夏はイベントがたくさんある季節。大型の音楽フェスや野外ライブ、ライブハウスやドームでのコンサートなど多く開催され、イベントに出かける人も多いのではないだろうか。タオルやペンライトを振ったり、曲に合わせて踊ったり、大勢の人たちと一緒に盛り上がれる音楽フェスは、全力で楽しみたいイベントだろう。

  • 全力で楽しむために万全な準備を

    全力で楽しむために万全な準備を

盛り上がると同時に気を付けたいのが熱中症だ。グッズ販売の列、炎天下の野外フェス、蒸し風呂状態のドームなど、暑い状況に見舞われることが多い夏のライブ。気が付いたら具合が悪くなってしまう可能性が誰しもある。

せっかくのライブを良い思い出にするためにも、健康な状態で楽しみたいもの。そこで今回は、ライブ前に気を付けておきたいことや、熱中症対策について小児科医の竹中美恵子医師に話を伺った。

 イベントの前の準備や対策グッズは?

●休息
日中の炎天下に出る野外ライブやグッズ販売は、前もって熱による疲労が予測できるのでしっかりと体を休めることが大切。また室内でも体育館内でのスポーツ行事やライブなど体力を使うことが予想される場合、しっかりと睡眠を取り、十分食事と水分を摂って挑むことが重要だ。寝不足や二日酔い、風邪気味、食事抜きなど疲れが溜まっている状態は熱中症にかかりやすくなる。イベント前は無理をせず、しっかりと体調を整えておこう。

●暑さ対策グッズ
体が熱くなった時、体を冷やすのは非常に効果的だ。特に水分をふりかけて冷たい風を浴びることは、体表面の温度を下げるためにはとても重要なため、体を冷やすグッズを用意しておくと良いだろう。帽子や日傘などの日差しを遮るものや、塩飴や塩タブレットなどの塩分が補給できるものの用意も忘れずに。

【おすすめグッズ】
・塩飴 / 塩タブレット
・持ち歩ける扇風機
・霧吹き付き扇風機
・扇子
・うちわ
・ネッククーラー
・日傘
・帽子

●体力作り
夏のイベントは体力勝負。突然暑い場所で激しい運動をすると体がついていかず体調を崩してしまう。適度な運動をして適度に汗をかく習慣がある生活が熱中症の予防になる。1日30分程度のウォーキングを続けるなど、暑さに対抗する体作りをしておくことが得策だ。

 暑い時の飲み物にコーヒーはNG?

熱中症にかからないためには、こまめな水分補給が大切である。飲み物は利尿作用のあるものではなく、水や麦茶、塩水やスポーツ飲料などが良いだろう。カフェインを含むお茶やコーヒー、アルコールは利尿作用があるので飲みすぎて脱水になるケースもある。暑い時こそビールを飲みたくなるものだが、熱中症対策としては控えたほうが良いそうだ。

また、水分を摂るとトイレに行きたくなるからという理由で控えるのは逆効果。大量の発汗に伴い脱水になってしまうため、必ず水分をしっかりと摂っておくようにしたい。

 最も効果的な熱中症対策とは?

熱中症対策には様々な方法があるが、手軽にできて効果的な方法はあるのだろうか。竹中医師に聞いてみた。

「最も手軽にできる対策は皮膚に水をかけ、扇風機等であおぎ体を冷やすことです。体表面の温度を下げることはとても重要なので、クーリングを意識すると良いでしょう。氷嚢で体を冷やし、太い血管が通っている腋(わき)や首など冷やすとさらに効率的です」

気温とともに体温も上昇する。体温の上がり過ぎを防ぐためには体を冷やすことが大切だ。

 グッズ列や野外会場など、炎天下での熱中症対策は?

直射日光がじりじりと照らし、とにかく暑いのが野外での移動やライブ鑑賞。熱中症にかからないためには、直射日光を避けることが一番の対策となる。帽子や日傘、大きめのタオルなどで日差しを避け、涼しくなる素材や冷却グッズを使うことも効果的。

「水分をこまめに取ることが大切です。友達と代われるようであれば順番に交代しながら並ぶようにして、炎天下の中で体力を奪われないようにするのが良いでしょう。涼しい素材のものを着用し、水をかけて涼しい風を当てることで体の表面体温が下がります。どんな方法でも良いので体を冷やすようにしましょう」

暑くなったら日陰に行き、休むことが鉄則。気分が悪くなってからでは手遅れになる場合があるため、「少し疲れたかな」と思ったらすぐに休むように心がけよう。

 室内でも熱中症に注意

たとえ屋外でなく室内であっても、人が密集する場所では異常に温度が上がりやすく、人の熱気で湿度も上がり熱中症にかかりやすい状況が生まれる。油断をせず、こまめな水分補給や休憩を取るようにしたい。大切なのは体の熱が上がり過ぎないようにすること。ベルトや胸元を緩め、風通りの良い恰好をすると、熱の放散を助けることができる。暑くなったら無理をせず、涼しいところに移動して、一度休憩をするようにしたい。

 熱中症にかかってしまったら?

