今回のテーマは、ビジネスシーンでも頻繁に登場する「お申し付けください」というフレーズですが、敬語として不適切では? という意見もあるのだとか。そこで本稿では、「お申し付けください」の正しい使い方について解説します。

  • 「お申し付けください」の正しい使い方を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    「お申し付けください」の正しい使い方を理解していますか?

「お申し付けください」の意味は

「お申し付けください」という言葉は、「命令する」「指示する」という意味の言葉「言い付ける」が変化したものになります。

「ください」が足されて「言い付けてください」となっていますが、「ください」は、相手に何らかの動作をすることを請い求める意を示すものです。ゆえに、「言い付けてください」とは、「私に命令してください」「私に指示をください」と相手に促す表現になります。

また、「言う」の謙譲表現が「申す」であることから、「言い付けてください」を謙譲表現に直すと「お申し付けください」になります。言葉の構成としてはこのようになります。

丁寧表現の接頭語【お】
言い付けるの謙譲表現【申し付ける】
相手に何らかの動作をすることを請い求める【ください】

「お申し付けください」は敬語?

前述のとおり「お申し付け ください」は謙譲表現になります。謙譲表現は、自分の言動をへりくだることで相手を立てるものであることから、「申し付ける」のは自分になるんじゃないの? と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。

本来、相手の言動に対して謙譲語を用いるのは不適切とされていますが、「お申し付けください」は不適切な表現ではありません。

「お申し付けください」の発言の裏には、「私には命令や指示を引き受ける意志があります」「私は命令や指示に従う準備があります」という意志表示がなされています。謙譲表現にすることで、命令や指示を受ける側にいる自分の姿勢をへりくだっているのです。

また、同様の表現に「ご持参ください」「ご高覧ください」といった表現もありますが、このようなイレギュラーな謙譲表現が良しとされるのには、その言葉が慣用句化しているためとする見解もあります。

言葉というものは、時代の流れによって新しく生まれたり変化したりするもので、広辞苑第七版では、「上から目線」「ちゃらい」「自撮り」といった新語が多数掲載されました。

多くの人々が使い続けることで、正式な言葉として認定される……。「お申し付けください」も、そんな言葉の一つと言えるでしょう。

「お申し付けください」の使い方と例文

ビジネスシーンでは、取引先やお客様からの依頼・要望を引き受ける場合に「お申し付けください」を使用します。基本的に、社外の人に対して使用するものになります。

  • 他にご入り用のものがございましたら、フロントまでお申し付けください。
  • 食物アレルギーはございませんか? 事前にお申し付けくだされば対応いたしますので。
  • ラッピングをご希望される方は、お手数ですがサービスカウンターへお申し付けください。

また、「何なりと」「お気軽に」「ご遠慮なく」といった言葉を添えることで、どんな些細なことでも気軽におっしゃってくださいという意味合いになり、相手もより言い出しやすくなるでしょう。

  • 不都合な点などございましたら、ご遠慮なくお申し付けください。
  • ご希望のサイズが見つからないようでしたら、お気軽にお申し付けください。
  • 当ホテルにはコンシェルジュが常駐しております。何なりとお申し付けください。

なお、「お申し付けください」は身内に対しては少々堅苦しい表現といえます。そのため、目上の人に対して使用する言葉とはいえ、社内での使用に関しては相手を選ぶ必要があります。

直属の上司はもちろんのこと、普段から顔を合わせるような上司に対して用いると、人によっては、かえって距離を置かれているように感じてしまう人もいるかもしれません。社内で使用する場合には、社長や専務といった明らかに高い地位の役職に就いている人や、普段は会わないような上司に限って使用した方が良いでしょう。

  • 何かお手伝いできることがありましたら、何なりとお申し付けください。
  • ○時発の新幹線を手配致しました。他に何かございましたらお申し付けください。
  • お申し付けくださればお迎えにあがりましたのに。気がまわらず申し訳ございません。

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