JR東日本は9日、新幹線試験車両E956形「ALFA-X」の報道公開を実施した。2種類の形状の先頭車が製作され、中間車も窓の大きさなど異なるデザインとなった。東北新幹線仙台~新青森間を中心に、5月10日夜から走行試験を開始するという。
試験車両のE956形式新幹線電車10両編成「ALFA-X(アルファエックス)」は、次世代新幹線の開発を進めるための試験プラットフォームとして設計・製作された。1~6号車は川崎重工、7~10号車は日立製作所が製造を担当したとのこと。報道公開では「ALFA-X」の外観や運転席内部などが公開された。
愛称名の「ALFA-X」は「Advanced Labs for Frontline Activity in rail eXperimentation」から取り、「最先端の実験を行うための先進的な試験室(車)」を意味する。一部車両にロゴマークを掲出したほか、クロス状の側帯も外観における特徴となる。周囲の色を取り込む明るいメタリックのボディに、自然と都市間における人々の活発な行き交いを表したグリーンの帯を合わせ、清々しさを感じる色彩とした。
先頭車は2種類の形状で製作された。1号車はE5系とほぼ同じ約16mの先頭長としつつ、「削ぎ」「畝り」「拡がり」といった風の流れによって作られる要素を取り込んだ形状とし、トンネル突入時の圧力波の抑制と室内空間の確保の両立をめざす。10号車は先頭長を従来よりさらに長くすることで、トンネル突入時の圧力波の抑制に加え、環境性能も追求。約22mに及ぶロングノーズは、台車部を覆うせり出した造形、運転士を包み込む造形、後方に向けてなめらかにつなぐ造形の3つで構成されるという。
中間車の2~9号車のうち、3・7号車は他の車両と比べて窓が小さく、5号車には客室の窓が設けられていない。これらの車両では、窓の大きさや有無による車両構造・客室内環境等の評価が行われる。8号車は客室を2つに分けた車両となり、客室環境の比較評価が行われる。走行時は先頭車・中間車の各車両に測定器等が搭載される。
「ALFA-X」ではさらなる安全性・安定性を追求。地震時により早く止まるための開発品として、空力抵抗板ユニットを屋根上に搭載するとともに、リニア式減速度増加装置も開発した。脱線しにくくさせるための開発品として、地震対策ダンパやクラッシャブルストッパも搭載。台車の異常状態を把握するシステムとして、車体・台車・箱軸などへ振動センサと温度センサを設置する。着雪しにくい新たな床下構造の試験も行う。
より快適な車内空間を実現するため、動揺防止制御装置と上下制振装置で左右・上下方向の揺れを抑え、曲線通過時は車体傾斜制御装置によって車体を傾斜させることで乗り心地の向上を図る。あわせて環境性能の向上も図り、空力騒音を低減した構造の低騒音パンタグラフ2種類を採用。ヒンジ部をカバー内に配置したパンタグラフ、ヒンジ等の構造やカバーの形状を改良したパンタグラフをそれぞれ搭載し、試験を行う。
メンテナンスの革新にも取り組み、地上設備や車両の各機器をモニタリングする装置を搭載。試験を通じてデータを収集し、それらを活用してさらなる安全・安定輸送を実現するとともに、CBM(Condition Based Maintenance : 状態基準保全)の実現もめざす。安全性・安定性、快適性、環境性能、メンテナンス性をIoTやビッグデータ、AIなどを活用して実現するため、車両内の情報・制御ネットワークも強化するという。
新幹線試験車両E956形「ALFA-X」の走行試験は2019年5月から2022年3月にかけて、東北新幹線仙台~新青森間を中心に実施。営業列車の走行しない夜間を基本に、週2回程度行われる。車両性能試験のために最高速度400km/hの走行を数回程度行うほか、最高速度360km/hまでの走行を実施予定とのこと。試験車両による長期的な走行試験を通じ、次世代新幹線における環境性能の向上をはじめ、これまで進めてきた地震対策を含む安全性向上等の開発の検証を行う。