対策をしていても熱中症にかかってしまうことがある。対処法を竹中医師に教えてもらった。

●冷やす
熱中症の場合はまず体を冷やすことが先決。屋外であれば体に水をかけて風を送り、体表面を冷やすようにしよう。近くに蛇口があれば水を全身にかけても良い。また冷たい飲み物を飲み、内面からも冷やすことも大切だ。冷たいものが近くにない場合は、コンビニなどで氷の塊や、自動販売機でペットボトルなど、体を冷やすものを買うと良い。冷たいものを太い血管の通っている首や腋の下、太ももの付け根などにしっかりと当てると効率的に体を冷やすことができる。

●楽な恰好になる
きつい洋服を着ている時は、ネクタイやベルトを緩める。体に負担のかからない恰好で、休める体勢をとれるようにしたい。

●水分・塩分を摂る
水分や塩分を摂れる状態であれば口から摂るようにしよう。自分で水分や塩分を摂取できない場合はすぐに病院に搬送が必要だ。

●横向きに寝かせる
熱中症は重症になると、意識障害や痙攣などになる可能性があり、できるだけ早いタイミングで病院を受診することが必要となる。気持ちが悪くなり嘔吐する場合もあるため、いつ嘔吐をしても大丈夫なよう横向きに寝かせておくようにしたい。

 気を付けたい貧血・低血糖・脱水

ふらふらする、気持ちが悪くなるなど体調不良の症状は様々だが、全てに共通して言えることは涼しいところで休むこと。できれば横になるのがベスト。熱中症以外にも、体調不良の原因があるので押さえておきたい。

●貧血
くらくらする貧血は倒れてしまう場合もあるため注意が必要だ。貧血になった時は、再度立ち上がって倒れることがないよう、意識がしっかりとして自力で歩けるようになるまで、しばらく横になっているほうが良い。回復したら無理をせず、できるだけ早く病院を受診するようにしてほしい。

●低血糖
気分が悪くなり立ちくらみやめまいなどがする場合には、低血糖になっている可能性もある。長時間のライブで飲まず食わずの時間が続くと、低血糖で手が震え出すという症状が見られることも。塩飴や糖質のあるものをあらかじめ食べておき、低血糖にならないように心がけると良いだろう。気持ちが悪くなった時は糖分入りのスポーツ飲料や、ジュースなどを少しずつ飲むことが大切だ。

●脱水
汗をたくさんかくと体の水分がなくなり、脱水を起こすことがある。急に立ったり激しく頭を振ったりした時に、目の前が真っ白になって体調不良を感じると脱水の可能性が考えられる。そのような場合には無理してすぐに立とうとせず、しゃがみ込み、周りの人に手を貸してもらって横になれるところに移動すると良い。トイレに行って水分を出した後、立とうと思ったら急に気持ちが悪くなる場合もある。できるだけ1人で行動することを避け、気持ち悪くなったら助けを呼べる誰かが近くにいてくれることがとても大切だ。

体調不良になった時は、とにかく無理をしないことが重要だという。

「自力で動けない場合は必ず周りに助けを求めましょう。自力で動けるうちに救護所などに移動するのはとても大切なことですが、気が付くと動けなくなっていることもあります。大きな会場になればなるほど脱出するのに時間がかかります。チケット代はもったいないと思うかもしれませんが、体調がすぐれないと感じたら自力で動けるうちに出ていくのも1つの手です」

 熱中症対策ポイントをおさらい

●ポイント
・暑さに慣れた体作りをしよう
・喉が渇いてなくても水分を摂取
・体の表面温度を下げるためにとにかく冷やす
・具合が悪い時は早めに休む
・動けなくなったら周りに助けを求める

前日までのコンディションを整えておくこと、また普段からある程度の暑さでも耐えられるように体力をつけておくことが大きな予防策となる。熱中症にかかってしまうとその時だけではなく、その後も全身に様々な症状が出て非常につらい思いをしてしまう。楽しくイベントを乗りきれるよう、くれぐれも無理をせず、頑張り過ぎないことも心がけたい。

取材協力: 竹中美恵子(タケナカ・ミエコ)

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。「女医によるファミリークリニック」院長。

アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。

日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得、メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。