NHK連続テレビ小説『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)で、大人になった柴田家の次女、明美役に抜擢されたのは、連ドラ初出演の美女・鳴海唯。CMなどで密かに熱い視線を浴びていたネクストブレイク女優だが、朝ドラ出演によりホットな存在となった。
ついに将来を誓ったなつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)が、結婚の許しを得ようと2人で訪れた北海道の柴田牧場。いつもは頼りない父・剛男が「なつが選んだ人なら間違いない」と太鼓判を押したことで、祖父・泰樹(草刈正雄)を含めた柴田家一同から祝福を受け、柴田家はいつものように楽しく食卓を囲む。鳴海演じる明美が、長女・夕見子(福地桃子)にツッコミを入れるやりとりは、幼少期から変わっていない。
子役の平尾菜々花から明美役を引き継いだ新進女優の鳴海。オーディションで明美役を勝ち取った鳴海は、朝ドラの出演について「すごいことだし、本当にありがたいことだと思っています」と喜びを口にする。また、幼少期から人前に出ることが大好きだったという鳴海は、「とんかつ屋巡り」が趣味というユニークな少女だった。
――明美役を演じるにあたり、どういう点を意識しましたか?
具体的に意識したことが2点あります。私は関西人なので、しゃべるスピードがすごく速いけど、北海道の人たちはゆっくりしゃべる印象があったので、走らないようにしよう、ゆっくりしゃべろうと気をつけました。
また、平尾さん演じる明美ちゃんが柴田家で会話をする時、突発的に言い放つ言葉がズバッと来る印象がありまして。「それ、言っていいの?」とツッコミを入れたくなるくらいグサッと刺さるような言葉もあったので、その言い回しはすごく意識して臨みました。
――柴田家で食卓を囲んでみていかがでしたか?
みなさんが明美役として入ることになった私が溶け込みやすいような環境を作ってくださったので、すごくありがたかったです。また、子役の方もいるので、誰かが台詞を間違えたり、ごはんを落としたりしても、みなさんが笑っていました。和気あいあいとしていて、本当にテレビで観ていたような柴田家だなと思いました。
――広瀬すずさんの大ファンだったそうですが、現場での印象を聞かせてください。
すごいなと思うのが、本当に毎日撮影が大変なのに、広瀬さんは誰よりも明るいんです。子役の方がたくさんいる現場でもありましたが、広瀬さんが積極的に子役の方とおしゃべりしたり、一緒に遊んであげたりしていて、とても気配りができる方だなと感心しました。
――撮影中の広瀬さんから受けた刺激などがあれば聞かせてください。
広瀬さんの泣くシーンで驚きました。私は泣くシーンがあると、前もって集中して臨まないとできないのですが、広瀬さんや周りのキャストさんは、お芝居が始まる直前までずっと楽しそうに話しているけど、お芝居がスタートしたら、その瞬間、役に入って涙を流すことができるんです。それを間近で見た時「ああ、この方は本当に天才だ!」と思いました。
その涙に嘘がなくて、私もそれを見て、ボロボロ泣いちゃいました。感情のスイッチはどこにあるんだろう? と思うくらい、すぐに入り込める力を持っているので、本当に素晴らしい役者さんだと思いました。
――撮影の合間に広瀬さんと話をされたりしますか?
はい。でも、お芝居の話はせずに、他愛のない話をすることの方が多くて。それはきっと広瀬さんが、私のやりやすいような関係性を作ってくださっていたと思います。
また、広瀬さんと中川大志さんとは今年21歳で同い年だという話になり、「誰が最初に21歳になるの?」と聞かれたので「私は明日です」と答えたら、「ええ! 明日?」「年上じゃないですか!」と言われました。お二人は6月生まれで、私は5月生まれなんです。そしたら次の日、お誕生日のお祝いまでしていただいて。本当に夢のようで、忘れられない思い出となりました。
――女優を目指したのはいつ頃ですか?
