弊社と当社の意味と使い方

ここまで、相手側の会社を指す言葉についてお話ししましたが、ここで、自分の会社をあらわす言葉について少し触れたいと思います。

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自分の会社を指す言葉といえば、「弊社」「当社」が一般的ですね。どちらも意味は同じですが、「弊社」は自社をへりくだって言う謙譲表現であるため、基本的に社外の人との会話や文書に用います。一方「当社」は、社内会議など、身内との会話の中で自社を丁寧に言う場合に用いられる表現になります。

(例文)

  • 弊社の商品をご愛顧頂きまして、誠に有難うございます。
  • この度、弊社事務所を移転することになりました。
  • A社に比べて、当社は少々後れをとっています。
  • 当社の売り上げが、B社を上回りそうです。

ただし、必ずしも「社外には弊社」「身内には当社」と決まっているわけではありません。例えば、ホームページやパンフレット、あるいはメディア対応など、不特定多数の人に向けて自社をアピールするような場合には、へりくだる必要がないことから「当社」が用いられます。

(例文)

  • 当社製品をご愛用いただき、ありがとうございます。
  • 当社へのご意見・ご要望がございましたら、お寄せください。

また、商談で強気に出る場合に、あえて「当社」を用いるのも一つの手です。さらに、自社のプライドを傷つけられた時や何かしらの損害を受けるような場合には、「我が社」を使用することでより強い気持ちを表現することが可能です。

(例文)

  • 当社としましては、この条件は到底受け入れられません。
  • 当社は、国内で業界1位のシェアを占めております。
  • 我が社のブランドイメージを著しく汚されたことに、強く抗議します。

いずれにせよ、へりくだるべき状況か否かを見極め、臨機応変に使い分けるようにしましょう。

転職面接で「自社」を表現するには?

転職時の面接では、「自社」のことをどう表現すれば良いのでしょうか。

例えば「弊社」と表現した場合、あなたの現在の会社が転職先に対してへりくだることになります。転職活動はあなた個人の問題であるにもかかわらず、勝手に今の会社のことを「弊社」とへりくだるのはおかしな話しですね。このようなシーンでは、「現在の勤め先」「現職」「前職(退職済の場合)」などが相応しい表現になりますので、あわせて覚えておきましょう。

使い方・使い分けに注意が必要なビジネス用語

「御社・貴社」「弊社・当社」のように、ビジネスシーンには、同じ意味でありながら状況に応じて使い分けなければならない用語や、敬語の使い方に注意しなければならない用語がいくつもあります。どのような使い方が正しいのか、いくつかご紹介しましょう。

「御中」と「様」の使い分け

ビジネスシーンでメールや文書を送る場合に、宛名につける敬称といえば「御中」と「様」が一般的ですね。両者を正しく使うには、組織や団体に使う場合は「御中」を、個人に対しては「様」を用いるよう使い分ける必要があります。

また、『敬称は併用してはいけない』というルールがあることから、「御中」と「様」の併用はもちろんのこと、「社長」「部長」「店長」といった役職名(敬称)との併用もNGとなります。「○○部長様」などと表現すると二重敬語になってしまいますので、注意しましょう。

(正しい表現の例)

  • ○○株式会社 御中
  • ○○株式会社 人事部 御中
  • ○○株式会社 営業二課 △△ 様
  • ○○株式会社 営業部長 △△ 様

(誤った表現の例)

  • ○○株式会社 △△営業部長 様
  • ○○株式会社 御中 △△ 様

「参考になりました」と「勉強になりました」の使い分け

「参考」という言葉に、「判断材料の一つとする」という意味があることから、「参考になりました」=「(自分の考えは既に決まっているので)あなたの意見は足しにします」「参考程度に聞いておきます」といったニュアンスが感じられ、上から目線のような印象を相手に与えかねません。ゆえに、目上の人に対して使用するには失礼な表現とされています。

一方、「勉強」という言葉には「学ぶ」「経験を積む」といった意味があることから、「あなたの意見を聞いて知識が増えました」という謙虚なニュアンスが強く、相手に良い印象を与えることができます。

「了解しました」と「承知しました」の使い分け

「理解しました」の丁寧語が「了解しました」、謙譲語が「承知しました」になります。丁寧語である「了解しました」は同僚や目下の人に対して使う言葉であって、取引先や目上の人に使うものではありません。取引先や目上の人に対しては、謙譲語である「承知しました」を使うようにしましょう。

「お連れしました」はNG!

来客を案内する際に「お連れしました」というのは不適切です。敬意を払っている相手が、お客様ではなく自分の上司になるからです。また、「連れ」という言葉が自分と対等あるいは目下の人に使う言葉であるため、お客様に対して使うのは失礼です。

この場合、「来る」の尊敬語である言葉を用いて、「お見えになりました」「おいでになりました」「お越しになりました」とするのが適切な表現になります。

目上の人に「頑張ります」はNG?

「頑張ります」は丁寧語ですから、目上の人に使っても問題のない言葉ですが、ビジネスシーンでは話し言葉に限定して使うことをオススメします。なぜなら、「頑張ります」という言葉は、声のトーンや表情の影響を受けやすい言葉だからです。また、頑張るのは自分自身ですから、なるべく、自分の動作をへりくだって言うことで相手を立てる「謙譲語」を用いると良いでしょう。

(例文)

  • 更なる業績アップに向けて、より一層励んでまいります。
  • これからも、誠心誠意努めてまいります。
  • ご期待に添えるよう、全力を尽くす所存です。
  • より一層精進してまいりますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

このように、「頑張る」という言葉自体を「励む」「努める」「尽力する」「精進する」といった言葉に言い換えたり、さらに「~いたします」「~参ります」といった表現を付け加えたりするといいでしょう。

このほかにも、ビジネスシーンには、使い方に注意しなければならない言葉がたくさんあります。特に、日本語における敬語の使い方は、日本人であっても難しいものですね。最後に、敬語の定義について今一度確認しておきましょう。

  • 丁寧語 聞き手に対して丁寧に述べる時に使う表現。相手や内容を問わず使うことができる。

  • 謙譲語 自分の言動をへりくだって言うことで、相手を立てる表現。

  • 尊敬語 相手側の言動に対して敬意を払う表現。


今回は、「御社」「貴社」を中心に、使い分けに悩む用語を取り上げてみました。とりわけ日本語の扱いは難しいもので、「正しいと思って使っていた言葉が、実は失礼な表現だった」なんて経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

しかしながら、ちょっとした言葉の選び方で、仕事ができる人かどうか、一緒に仕事をしたいと思えるかどうかが判断されてしまうのも事実です。専門的な技術や知識だけでなく、言葉のスキルもしっかり身に付けていきたいものですね。