9月4日に関西将棋会館で第78期A級順位戦の久保利明九段vs佐藤天彦九段戦が行われました。

久保利明九段の粘りを振り切って深夜1時29分に193手で勝利

  • 佐藤天彦九段(左)と久保利明九段

久保九段は振り飛車党で、駒を軽くさばいていく棋風から「さばきのアーティスト」の異名を持ち、タイトルを7期獲得しています。

一方の佐藤九段は本格的な居飛車党で、正確な中終盤を武器に高い勝率を誇り、平成28年から名人を3連覇。こちらもトップ棋士として活躍しています。

ただし、今期のA級順位戦では2人とも2連敗の立ち上がりで、早く1勝して巻き返しを図りたいところでした。

その一戦は佐藤九段の先手で久保九段が四間飛車に振ると、お互いが玉を固め合う持久戦へと進みます。中盤に入ると佐藤九段がペースを握りましたが、「粘りのアーティスト」という裏の顔を持つ久保九段が猛烈な追い込みを見せて、どちらが勝つか分からない際どい終盤戦になりました。

しかし佐藤九段の指し手は正確で、終盤戦に入って難しい局面が続いても急所を外しません。逆転を許すことなく、深夜1時29分、193手で勝利しました。

プライベートではクラシック音楽を聴き、ブランド物のスーツを着こなし、優雅な立ち居振る舞いを見せ、「貴族」の愛称を持つ佐藤九段。以前の『将棋世界』のインタビューによると、音楽やファッションだけでなく、身近ないろいろなものに対してこだわりが強く、「まず、理想的なものは何か」を考えるそうです。それは将棋にも当てはまるそうで、佐藤九段の理想とする将棋は「序盤、中盤で均衡が取れていて、終盤戦も激戦で、本当に最後の最後、一分将棋の際どいところで勝負が決まる」というものだそうです。久保九段とのA級順位戦はまさにそういう将棋だったかもしれません。