NHK連続テレビ小説の節目となる100作目『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)に出演中の俳優・藤木直人を直撃。藤木が演じるのは、広瀬すず演じるヒロイン・奥原なつの育ての父・柴田剛男役。少し頼りなくても、育ての親として常になつを気遣い、見守っていくという重要な役どころだ。藤木の朝ドラ出演は、竹内結子主演の朝ドラ『あすか』(19)以来、約20年ぶりとなった。

  • 藤木直人、なつぞら

    『なつぞら』で柴田剛男役を演じる藤木直人

■「剛男さん」と呼ばれるように頑張りたい

――約20年ぶりに朝ドラに出演された印象から聞かせてください。

やはり朝ドラは、多くの方に愛される作品で、影響力も大きいなあと、改めて思い知らされました。『あすか』で19年半前に参加させてもらった時は、あだ名が“ハカセ”だったので、「ハカセくん」と呼んでもらえて、すごくうれしかったことを覚えています。だから『なつぞら』でも、町中で「剛男さん」と呼ばれるように頑張りたいと思います。

――最初に脚本を読んだ時の感想を聞かせてください。

戦災孤児の話と聞いていて、かなりシリアスな物語なのかと思っていたら、大森(寿美男)さんの脚本は、すごくユーモアに溢れ、コメディタッチだなと思いました。絶対的に強い泰樹(草刈正雄)さんと、子育てをしっかりしていて、泰樹さんに対しても思ったことを言える強い妻の富士子(松嶋菜々子)ちゃんがいて、剛男はその間で揺れている。そこがおもしろいし、チャーミングに見えたらいいなと思って演じています。

■子役の粟野咲莉から学び

――なつの子ども時代を演じた粟野咲莉ちゃんの印象を聞かせてください。

お芝居がみずみずしいので、逆にこっちが勉強させられました。もちろんまだ経験も浅く、子供なので器用じゃない部分もあるかもしれませんが、あれだけ余計なものを排除し、主人公になりきれる力はすごいと思いました。本作は朝ドラの王道を行く作品で、子役時代から始まりました。広瀬さん演じるなつに切り替わるのは3週目だったから、いい形で繋げられればいいなという思いもありました。

――剛男は、なつを東京から北海道へ連れてきますが、まさに運命を変えた人ですね。

ネットに「なつは三人兄妹なのに、1人だけ連れてくるなんてひどい」という書き込みがありました(笑)。もちろん事情があってなつを連れてきたわけですが、どこか鈍感で、あまりわかってない感じも剛男なのかなと。連れてきてからは「あとはよろしく」と任せっきりだし、人生とは、仕事とは、を教えてくれるのは全部泰樹さんで、僕が教えることはゼロなんです(苦笑)。

――実際に剛男の立場になって考えた時、その行動についてどう思いましたか?

剛男は無責任になつを連れてきてしまったのですが、あの時代、親を失った不幸な方が少なくはないわけで、誰かが誰かを支えるということは普通にあったから、現代に置き換えてもしょうがないかなという気もします。

ただ、剛男は、なつがいつかは離れている兄妹と一緒に暮らすだろうという思いがあったと思うんです。名字も籍も入れなかったのは、「戦友の子どもを預かっている」という気持ちが大きかったからではないかと。でも、なつがあんなにいい子だから上手くいったけど、もしそうではなかったら、果たして柴田家はどこまで受け入れられたのか?とも考えたりします。

  • 藤木直人

■さじ加減悩んだ「富士子ちゃ~ん」

――妻・富士子役が、かつて『ひまわり』(96)で朝ドラのヒロインを務めた松嶋菜々子さんという点も感慨深いです。剛男が戦地から戻ってきたあと、夜に「富士子ちゃ~ん」と布団に誘うシーンがとてもおちゃめでした。

あのシーンは、どういうふうに見えたらいいのかというさじ加減が難しかったです。朝にオンエアするものだから、あまり生々しくてもよくないし、かといって2年ぶりに会えた妻だし、ひょっとしたらもう会えないかもしれかった中で帰ってきたから、そういう夫婦の関係性が見えたらいいなと思いました。でも、そのまま表現しすぎるのもどうなんだろうと。ああいうシーンは監督もみんなも恥ずかしがるんです(笑)。

――「フ~ジコちゃん」と呼ぶ声は、ルパン三世さながらのトーンでした。

あのシーン、監督がなかなかカットをかけてくれなくて。ただ、あの“富~士子ちゃ~ん”というニュアンスはあまりにも……と思っていたのですが、まさかあそこを使うのかと。いいところで切れていて、編集で助けられた感じでありがたかったです(苦笑)。

■淡々とした広瀬すずの凄み

――広瀬すずさんの現場での印象を聞かせてください。

製作発表の時、松嶋さんが「ヒロインは大変です」とおっしゃっていたけど、広瀬さんは待っている間に台本を読んでいる様子が全くないので、いつ台詞を覚えているんだろうと。そうやって淡々といてくれるからこそ撮影が順調に進んでいるんだなと思います。

広瀬さんは、お芝居に対してすごく情熱があります。僕が19年前に朝ドラに参加させてもらった頃のヒロインは、新人の方の登竜門という一面がありました。今もオーディションで選ばれる方もいますが、広瀬さんはすでにご自分の代表作をいっぱい持っている方なので、草刈正雄さんや松嶋菜々子さんたち俳優陣の中の1人という感じです。

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■プロフィール
藤木直人(ふじき・なおひと)
1972年7月19日生まれ、千葉県出身。1995年に映画『花より男子』で俳優デビュー。ドラマはNHK連続テレビ小説『あすか』(19)、フジテレビ『ナースのお仕事』や日本テレビ『ホタルノヒカリ』シリーズ(07~)、フジテレビ『ラスト・シンデレラ』(13)、フジテレビ『グッド・ドクター』(18)など多くの話題作に出演。また、日本テレビ『おしゃれイズム』(毎週日曜22:00~)や、JFN系列ラジオ『TOYOTA Athlete Beat』(毎週土曜10:00~)ではメインパーソナリティを務めるなど、活躍は多岐にわたる。アーティストとしては1999年にCDデビュー。音楽デビュー20周年となる今年、20周年記念オリジナルアルバム『20th -Grown Boy-』を6月19日にリリース。そして同年7月には全国ライブツアー「Naohito Fujiki Live Tour ver12.0 ~20th-Grown Boy-みんなで叫ぼう!LOVE!!tour~」を開催予定。