ここ10年ほどで「プレイングマネージャー」という役職名称が一般的になりました。これは普通の管理職とは何が違うのでしょうか? 何が求められるポジションなのでしょうか? 整理してみていきましょう。
プレイングマネージャーとは
ビジネス用語としてのプレイングマネージャーは、実務担当と管理職を兼任する人を指します。プロジェクトチームを指揮する「マネージャー」と、現場で利益を生む「プレイヤー」の両方を担うポジションというわけです。
プレイングマネージャーの語源
もともとこの言葉は、スポーツ競技における「選手兼任監督」のことを指します。近年では、ヤクルトの古田敦也や中日の谷繁元信などがプレイングマネージャーでした。昭和期のプロ野球にはしばしばこの役職が登場するのですが、それは、選手層の薄さをカバーするための苦肉の策からでした。
プレイングマネージャーが生まれた背景
「プレイングマネージャー」という言葉がスポーツからビジネスの世界へとやってきたのもまた、1990年代前半のバブル崩壊という苦難の時代でした。新規雇用の抑制や管理職のポスト縮小など固定費を削減するための方策の1つとして、営業現場に立ちながら部下のマネジメントもする役職が注目されるようになったのです。
といっても、中小企業の社長がトップ営業することが当たり前のように、日本ではマネジメント業務と現場業務の兼任は決して特別なことではありません。もともとの素地の上に、プレイングマネージャーという用語が導入されていったと見るべきでしょう
プレイングマネージャーの役割
今では営業職だけでなく技術・設計などの製造現場や、SEなどのエンジニア職においてもプレイングマネージャーが増えています。
プレイングマネージャーには、大きく分けて2つの役割が課せられます。それはすなわち「チームとしての目標達成」と「個人としての目標達成」です。自分の数字を確保しながら、チームを運営していかねばなりません。
チームの目標や方針を決定し、全体的なスケジュールを管理し、メンバーに仕事を割り振り、意志決定することが管理職の仕事です。もちろん、部下の能力向上にも努める必要があります。
組織にプレイングマネージャーを置くメリットとして、「精度の高いコミュニケーション」が挙げられます。たとえば、部下の仕事内容をより深く理解することで、自身の実務経験を踏まえた有効なアドバイスができるようになります。現場の最新動向を察知することで、迅速なシステム改善も可能となります。
現場の実情を知らずに下す判断はトラブルや損失につながりやすいものですが、自分も現場に立ちながら意志決定することによって、「少数精鋭」での組織運営が実現できるのです。
プレイングマネージャーがもたらす弊害
プレイングマネージャーは求められる役割・責任が多く、そのため悩み多きポジションでもあります。好成績を収める人が選ばれやすいのですが、それゆえ自分1人で業務をこなそうとしてしまう傾向にあります。「自分でやった方が早い」と思ってばかりでは部下は育ちませんし、自分の業務だけで手一杯になってしまいます。
また、プレイングマネージャーには2つの役割があるために、曖昧な状況になってしまうことがあります。「チームとしては目標に到達したが、個人目標は未達」「個人としては目標に到達したが、チーム目標は未達」。こうした場合はどのように評価されるのでしょうか? 会社と上手にすり合わせていく必要があります。
プレイングマネージャーの在り方
このように困難さはありますが、最前線に立つ管理職として、プレイングマネージャーは現場力を大きく高めることのできるポジションです。
また新入社員にとって、仕事での悩みを乗り越えることができた要因に「先輩や上司の働きかけやサポート」がトップ(※)になるなど、現場にいる身近な上司は職場の鍵となる存在。今後、変化の時代でますます重要性を増していくでしょう。
※出典:リクルートマネジメントソリューションズ 「2019新入社員意識調査」