先日、母から自分が小学校時代に書いたプロフィール帳を見せられて。そこに「10年後の私はいま、何をしてますか? ちゃんと女優になれているかな?」と自分で書いていたんです。私は女優さんになりたいなんて誰にも言ってくて、自分の中だけで思っていたことですが、母から「こんなに小さい頃から女優になりたかったの?」と聞かれて。当時11歳で、今21歳なのでちょうど10年前のことだったので、すごく感慨深いなと。昔の自分に「やったね!」と言いたいと思いました。
――女優を目指したきっかけとなった作品はありますか?
小学校の時、『のだめカンタービレ』を観た時に、役者さんというお仕事に興味を持ちました。その時、役者業についてはあまり理解してなくて、のだめ=上野樹里さんというイメージを持っていたんです。その後、上野さんの別の作品やテレビのインタビューを観た時、全くのだめとは違って別人だったことにすごく驚いて。役者さんは、こんなに自分と違う人を演じることができるんだと知って、私もいつか女優さんになりたいと思いました。
――小学校の頃は、どういう少女だったのですか?
人前に立つことが好きで、とりあえず目立ちたいというタイプでした。自分で作詞作曲をした意味のわからない曲を小学生の学芸会で披露したりもしていました(笑)。
――作詞作曲する小学生というのも実にレアなケースですね。
歌を歌うことは昔から好きでしたが、得意ではなくて。高校ではじゃんけんで負けたから、バンドでボーカルを3年間やっていましたが、自分のレベルで人前で歌うのは恥ずかしいと思いながらやっていました。でも、ミュージカルなどの舞台にはすごく憧れがありますし、腹式呼吸を学びたかったので、最近ボイストレーニングも始めたところです。
また、中学時代は英語の授業が好きで、スピーチや英語を通してお芝居をする時間がすごく好きでした。小学生の頃は演劇クラブに入っていましたが、中学校にはなかったので、先生に「演劇部を作らせてもらっていいですか?」と聞いたくらいです。でも「無理だよ」と言われてしまい、運動が好きだったので、バレーボール部に入りました。
――英語はずっと続けたのですか?
部活よりも英語でお芝居をしている時間のほうが楽しかったから、高校は国際学科に入りました。そこで、人前でスピーチをする機会が自然に増えていきました。もともと幼なじみとはずっと寸劇をして遊んでいたりしたので、そういう自然な流れのなかで、表現することの楽しさを覚えていきました。
将来的には海外でのお仕事にもすごく興味があります。この前、香港の方とお仕事をさせていただいた機会がありましたが、今後も英語を使った仕事に関われたらいいなとも思いますし、英語のコミュニケーション能力も身につけていきたいです。
――女優をやってみて、どんな点が面白いですか?
一番面白いと思う点は、日常では全くしないような動きをできたり、自分とは違う人になれたりするところです。特に私はコメディがすごく好きですね。
――ご自身、女優業にトライしてみて、強みがあるとすればどんな点ですか?
私はデビューする前の19年間、何もしないで普通に生きてきました。私と同世代の女優さんは、中高生からお芝居をされていた方々のほうが多いので、今まではそこがネックというか、コンプレックスだと思っていたんです。でも、女優業を始めてから、19年間、普通に学校に通っていた普通の人生こそが武器になるんじゃないかなと、逆に思ったりもしています。お芝居をする時も、自分の生活を思い出して、普通の感覚でできるので。
――また、趣味が「とんかつ屋さん巡り」という点がすごくユニークです。
昔からとんかつが好きだったわけじゃないんですが、地元にすごくおいしいお店があって。中学生の時にオーストラリア研修に参加したんですが、帰国した時、日本食が人生で最大限に恋しくなりまして。その時、おとうさんに連れていってもらったのがその店で、食べたのがカツ丼でした。
出汁とカツのサクサク感に感動して、それ以来、かつ本来の味を楽しみたいと思い始めました。上京してきてから、チェーン店のカツ丼もたくさん食べていたんですが、高くてもいいからおいしい店へ行ってみたいと思い始め、今はいろいろな店を食べ歩いています。
鳴海唯(なるみ・ゆい)
1998年5月16日生まれ、兵庫県出身の女優。『P子の空』(18)で女優デビューし、CMに何本か出演。NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』でドラマ初出演。趣味はモノマネ、とんかつ屋さん巡り、特技はバレーボール。
場面写真=NHK提供