声優・アーティストの村川梨衣のオーケストラコンサート「村川梨衣 オーケストラコンサート ~梨の季節~」が4月21日、千葉・舞浜アンフィシアターにて開催された。

今回の公演は、これまで2回のライブとは違った、東京ニューシティ管弦楽団とともに作り上げる“コンサート”。ストリングスの映える楽曲の多い村川の音楽“RiEMUSiC”をこの上なく楽しめる公演をみせてくれた。本稿では、そのうち昼の部の模様をお届けする。

  • 村川梨衣

■心の底から感動!「はじまりの場所」の生音完全再現

開場時から、ステージ上にはオーケストラの楽器がずらり。開演の数分前からチューニングが行われると、ピアニストであり、この日のための楽曲アレンジや当日の指揮も行った大嵜慶子が入場し拍手が起こる。そして彼女が「水色のFantasy」のイントロを奏で始めると、ステージ上の照明も水色に。そこにオーケストラの合奏が加わったところで村川が登場。

ステージの中央で、壮大にアレンジされたサウンドにマッチする、音源とはまったく違う麗しさを前面に出した歌声を響かせていく。ビブラートなど技術的な面でのレベルアップもみせながら、少しオトナにこの曲を仕上げ、1曲目からこのコンサートの開催意義を感じさせてくれた。その後奏から続くピアノの独奏に導かれて始まった「戻れない旅」は、ボルテージ抑え気味のアレンジと低めの声域のボーカルがマッチし、より深みを増した印象。

それでいてサビなど強調する部分は強く発し、「水色のFantasy」とは違うアングルからの“聴かせる”1曲に。加えて、オーケストラならではの壮大さを持ったDメロもこの日ならではの魅力だった。

その一方で、曲明けのMCは普段どおりのテンションで進行。コンサートグッズ恒例・“武器”の第三弾・魔導書(型ペンライト)を掲げてもらい、「そんな感じなん!?」とその光景に感動する。さらに、コンサートプログラムのようにこのあと演奏の4曲を紹介し“武器”の使用可能な楽曲も指定していくと、こちらも村川のステージで恒例の、ライブ再開前のファンの3カウントをバックにした給水へ。

いつもどおりのファンの「さーーーーーん!」のロングトーンにも助けられつつ3カウント内での給水を成功させ、「夜明けの恋」から楽曲の披露を再開する。非常にストリングスの生きるこの曲でも、村川は少女性を保った歌声を披露。透き通るようなファルセットから入るサビや、その締めのウィスパー気味の歌声はグッとくるし、歌声オンリーとなった最後のフレーズ直後にインサートするウインドベルの音色から始まる後奏も、また美しい。

続く「Baby, My First Kiss」は、イントロ中のコーラスパートをフルートが執る点がまず新鮮。パーカッションの軽さもあいまって、サウンドにはどこかアコースティックバージョンのような軽快さも。その一方で、この曲ならではの一体感はここでも健在。いつものようなBメロでのコールやサビでの客席からのクラップなどで盛り上がり、最後はともに魔導書を振る村川と一緒に、ラストのフレーズを会場全体で合唱し締めくくった。

そして、このコンサートの開催意義のひとつであったであろう「はじまりの場所」で、コンサートは前半の山場を迎える。この日を逃すと、生音完全版をいつ聴けるかわからないこの曲を、優しさとスケールの大きさを感じさせる歌声で場内全体を包み込むように歌っていく。直前からスタンバイしていたバンドメンバーもここから演奏に参加し、CD音源が最良の形で再現される。さらに、ピアノをバックにステージで歌う村川の姿もMVをほうふつとさせるもの。聴覚と視覚の両面から、最高に贅沢な体験をさせてくれた。

■速くて強い曲では、ストリングスが大事なエッセンスに

ここで村川は一旦降壇。バトルを連想させるバンドメンバーソロのフィーチャーも挟んだオーケストラ中心の“コンサート”がしばし展開されると、ものものしさも感じるイントロの「Bright」へ。民族調のパーカッション響くなか、リフトアップで村川が再登場。ボーカルは鋭めに、それでいてサビではそこに力強さも付加し、サウンドのティンパニと合わせて楽曲に雄々しさを与えていく。その力強い姿、まるで眼前の赤の魔導書輝く客席から力を得たかのようだった。

4曲披露が終わり、大きく響く拍手に再び素に戻ってはしゃぐ村川。「Bright」について「はちゃめちゃにかっこいい感じで、『ひゅー!』って感じで素敵でした」と興奮もあらわにする。また、このあと披露する楽曲の紹介中、そのなかの「レクイエム -Requiem-」への反応の良さに「ひゅーっ!」と喜びをあらわにする一幕も。そして3カウント給水をかわいらしい身振りで切って終えると、次曲「硝子の扉」へ。

この曲もオーケストラならではの迫力の出た、メロディアスでゴシックなナンバーで、村川もイントロで振付を交えたりと再び楽曲に没入。サビの最高点は、この曲は地声で鋭く歌われていく。その村川の歌声とサウンドとの溶け合いも、非常にバランスが良いものだった。そこからギターの音色に続けて、お待ちかねの「レクイエム -Requiem-」がスタート。

バンドサウンドをオーケストラが支えるというスタイルで届けられたライブ定番曲は、楽曲のスピード感をストリングスがさらに高めていく。村川の歌声もロックらしい鋭さと勢い・強さを持ったものに。一方、原曲はかわいげと爽やかさが強い「ドキドキの風」は、ここでは少しメロウなアレンジとなり、それに合わせてボーカルも少し大人びたものに。その一方でサビラストのファルセットでの高音は青空へと飛んでいくような透き通ったもので、また絞った歌声で入った落ちサビから開放する大サビまでのメリハリも、非常によく出ていた。