ビジネスの評価は、コミュニケーションの良し悪しに大きく左右されることがあります。それには、敬意を正しい作法で伝える「敬語」を使いこなさねばなりません。

  • 「気をつけて」と上司に言える?(写真:マイナビニュース)

    「気をつけて」と上司に言える?

今回は、「気をつけて」という言葉を題材に、ビジネスにおける敬語表現について解説します。

気をつけての意味

これは「注意をして」と相手に呼びかける場合などに用いる表現です。相手が重要な取り引きをする・海外出張に行く・危険度の高い現場に向かう・天気が良くないといったシチュエーションでよく使います。

「意識して」「用心・警戒して」「自分自身を大切にして」といった言い換えをすることができます。

気をつけての敬語表現

カジュアルな社風ならば「気をつけて!」と上司を送り出しても問題無いかもしれません。しかし、ビジネスシーンの多くはそうではありません。目上の人や上司、取引先などに対しては敬語で伝えましょう。

次のような表現が「気をつけて」の丁寧な言い回しです。

「お気をつけて」
「お気をつけください」
「お気をつけて~くださいませ」

下に行くほど、より丁寧になっています。まずは「お」を付けましょう。

「気をつけて行って」を敬語にすると「お気をつけていってらっしゃいませ」という表現になります。「気をつけて来て」を敬語にすると「くれぐれも、お気をつけておいでくださいませ」といった言い方になります。

ちなみに、いくら丁寧にしても、そもそも「気をつけて」という単語を目上に使うのはよろしくない、という意見もあるようですが、これは江戸時代から使われ続けている表現です。『抜殻』という360年前の狂言台本に「とのさま、身どもに此やうにお気をつけられまするをば」という一文があります。

【例文】
「この製品の取り扱いはお気をつけて」
「ご無理をなさらずに、お体にはお気を付けください」

そもそもなぜ敬語を使うのか?

日本語の言葉づかいは複雑なもので、先生と生徒・上司と部下・営業とクライアントという関係性だけでなく、扱う情報ツールによっても変わります。たとえばLINEで「拝啓 立夏のみぎり、お健やかにお過ごしのこととお喜び申し上げます。さて、本日は~」などと送られてきたらびっくりするでしょう。

ビジネスチャットでは要件のみを簡潔に伝え、さらに絵文字で感情を添えるのが基本です。それは、「言い回しを考えることに時間を割かない」「密なやり取りをする」「プロジェクトの経緯を共有する」などがビジネスチャットの目的だからです。

相手への「伝え方」は、電話・ビジネスチャット・メール・報告書・手紙といった情報ツールの性質に応じて工夫しなければなりません。

なぜ工夫しなければいけないのでしょうか? それは「良いコミュニケーション」はあらゆる業務を円滑にするからです。

商品を紹介するときも、関係を築くときも、アイデアを交換するときも、プロジェクトを進めるときも、発注するときも、伝え方次第では話がこじれて、あなたは残業を繰り返すことになります。