「早起きは三文の徳」とは子どもでもよく知ることわざですね。ビジネスパーソンの場合、出社前の時間を利用する「朝活」もよく耳にします。

ただ、分かっていてもできないのが人間。目覚まし時計で起きても、睡魔に勝てず寝坊というパターンは経験ありますよね。また二度寝だけでなく、飲みすぎ、食べすぎなど、「やめたいのに、やめられない」悩みを持つ人も多いでしょう。

  • 「二度寝をやめられない」悩みはありますか?

そこで『「やめられる人」と「やめられない人」の習慣』(明日香出版社)の著者である、大平信孝さんに「無理なくできるやめるコツ」を聞いてきました。

なぜやめられない?

大平さんはアンカリング・イノベーション 代表取締役。最新脳科学とアドラー心理学を組み合わせた「行動イノベーション」を開発し、目標実現の専門家として経営者やアスリートのメンタルコーチングや、企業への研修サービスを行っているそうです。

なぜ人は「わかっちゃいるけど、やめられない」のでしょう? 大平さんは、そこには3つの大きな理由があると言います。

脳は否定形を理解できない

大平さん「1つ目の理由は、脳は否定形を理解できないからです。そのため『絶対やめる』と思えば思うほど、かえってやめたい行動を強化しているのです」。

つまり、やめられないのは脳の機能が影響しているためで、大平さんは1つの例を紹介してくれました。

突然ですが、次の文章を読んでみてください。

問題:黄金に輝くスマホを、想像しないでください。

あなたは今、何を思い浮かべましたか? この文章を読んだ瞬間に、「黄金に輝くスマホ」が勝手に頭の中に浮かんできたのではないでしょうか。

大平さん「あなたが『今日こそ、やめよう』『絶対やめる』と思うたびに、脳は『やめたいことをしているあなた』をイメージしてしまうのです。すると、脳は自動的に『やめたいことを続ける』方向で動いてしまいます」。

  • アンカリング・イノベーション 代表取締役 大平信孝さん

慣性の法則と感情

2つ目の理由は、慣性の法則が働いているからだといいます。

大平さん「やめることをゴールにしていると、やめられません。それは、今までの慣性の法則に負けてしまうからです。一度動き出した自転車が自然と前に進んでしまうように、一度習慣化していることは、何もなければ続けてしまうことになります」。

逆に、やめられる人は「やめること」をゴールにしておらず、「やめたあと、どういう未来を過ごしたいのか」というゴールを思い描けているそう。そして、やめる目的がはっきりしていれば、慣性の法則に抗える力も湧いてくるのだといいます。

最後の3つ目は、私たちは理屈だけでは動けないから。「知動」という言葉はなく、「感動」という言葉があるように、人は「感情」が動いてはじめて行動できるとのこと。

3つの方法で「やめる」を実現

人が何かをやめるには、3つの理由(問題)を解消しないと難しい。大平さんによると、方法は幾つかあるようですが、今回は特にオーソドックスな方法を3つ紹介してもらいました。

・やめることを1つにしぼる

大平さん「全ての人に慣性の法則が働いています。さらに脳科学の考えでも、脳は命に差し迫った危険がない限りは、『現状維持』をよしと判断するのです。だから、一度習慣化してしまったことは、なかなかやめられません。何も工夫せず、あれこれ一気にやめることは、とても難しいでしょう」。

そこで着目したいのが「脳の可塑性(かそせい)」です。脳には、ほんの小さな変化であれば受け入れるという性質があり、それをうまく活用することがポイントで、まずは1つに絞って一点突破することが望ましいそうです。

・代替案を用意する

大平さん「脳は否定形を理解できない。『今日からやめます!』と決意や宣言するだけでは、なかなかやめられません。だからこそ、代替案を用意するのが効果的です。とはいっても、そんなに難しく考えなくても大丈夫です」。

方法はシンプルで、「やめたい悪習慣をやめる代わりにこうしよう、こうしたい」という代替案付きの決意をするだけ。「それをやめるとして、どんなことをしたい? どんな状態になりたい?」 と自分に聞いてみるだけでよいのだそう。

  • 3つの理由がやめることを阻害すると話す大平さん

・きっかけをなくす

大平さん「どんな行動にも、必ず始める『きっかけ』が存在します。例えば『スマホでゲームをする習慣』をやめる場合、スマホの見始めとなるきっかけをなくしてしまえば、行動する頻度が減り、スムーズにやめやすくなります」。

例えばスマホを目に触れないようにしたり、ゲームアプリを削除したりすることで、やめたい行動のハードルを高くする(はじめにくくする)と、「慣性の法則」が働きにくくなるため、スムーズにやめやすくなるとのこと。

早起きを実現するには

大平さんによると、早起きは習慣化の中では難易度が高いのだそう。

大平さん「早寝早起きが『習慣化』している人は、実は、特別な努力をしていません。夜は、自然と眠くなるから眠り、朝は自然と目が覚めたから起きているだけなのです。爽やかに目覚めたら、自分がパワフルなことを知っているので、夜更かしするのはもったいないと考えているのです。

逆に夜更かしがやめられない人は、頑張ったり、無理したりせずともできるほど、当たり前になっているのです。つまり、早起きにも夜更かしにも慣性の法則が働くので、変えるのは難しい」。

ではどうすればよいのか? まずは早起きして「すること」を決める。その場合、プラスとなる「朝のコーヒータイムが好き」「朝起きて好きな漫画を読む」など、スイッチが入る目的を決めると良いそうです。もちろん早く寝ることも大事ですし、また、睡眠の質を高めることも有効だと言います。

大平さん「就寝前にメンタルをプラスにすることをお勧めしています。私自身、寝る前にYouTubeでお笑いコンテンツを見て、気分を切り替えて寝ることもあります」。

社会人に時間は貴重なもの。やめることで、時間をより有意義に使うことが可能です。やりたいこと、やるべきことへ時間をかけてみませんか?

取材協力:大平信孝(おおひら・のぶたか)

「最新脳科学」と「アドラー心理学」を組み合わせた、独自の目標実現法を「行動イノベーション」として開発。その卓越したアプローチによって、オリンピック出場選手やトップモデル、次世代経営者、ベストセラー作家、プロアスリートなどのサポートも行う。 その功績が話題となり日経新聞、プレジデント、日経ウーマン、AERA、ラジオ番組など、各種メディアの依頼が続出している。