JR北海道は23日、観光列車「風っこ そうや」号の試乗会を実施した。JR東日本から借り受けた「びゅうコースター風っこ」にJR北海道「北海道の恵み」シリーズ車両を連結した4両編成の列車が、宗谷本線の稚内駅から音威子府駅まで走行した。

  • 宗谷本線の観光列車「風っこ そうや」号の試乗会を実施(写真:マイナビニュース)

    宗谷本線の観光列車「風っこ そうや」号の試乗会を実施。途中停車駅で地元関係者らによる出迎え・見送りも行われた

「風っこ そうや」号は昨年9月に発生した北海道胆振東部地震からの観光復興を趣旨に、JR北海道とJR東日本、JR貨物の連携により運行される新たな観光列車。JR東日本の車両をJR北海道が借り受け、北海道への回送運搬をJR貨物が担当する。JR東日本の「びゅうコースター風っこ」車両は今月上旬に北海道へ渡ったことが報じられた。

今回の試乗会は、7月27日から運行開始する予定の上り「風っこ そうや2号」(稚内駅7時55分発・音威子府駅12時2分着)、下り「風っこ そうや1号」(音威子府駅13時22分発・稚内駅16時55分着)と同時刻で運転された。往路の列車は7時35分頃、稚内駅に入線。沿線自治体関係者や報道関係者らを乗せ、ほぼ定刻通りに稚内駅を発車した。

  • 「風っこ そうや」号が稚内駅に入線。先頭車2両(1・4号車)はJR北海道の「北海道の恵み」シリーズ車両

  • 中間車2両(2・3号車)はJR東日本から借り受けた「びゅうコースター風っこ」車両。レトロなあたたかみを感じられる車内空間に

「風っこ そうや」号は稚内方の1号車が「道北・流氷の恵み」車両(キハ40-1720)、中間車の2・3号車がJR東日本から借り受けた「びゅうコースター風っこ」車両(キハ48-547・キハ48-1541)、往路の先頭車となった4号車が「道央・花の恵み」車両(キハ40-1780)。1号車に天塩川とサロベツ原野、利尻富士をデザインしたヘッドマーク、4号車に青空と田園風景、ひまわり畑と塩狩峠をデザインしたヘッドマークを掲出した。

「びゅうコースター風っこ」車両は指定席として使用。側面の窓ガラスを外すことで、自然の風を感じながら列車の旅を楽しむことができる。雨天時にはロールカーテンを下ろしての走行となる。木製のボックスシートとテーブル、白熱灯などにより、レトロなあたたかみを感じられる車内空間も特徴となっている。一方、「北海道の恵み」シリーズ車両はフリースペースとして使用される。車内の中吊りポスターなどを活用し、北海道の方言や難読地名のクイズが出題されていた。

  • 南稚内駅を発車した後、車窓に日本海が見える。その後、木造駅舎の抜海駅を通過

  • 雨のためロールカーテンを下ろして走行。豊富駅では地元関係者らが出迎え、販売品模擬展示も実施

  • 牧草ロールのある車窓風景も北海道ならでは。幌延駅でも地元関係者らが出迎えた

南稚内駅を発車し、しばらく走ると進行方向右側に日本海が見える区間となり、列車は減速運転を行う。この日はあいにくの天気だったが、天気の良い日は日本海の先に利尻富士(利尻山)が見えるという。抜海駅を通過した後、宗谷本線は内陸部へ入り、やがてサロベツ原野の広がる車窓風景となる。この区間でも、天気が良ければサロベツ原野の先に利尻富士を見られるが、この日は雨でロールカーテンを下ろしての運転となった。

途中の豊富駅で10分間停車。地元関係者らが旗を振って出迎え、プリンやソフトクリームをはじめ販売品の模擬展示も行われた。幌延駅でも8~9分ほど停車。ここから先は車窓に天塩川が見えるようになる。雄信内駅で停車し、稚内行の下り普通列車と待ち合わせた後、糠南駅までの間に天塩川に沿って走る区間があり、列車も減速して運転。天塩川の雄大な風景を存分に味わえる。

  • 雄信内駅で下り普通列車と待ち合わせ。天塩川沿いを走る区間で減速運転を行う

  • 天塩中川駅では中川町のゆるキャラ「じゅえる」が登場。特産品も展示された

天塩中川駅では20分以上停車し、下り特急「宗谷」と待ち合わせ。中川町の関係者やゆるキャラ「じゅえる」が出迎え、ワインやハチミツなどの特産品も展示された。同駅では「風っこ そうや」号の運行開始後、全運転日において地元関係者らによる出迎え・見送り、横断幕の掲出、サイダー等の商品販売を行うとのこと。

走行中の車内では、乗車証明書や手作りの見どころマップなどが配布されたほか、沿線自治体の幌延町、中川町、音威子府村による地元PRも行われた。天塩中川駅を発車した後も、車窓に天塩川を見ながら列車は走る。佐久駅から筬島駅までの区間では、天塩川の対岸に「北海道命名の地碑」を見ることができ、ここでも減速運転を行った。試乗会の列車はおおむね時刻通りに運転され、終着の音威子府駅に12時2分に到着。1時間以上停車した後、稚内方面へ折り返した。

  • 下り特急「宗谷」が到着した後、「風っこ そうや」号は天塩中川駅を発車。途中、天塩川の対岸に「北海道命名の地碑」が見える区間で減速運転を行う

  • 「風っこ そうや」号の終着となる音威子府駅に到着。「常盤軒」の「音威子府そば」でも知られる

なお、試乗会が行われた日は店休日だったが、音威子府駅の駅舎内にある「常盤軒」が4月から営業再開している。「風っこ そうや」号の運行期間中、特産の「音威子府そば」も食べられるという。

試乗会ではJR北海道代表取締役社長の島田修氏も往路の列車に乗車。音威子府駅で取材に応じた。「今日は利尻富士が見えなかったものの、サロベツ原野から森の中を抜け、天塩川沿いを走って……というように、4時間の旅で宗谷本線を満喫していただけると思います」と島田社長は話す。試乗会は7月27日の運行開始に向けたリハーサルも兼ねているとのことで、「しっかり準備してお客様を迎えたい。地域の方々も今日を参考に、当日への準備につなげていただければ」「地域の方々と一緒になって活性化につなげる上で、こうした観光列車は起爆剤になるのではないかと思います」と述べた。

「これから夏本番の一番いい時期を迎えます。『風っこ そうや』号をきっかけに、離島も含む宗谷地区、できれば北海道全体においても、たくさんの方々に来ていただきたい」と島田社長。運行開始の迫る「風っこ そうや」号の予約状況も尋ねたところ、「おかげさまで団体・一般発売ともほぼ満席。ただ、区間によってはまだ空きがあります」との答えが返ってきた。利尻富士と日本海、サロベツ原野の車窓風景を見られる稚内駅から豊富駅までの人気が高い一方、その他の区間は「列車によって空いている場合もあります。探してみて、ぜひ乗車してほしい」とのことだった。

観光列車「風っこ そうや」号が運行開始する7月27日、稚内駅で出発式の開催を予定している。8月12日までの土日祝日、稚内駅から旭川駅まで1往復運転される。その後は8月17日から9月8日まで、土日に旭川~音威子府間で運行される予定。下り「風っこ そうや3号」(旭川駅7時18分発・音威子府駅12時26分着)、上り「風っこ そうや4号」(音威子府駅13時0分発・旭川駅17時43分着)が設定された。

  • 観光列車「風っこ そうや」号の外観・車内。試乗会では乗客に乗車証明書や手作りの見どころマップなども配布された