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そんなチームで制作された今作『大奥 最終章』の主演に選ばれたのは、女優の木村文乃。演じる役は、8代将軍・吉宗(大沢たかお)の側室である久免で、「素朴で野性味があって、それでいて飾らなくてもきれいな人にしたいねという話を浅野さんとしていて、名前が出てきました。内助の功で上様を支えるようになると、大奥の中で確固たる地位を得て、名実ともに立派な側室として大奥のトップになるというイメージが自然にできましたね」という。

本人は、フジテレビドラマ初主演で、周年ドラマの主演を張ることに恐縮していたそうだが、20日に行われた記者会見では「エンタテインメントって面白いなと思っていただける作品なので、ぜひ3月25日よる8時から、みんなで大炎上できたら」と、堂々たる座長の風格。保原氏も「やられても折れない、イメージ通りの内面の芯の強さを感じましたね」と感心していた。

そして、大奥名物のバトルを繰り広げるのは、6代将軍・徳川家宣の側室・月光院を演じる小池栄子と、家宣の正室・天英院を演じる鈴木保奈美だ。『華の乱』にも出演している小池については「最終章ということで何かしら出ていただきたいと思っていたところ、前の役のイメージが強いかと不安だったんですが、文句を言わせない力があると思ったので、プロットを作る段階で決めました」といい、鈴木に関しては「『SUITS/スーツ』で女ボスぶりが素敵だと再確認したんです」ということでオファーした。

  • 『大奥 最終章』に出演する(左から)鈴木保奈美、木村文乃、小池栄子

彼女たちが繰り広げるバトルの一方で、今作のメインテーマに“家族愛”を据えたのは、「親子や姉妹の話はやってきたんですが、実は家族という大きな愛をやってこなかったんです」と理由を説明。「新しい天皇陛下が即位されるという時代の変わり目ということで、このテーマに決めました」と狙いを語る。

そして、今作は『最終章』と銘打ち、シリーズを完結させることになった。「これまで触ってこなかった将軍の時代でもできるとは思いますが、劇的に違う描き方にはならないと思って、正直やり尽くした感があるんです。私と浅野さん、林監督が作ってきた『大奥』はこれで終わりにしますが、『ここの時代が面白いんだよ』という人が出てきて、5年後10年後にやってもらっても面白いと思いますね」と、期待をかける。

■時代劇のフジ、今後の展望は…

トレンディドラマのイメージが強いフジテレビだが、前述の通り、2000年代前半までレギュラー枠を持つなど、実は時代劇にも力を入れてきた局だ。五社英雄、能村庸一といった名監督、名プロデューサーが存在し、「『銭形平次』の東映、『鬼平犯科帳』の松竹、『御家人斬九郎』の映像京都と、京都の制作会社3社と全部お付き合いがあったのはフジテレビだけ。各社の良いところをいい形で引き出してやってきたことで、バリエーションの広さにつながったんです」と背景を明かす。

フジテレビの保原賢一郎氏

最近は地上波で時代劇が放送されることがほとんどなくなってしまったが、「『鬼平犯科帳』からの池波正太郎作品の流れで、北大路欣也さんがやってくれている『剣客商売』は、本当に残していかないと」と使命感を持つ。一方で、池波氏は「原作にないものはやってくれるな」と遺言を残していることから、新たな時代小説を発掘していく必要もあるだろう。

そんな作品と、「もっと女性が気楽に見られるものを」と始まった『大奥』との両輪で走ってきたフジの時代劇だが、今後の展望を聞くと、「本数が減っても残していきたいですね。地上波は偶然接触する機会があるので、頑張らないといけないと思っています」と意気込みを語る保原氏。「『大奥』では女性の世界をひたすらやってきたので、全然違う男臭い作品というのを考えたりもします。京都のスタッフも含めたすばらしいチームでできるのは我々だけなので、ぜひやっていきたいですね」と意欲を示している。


●保原賢一郎
1969年生まれ、宮城県出身。中央大学卒業後、92年フジテレビジョンに入社。情報番組『おはよう!ナイスデイ』を担当した後、映画、ドラマ、編成を担当。主な担当番組は『大奥』シリーズや『鬼平犯科帳』『剣客商売』といった時代劇をはじめ、『薔薇のない花屋』『婚カツ!』『BOSS』2ndシーズン、映画『東京日和』など。

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