箱根登山鉄道で長年活躍し、今年7月に引退したモハ1形107号が小田原市の「鈴廣かまぼこの里」内に設置・改装され、新たな施設「えれんなごっそ CAFE107」の一部となってグランドオープン。9月8日にオープニングセレモニーが開催された。

  • 今年7月に引退した箱根登山鉄道の車両モハ1形107号がカフェの一部に(写真:マイナビニュース)

    今年7月に引退した箱根登山鉄道の車両モハ1形107号がカフェの一部に。「えれんなごっそ CAFE107」がグランドオープン

モハ1形は1919(大正8)年にチキ1形として登場した後、戦後の1950(昭和25)年頃に鋼製車体へと姿を変え、1952年頃に車両形式をモハ1形に変更。1957年頃、小田急電鉄のロマンスカーをイメージしたカラーに塗り替えられ、その後の2両固定編成化工事などを経て、約100年にわたり運行された。107号は103号と編成を組み、旧式の吊掛け駆動方式を用いた貴重な車両ということもあり、鉄道愛好家を中心に注目されたという。

103号・107号の編成は「サンナナさよならイベント」が開催された今年7月20日をもって引退。モハ1形107号は譲渡式を経て、8月9日に「鈴廣かまぼこの里」へ搬入された。「えれんなごっそ CAFE107」では、車両全体を屋根で覆い、実際に箱根登山鉄道で使用された線路上にモハ1形107号を設置して、現役で走った頃の様子をリアルに感じられるようにした。台車などの床下機器も間近に見られる。

車内は現役時代の設備や引退記念の装飾を各所に残しつつ、通路部分にテーブルを設け、現役時代にはなかったエアコンも搭載して快適性を高めた。円形の手ブレーキハンドルなどが設置された乗務員室も窓越しに見学できる。

  • 風祭駅付近の国道1号沿いにオープンした「えれんなごっそ CAFE107」。オープニングセレモニーでは鈴廣蒲鉾本店の鈴木社長、箱根登山鉄道の府川社長が登壇し、出席者によるテープカットも行われた

「えれんなごっそ CAFE107」のオープニングセレモニーで登壇した鈴廣蒲鉾本店の代表取締役社長、鈴木博晶氏は、「以前から、(箱根登山鉄道を)退役する車両があればなにかに使いたいとの思いがありました」と話す。モハ1形107号について、「窓を全開にすると森の緑の香りが入り、トンネルではひんやりとした空気が感じられ、箱根の山を満喫しながら旅情を味わえる素晴らしい電車でした」と述べ、「箱根登山鉄道からこの車両をお預かりしたという気持ちで、今後も大切にしていきたい」と話した。

箱根登山鉄道取締役社長の府川光夫氏も挨拶し、「本来なら当社で車両を保存するのが筋かと思いますが、弱小企業ゆえに土地もお金もないというのが実情。そんな中、国道1号に面した一番良い場所にこの車両を置いていただけることになりました」「(モハ1形107号が)営業で走っていた頃、構造上の問題もあって冷房がなく、夏の暑い時期などお客様にご迷惑おかけしました。これからは冷房が入った涼しいカフェとして、第二の人生を送ることができます。感謝を申し上げたい」と述べた。

  • モハ1形107号の車内はイートインスペースとなり、現役時代にはなかったエアコンも搭載。窓越しに乗務員室も見学できる

両社はモハ1形107号の譲渡を機に、小田原・箱根地域の魅力をさらに充実させ、発信するためのさまざまな取組みを通じて連携強化を図るという。セレモニーでは鈴廣蒲鉾本店の鈴木社長、箱根登山鉄道の府川社長が協定書に署名。続いて出席者によるテープカットが行われ、新施設のグランドオープンを祝った。

「えれんなごっそ CAFE107」は箱根登山鉄道の風祭駅から徒歩数分の国道1号沿いに位置し、モハ1形107号の車内をイートインスペースとしたほか、店舗内とテラスに計46席を設けている。鈴廣が手がける地ビール「箱根ビール」、オリジナルブレンドの「箱根珈琲」といったドリンクをはじめ、かまぼこ店ならではの特製メニュー「かまぼこピンチョス」「ちくわパン」「かまぼこサンドウイッチ」、箱根登山鉄道の電車をイメージした「登山電車ケーキ」を提供する。「鈴廣かまぼこの里」限定の「箱根登山電車かまぼこ」も発売される。

  • モハ1形107号の車内・外観。引退記念の装飾も各所に残る

  • 「えれんなごっそ CAFE107」では、鈴廣が手がける地ビールや、かまぼこ店ならではのアレンジメニューなどを提供