泥棒一家の娘・三雲華(深田恭子)と警察一家の息子・和馬(瀬戸康史)の禁断の恋を描いた泥警版ロミオとジュリエット『ルパンの娘』(フジテレビ系 毎週木曜22時~)が面白い。ドラマもいよいよ終盤。最初は華が泥棒であることを知らなかった和馬が真実を知り、それでも愛を貫き、結婚することを決意。だが、結納のさい、ついに互いの家族に互いの職業を知られてしまい、三雲家は離散する(8話)。

  • 深田恭子

    『ルパンの娘』の深田恭子 =フジテレビ提供

ストーリーは極めてシンプルで、主としてキャラクターで見せるドラマである。泥棒一家も警察一家もクセがすごく、そのなかでもとりわけヒロインを演じるフカキョンこと深田恭子の魅力が炸裂している。

深田恭子の魅力はエイジレス美フェイス&美ボディであることは周知のことで、『ルパンの娘』ではそれを徹底して押し出した。

深田演じる華の昼間の顔は図書館司書。楚々としたお嬢様的なファッション、ヘアメイクをしているが、盗みの仕事をやるときは、ちょっとゴージャスな『キャッツ・アイ』みたいなレオタード姿とアイマスク姿になって、水泳やサーフィンで鍛えた抜群の肢体をこれでもかと見せつける。タイトルバックと変身し(着替え)たときの、全身をくねらせるサービスカットは何度見ても心騒ぐ。

痩せすぎず、むっちりし過ぎない、程よすぎるスタイルのよさ。映画『ヤッターマン』のドロンジョさま役が絶賛されたのが2009年で、あれから10年経ってもまだこの手のコスプレキャラに無理がないすごさは、25年間『水戸黄門』の女忍者・かげろうお銀を演じてきた由美かおるに追随する勢いだ。第2の由美かおるになってほしい。という願望はさておき、なぜフカキョンはエイジレスなのか。

■深田恭子の体幹と通じる安定力

私は、深田恭子が2016年に出した、男性視点と女性視点で撮り分けた2冊の写真集『AKUA』と『This Is Me』を持っている。オールハワイロケで、海でサーフィンしたり、ビーチでバレーしたり、コテージでくつろいだりしたりしているフカキョンをひたすら愛でる写真集で、ことにサーフィンしているときの下半身の安定感がすばらしい。体幹が整っているのではないだろうか。彼女のそのエターナルな雰囲気は、どんな波が来てもバランスをとれる水のなかで培われた体幹ではないかと思う。ところが、役柄的には天然ほよ顔キャラが多い深田。『ルパンの娘』の華然り、年下の高校生と恋する『初めて恋した日に読む話』(19年 TBS)の女教師や、『隣の家族は青く見える』(18年 フジテレビ)の妊活に励む妻など、基本、真面目で、恋人や夫を献身的に応援し、でも出しゃばらず、どこか抜けたところが可愛げとなって守りたいとも思われそうな良妻タイプだ。

デビュー時はキッと目尻が上がった瞳で上目線の美少女=お姫様という雰囲気だったが、いつの間にか、瞳もまんまるタヌキ目メイクで決して上目線にならない寄り添い型になった。この寄り添い型良妻のイメージは、彼女が長らく出演しているメナードのフェイシャルエステサロンのCMのイメージである。このCM、楚々としたお嬢様もしくは奥様ふうな深田恭子が、キレイをキープするために月2回、フェイシャルエステに通っている設定のもの。勝手な想像だが、いまの深田恭子のイメージはこのCMのイメージが基準になっている気がする。だからたとえ泥棒をやっても、優雅さ、上品さ、美しさをキープ。深田恭子はそこから外れた意外な面がのぞくことが1ミリもない。一切のほころびを見せないところに、サーフィンでどんな波にもひっくり返らず乗っかり続ける体幹の安定力を感じるのだ。

■優雅にふわっと相手を包み込む

昭和の女優にはこういう確固たるイメージを守り続けている人物が少なくなかったように思うが、昨今の女性の俳優は、かわいいだけ、きれいなだけではなく、崩した役もやりたいという欲求を隠さず、ノーメイクで出たり、汚れ役に挑んだり、いろいろできる俳優であろうとする意思を感じる人もいるなかで、深田恭子はそういう意思がまるで感じられない。ただひたすらにキレイであることを重要視しているように見えるのだ。それが、世の中に一定数いる、キレイでいたい人、キレイやかわいいこそ正義という層からの支持を確実に受けている。だからこそ、テレビドラマの起用が途切れないのだろう。

本人もキレイでいることで満足なのではないかとさえ思えるうえ、がんばってキレイにしていますという根性もアピールも微塵も見せず、月2回、フェイシャルエステしているだけです、みたいなふわっとした気軽さで、きれいがキープできますよと、常にCM状態なのだ。

ただし、深田恭子がキレイなだけで、ただそこにいるだけに甘んじているかというと、そうではない。つねに相手役をうまい具合にふわっと包み込んでいるのである。だから彼女と相手役のシーンは見ていてほっこりする。『となかぞ』も『はじこい』も『ルパンの娘』も。とりわけ『はじこい』で年下高校生の前で鬼のお面をかぶって照れ隠しする場面は最高だった。『ルパン』でも華が泥棒と知って困惑する和馬への表情がなんともエモい。白鳥が優雅に泳いでいるように見える下では足を激しくばたつかせているという説は都市伝説で、じつはそんなにばたつかせてないらしい。深田恭子も"優雅な白鳥はすべてにおいて優雅"という俳優なのかもしれない。このままサーフィンと月2回のフェイシャルエステを続けて、第2の由美かおるになってほしい。

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