日本人の死亡原因の第一位は、がん。おおまかに言うと、日本人の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんのために亡くなっています。そして、がんの部位別にみた場合に死亡者数が最も多いのは、肺がんです。がんは早期発見できれば完治が可能になってきているにもかかわらず、がんで亡くなる人が少なくないという実態の背景には、早期ではなく進行期になって診断されるケースが少なくないことを意味しています。肺がんも正にそのような病気です。

肺がんは症状が現れにくい?

  • ※画像はイメージです

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がんは一般的に、完治が期待できる早期の段階では症状が乏しい病気です。肺がんも例外ではありません。そのため、健診や検診、人間ドックで発見されたり、ほかの病気の検査で偶然見つかったりすることが少なくありません。

肺の内部のがんは感じ取りにくい

肺の実質(内部)には痛みを感じる知覚神経がほとんどありません。もし肺の実質に知覚神経が張り巡らされていたら、呼吸のたびに違和感を覚えてしまうでしょう。

そのため、肺の中に異常が起きていても胸痛などの症状は現れにくく、気管支や胸膜など周囲の組織に影響が及んで初めて症状が出ることが少なくありません。

症状が出るころには進行していることも多い

肺がんでは胸痛のほか、長引く咳や血痰、息苦しさなどの症状が現れることがあります。

しかし、こうした症状も多くの場合、がんがある程度大きくなってから現れます。そのため、自覚症状をきっかけに受診したときには、すでに進行しているケースも少なくありません。

手術で治療できるのは「早期の段階」

内臓にできるがんでは、手術で取り切れるかどうかが治療方針を大きく左右します。取り切れると判断されれば手術が優先的に検討され、難しい場合には薬物療法や放射線治療が中心となります。

小さな肺がんなら手術できる可能性が高い

がんで臓器を切除すると、その臓器の働きは低下します。

肺はすべてを取り除くことができないため、がんの広がり具合が手術可能かどうかの判断に大きく関わります。

一般的に、がんが小さいほど手術できる可能性が高く、切除範囲も小さく済みます。また、胸腔鏡手術など体への負担が少ない方法を選択できる可能性も高くなります。

手術が検討される主な条件

肺がんが手術可能と判断される主な条件は、がんの範囲が限られていること、患者さんが手術に耐えられる全身状態であること、そして転移がないことです。

ほかの臓器へ転移している場合は、全身にがん細胞が広がっている可能性があるため、薬物療法など全身的な治療が中心となります。

早期に見つかる人の特徴

ここまでお読みになり、肺がんの治療には早期発見が重要であることをご理解いただけたのではないでしょうか。

では、肺がんが早期の段階で発見される人にはどのような特徴があるのでしょうか。

健康診断や画像検査を受けている

症状のない段階で肺がんを見つける主な方法は、肺がん検診や人間ドックです。

国内の肺がん検診では胸部X線検査が行われます。一般的に胸部X線検査で発見できる肺がんは、少なくとも1cm程度の大きさになってからとされています。また、肋骨や心臓、血管と重なる部分では発見が難しくなることもあります。

がんは1cm程度になるまでに長い時間をかけて成長しますが、その後は増殖速度が速くなることがあります。そのため、胸部X線検査は毎年継続して受けることが大切です。

一方、胸部CT検査ではより小さな肺がんを見つけられる可能性があります。近年は被ばくを抑えた低線量CTによる肺がん検診の有効性も報告されており、導入が進みつつあります。

なお、長引く咳や血痰、胸痛などの症状がある場合は、検診を待たずに医療機関を受診してください。

「肺の影」をきちんと精査している

胸部X線検査の結果、「肺に影がある」と指摘されることがあります。

ただし、その時点では肺がんとは限りません。過去の感染症による瘢痕や良性の病変であることもあります。

だからこそ、CT検査などの精密検査で影の正体を確認することが重要です。

見逃されやすいケース

肺がんを早期に発見しにくい人の特徴についても見てみましょう。

症状がないからと検診を受けない

肺がんの早期は自覚症状が乏しいため、「症状がないから大丈夫」と考えてしまう人もいます。

しかし、自覚症状が出てからでは進行していることも少なくありません。症状がないうちから定期的に検診を受けることが重要です。

検診結果をそのままにしてしまう

「肺に影がある」と指摘されたにもかかわらず、再検査を受けないケースもあります。

肺がんが早期の段階にとどまっている期間は限られています。精密検査が必要と言われた場合は、できるだけ早く受診しましょう。

早期発見のカギは定期的な検診

肺がんは日本で最も死亡者数の多いがんです。しかし、早期に発見できれば手術を中心とした治療で完治が期待できるケースもあります。

問題は、早期の肺がんには自覚症状がほとんどないことです。

だからこそ、症状の有無ではなく、定期的に検診を受けているかどうかが重要になります。

毎年の肺がん検診や必要に応じた精密検査が、肺がんによる死亡リスクを下げる第一歩になるでしょう。

肺がんの早期治療の重要性について、呼吸器外科の専門医に聞いてみました。

肺がんは早期発見できれば、近年普及している胸腔鏡手術(VATS)やロボット支援下手術(RATS)など、比較的小さな傷で手術を行うことで根治を目指すことが可能です。

日々の診療においては、自覚症状がなくても健診や検診で肺がんが見つかり、早期に低侵襲手術を受けられ、術後数日〜1週間程度で元の生活に復帰される方もいらっしゃいます。一方で、「要精密検査」の通知を数年間放置し、咳や痛みなどの症状が出てから受診した結果、すでに手術適応とならない状態まで肺がんが進行していることが判明するケースも少なくありません。

肺がんは早期には自覚症状が出にくい病気です。「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がないからこそ検診を受ける」という意識をぜひ持ってください。そして「肺の影」を指摘されたら絶対に自己判断せず、速やかに呼吸器専門医のいる医療機関を受診しましょう。早めの行動が、ご自身の命を守る最大のカギとなります。

また、禁煙は肺がん予防のためにご自身でできる最も効果的な取り組みの一つです。ご自身の肺を長く健康に保つためにも、喫煙習慣を見直す良い機会にしていただければと思います。

大亀 剛(おおき たかし)先生

一宮西病院 呼吸器外科部長
資格:日本外科学会 外科専門医、呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医