東武鉄道は4日、蒸気機関車C11形の復元作業(車輪抜き)の様子を報道関係者らに公開した。「SL大樹」を運行する同社は昨年11月、2機目となる蒸気機関車C11形を受け入れ、復元作業を進めている。復元予定は2020年冬とされている。

  • 復元作業の進む蒸気機関車C11形。東武鉄道が車輪抜きの作業を公開(写真:マイナビニュース)

    復元作業の進む蒸気機関車C11形。東武鉄道が車輪抜きの作業を公開

同社により復元されるC11形は1947(昭和22)年、江若鉄道(滋賀県)の発注で日本車輌製造にて製造。江若鉄道で客車を牽引した後、北海道に渡り、1957(昭和32)年から雄別炭礦鉄道、1970(昭和45)年から釧路開発埠頭で貨物列車を牽引した。1975(昭和50)年の廃車後、道内で静態保存されていたという。昨年11月に東武鉄道が受け入れた後、大手私鉄では初という動態保存を目的とした蒸気機関車の復元に着手。今年2月から車体の解体を開始している。

復元作業は南栗橋車両管区SL検修庫にて行われ、この日はC11形の下回り(動輪など)と車体を分離する車輪抜きの作業が公開された。JR東日本などの蒸気機関車の復元で実績を持つサッパボイラの協力の下、10名以上の作業員により進められ、SL検修庫のクレーンを使用して車体を吊り上げる作業が慎重に進められていく。車体が分離する段階でたびたびストップがかかり、緊張感の漂う場面もあったが、クレーンで吊り上げられた後はスムーズに作業が進んだ。車体は馬台へ移され、約1時間で作業は完了となった。

  • 車体の前後にクレーンが取り付けられる

  • 車体を吊り上げようとするも、たびたびストップがかかり、前輪や一部の部品を外しながらの作業となる

  • 作業開始から約30分。ようやく車体が吊り上げられる

  • 吊り上げられた車体が馬台へ移され、作業が完了

作業員たちは「SL大樹」を牽引するC11形207号機(JR北海道から借り受けた蒸気機関車)でも車輪抜きなどの作業を経験しているが、今回は40年以上にわたり静態保存されていた蒸気機関車の復元に取り組んでいることもあり、「錆などがあって想定通りに行かないところもありましたが、そこは臨機応変に対応しました」「緊張しました。どうにか作業を終えることができて、ほっとしています」との声も聞かれた。

解体後の具体的なスケジュールは未定とされたが、動輪は日本製鉄、ボイラーはサッパボイラへそれぞれ送られ、復元に向けた詳細な調査を行う予定だという。復元作業にも協力するサッパボイラの担当者は、「これだけの重量物(車体の重さ約10トン)を吊り上げるという重大な局面の作業でしたが、安全第一に、全員で監視し、声をかけながら、トラブルなく順調にできたと思います」と作業を振り返り、「解体後は調査に入り、それぞれの部品が使えるか使えないか判断していく必要があります。作業の第1段階は終わりましたが、これからが大事になってくると思います」と話していた。

今回公開されたC11形の復元が完了すれば、現行の「SL大樹」を牽引するC11形207号機と合わせて2機体制となり、日光・鬼怒川エリアで年間を通じたSL安定運転が可能に。他線区でのイベント運転なども検討できるようになるという。なお、これら2機に加え、真岡鐵道が所有し、今年3月に一般競争入札が行われた蒸気機関車C11形325号機を東武鉄道が落札したことも報じられている。

  • 復元作業を行うC11形の部品は約1万点に及び、現在は約4割を取り外した状態だという