2020年以降、日本は劇的に変わると考えるのが『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジテント社)の著者である、ブルー・マーリン・パートナーズ代表取締役の山口揚平氏。

「貨幣と情報化社会」の専門研究者でもある山口氏から、若手社員に向けた「アフターオリンピックを生き残るキャリア形成」のためのアドバイスを聞いたので紹介する。

  • 自分のキャリアについて悩むことはありますか?(写真:マイナビニュース)

    自分のキャリアについて悩むことはありますか?

日本社会に爆発的な変化が起きる

今の日本を支えるシステムは、前回の東京オリンピック期に作られたものの使い回しだ。社会制度も産業構造もインフラも、戦後を脱ぎ捨てようとした頃に作られた。経年劣化から、あらゆるところで制度疲労を起こしている。

「社会には『閾(しきい)値』がある」と山口氏は言う。ある反応が起きる境界のことで、70℃の水が100℃になると水蒸気に変化するように、複雑なシステムには爆発的に変化するポイントがあるのだ。それは日本社会も同じだそう。

  • ブルー・マーリン・パートナーズ 代表取締役 山口揚平氏

    ブルー・マーリン・パートナーズ 代表取締役 山口揚平氏

山口氏「平成は『停滞の時代』でした。働けばそれだけ出世できた昭和と違って、平成はいくら働いても成果が出ない時代だったのです。しかし、令和以降は成果を創り出せる時代がきます。

今までの常識が通用しない時代です。オリンピックが開催される2020年直後に、仕事・お金・キャリア・個人……あらゆることが劇的に変わります。これからの社会で、裕福に、幸福になりたいのならば、今考え方を変えなければなりません。最期の猶予期間は、今から3年間だと考えると良いでしょう」。

  • オリンピック後の日本の動き予測 提供:『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジテント社)

    オリンピック後の日本の動き予測 提供:『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジテント社)

お金ではなく信用を貯めることが重要

山口氏は新社会人に向けて、「お金を貯める前に『信用』を貯めなさい」と強調する。

山口氏「そもそもお金とは『外部化した信用』です。円やドルなどの法定通貨、つまり国家が担保する『信用』が揺らいでいる今、お金を求めず、確実な信用から貯めていく必要があります。そして、新入社員や若手社員にとっての信用は、上司や顧客からのものです。

若い頃の信用の貯め方は、『仕事』でしょう。若いからこそ『健康』と『時間』という資源を豊富に持っていますよね。ですから、新入社員はとにかく最初の3年間は、仕事。仕事に、圧倒的な時間を投下すべきです。

英語でもバイオリンでも1,000時間、10,000時間という積み上げが無ければ、スキルとして身に付きません。仕事も同じです。社会人のスタート時に、この貯蓄ができるかどうかで、新たな時代の人生がまるで変わってきます」。

昭和時代の仕事はやらない

最初の3年間は仕事に専念する。一聴すると古くさい精神論に思えるかもしれない。しかし、勘違いしてはならないのは「会社に尽くせ」と言っているのではないことだ。

山口氏「会社を主体にして考えなくていいんです。『働かされている』意識を持ったら終わり。仕事を振られたら負け。昭和世代のやり方を学んだらアウトだと心得てください。言われたことをやるのではなく、顧客や上司の期待を察知し、具体的な解決策を用意して『これをやってみようと思うんですけど……』と宣言して実行することです」。

「どんな仕事でも専念する」わけではない。昭和から引き継がれた業務をただこなすだけでは、どれだけやってもスキルアップにはつながらない。それらはAIや移民などで代替可能だからだ。では、具体的にどう仕事を進めればよいのか。

山口氏「たとえばノルマがある営業職でも、さまざまな施策を講じる余地があります。地方に訪問したり、外国への販路を強化したり、クロスセリングを強化したり、成果報酬型に変えたりだとか。

直感的に『今までのやり方は、おかしいじゃないですか。顧客のためにこういう事をやりましょうよ。』と言えることこそが新人の強みです。そうしてプラスアルファの成果を出せれば、信用をより貯めることができるでしょう」。

3つの原則を心に留める

「いつまでも学生気分じゃダメ」といったお説教はよく耳にする。しかし、学生気分とはいったいなんなのか。社会人はどんな意識を持っているのか。その違いはたった1つだと山口氏は語る。

山口氏「『意識が自分に向いているのが学生、他者に向いているのが社会人』です。主体的に他者への貢献ができるのが社会人であり、はた(傍)をらく(楽)にするのが働くということ。

貢献と聞くと、小難しく感じるかもしれません。しかし心理学では、一日中ゲームで遊ぶことも、人のために何かして感謝されることも、幸福量的には大差ありません。貢献のコスパは悪くないですよ」。

「給料をもらうために働かされている」と考えると、仕事はつらいものになる。けれど、相手に感謝されようと思ってスキルを磨くようになれば、幸福と成長の良い循環が生まれる。

成果を重ねて「信用残高」が貯まれば、社内外での発言力が増し、「あいつに任せておけば大丈夫だろう」となる。そうすれば、どんどん楽しくなるそうだ。

山口氏「仕事は、究極的には『誰かの紹介』からしか生まれません。自分が20代30代に積み重ねた実績が、やがて大きな仕事へつながり、大金へと転換されるのです。

信用を貯めるための原則は3つです。『ベクトルを他者に向ける(自分のことを考える時間が長すぎないように)』、『自分からやる(相手に従うのではなく、自分からカードを切る)』。『今までと違うことを提案する(昭和のパラダイムで仕事をしない)』。新社会人は心に留めておいてください」。

取材協力:山口揚平(やまぐち・ようへい)

1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事。カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業。現在はコンサルティング会社をはじめ、複数の事業を運営する傍ら執筆・講演活動を行っている。最新刊に、『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジテント社)がある。