親は子どものマイナス面に目が行き、「これができてほしい」、「あれはダメだ」などと、ダメ出しばかりになりやすい。だが、それはやめて、「うちの子はいいところは?」といいこと探しに務めるのだ。

これは、職場でも有効で、苦手な人のいいところを探すようにすると、人間関係もうまくいきやすい。仕事で失敗しても、「若い時期に失敗を経験できて良かった。将来マネジメントする立場になったら、この経験は必ず役に立つ」など、プラス変換でとらえるのだ。すると、失敗という概念のない世界を生きられるようになる。

  • 自分とパートナーの良いところを探すワークを実施

人間は不完全であると受け入れる

「人間は誰もが不完全である。私もそうだし、パートナーや子供も同様」と認め、受け入れることからスタート。そして、自ら設定した目標に向かって努力をし、人と比べないようにする。人にはそれぞれ持ち味や弱みがあるからこそ、認め合い、補い合い、協調することが必要と知ることは、人間的な成長につながる。

心理学的な手法も取り入れられ、仕事にも役立つ内容であった。最後は「縁あって男女が出会い、大切な命が生まれたわけです。愛して、学んで、仕事をして、人生を実りあるものにしてください」と言う加倉井氏の言葉で締めくくられた。


女性は「女だから」「母だから」といった思い込みをやめ、働き続けることの尊さを再確認し、男性は女性のキャリアを尊重・祝福し、働きやすい社会づくりを目指そう。