1959年3月1日に開局したフジテレビは、25~31日に「フジテレビ開局60周年記念WEEK」を展開し、ゴールデンタイムで、ドラマ、バラエティ、スポーツ、報道、情報の豪華特番を次々に放送する。

この手の周年特番で定番なのは“有名タレントの過去の名場面”だが、期間中夕方に生放送される『グレイティストTVショー~ブラウン管が生んだスターたち~』(25~29日 15:50~16:50 ※関東ローカル)は、一味違う番組になりそうだ。企画した編成部の情野誠人氏に、その狙いを聞いた――。

  • Mr.マリック、プリンセス天功、横井庄一さん、鈴木その子、大貫久男さん、宜保愛子

    (上段左から)Mr.マリック、プリンセス天功、岩石を素手で割る男、鉄棒を曲げる男 (下段左から)横井庄一さん、鈴木その子、大貫久男さん、宜保愛子 (C)フジテレビ

■“昔は面白かった”で終わらない

『グレイティストTVショー~ブラウン管が生んだスターたち~』は、曜日ごとにジャンル分けし、テレビが生んださまざまなスターをテンポよく振り返っていくという番組。紹介されるのは、くしゃおじさん、火を食う男などの「びっくり人間編」(25日)、『あいのり』の参加者、『あっぱれさんま大先生』の破天荒キッズなどフジの人気番組が生んだ「スーパー一般人編」(26日)、鈴木その子、“一億円拾得事件”の大貫久男さんなどワイドショーを連日騒がせた「世間を賑わせた人編」(27日)、Mr.マリック、プリンセス天功といった「エンターテイナー編」(28日)、そして「あのスターも若かった編」(29日)と、時代を代表するような華やかな“スーパースター”とはまた違った人たちだ。

情野氏は「開局60周年WEEKを展開するにあたって、過去のフジテレビのタイムテーブルを振り返ってみたら、ラテ欄(新聞のテレビ欄)がすごく面白いんですよ。例えば“びっくり人間”だったら『香港の火を食う女』とか『1万ボルトの電気イスに座る男』とか『電球10個を食う男』とか(笑)。この人たちは、テレビという日本全国に同時発信できるメディアの登場によって、急にスターダムにのし上がった人たちですよね。これはあらためてすごいことだなと思って、そういったテレビだからこそ生まれたスターたちに注目した番組にしたいというところから始まったんです」と、企画の経緯を語る。

その上で、「“昔は面白かった”で終わるのではなく、未来に向けて、これからの60年でどんなスターたちが時代に合わせて生まれてくるんだろうというのを考えるきっかけにしたいと思って企画しました」と狙いを説明。テレビの生んだスターたちが“今何をやっているのか?”を追加取材し、VTRでは「恥ずかしながら帰って参りました」で知られる横井庄一さんの妻や人面魚などの現在が明らかになり、生放送のスタジオにも、トランプマンや約50年前に話題となった「岩石を素手で割る男」という面々が登場する予定だ。

■テレビ発のスターを生みやすい土壌

フジテレビ編成部の情野誠人氏

今回の番組制作を進める中で、フジテレビは「やっぱり“人”を大事にしてきた局だったんだとあらためて気づかされました」という情野氏。「『欽ドン!』『オレたちひょうきん族』では人気タレントが一般の方と絡むことにより、相乗効果でどちらもスターになっていきました。が、『とんねるずのみなさんのおかげでした』では“野猿”という番組スタッフがスターになり、『オールナイトフジ』や『夕やけニャンニャン』では誰も知らなかったお兄さん、お姉さんが、今なお活躍する大スターに変貌をとげていきました」といい、「その場のノリで、面白い人にスポット当てるという文化があるんだと思います」と、テレビ発のスターを生みやすい土壌がフジにはあるのだという。

また、過去の番組が、現在の番組と比較して、「ある種の“緩さ”みたいなものを大事にしていた」という傾向があることも発見。「びっくり人間でも、振りの部分がすごく長いんです。アナウンサーが出てきて、『この人はタイで普通の夫婦として暮らし、子供が何人いて…』という背景を丁寧に説明した上で、『さぁどうぞ!』みたいな。これによって、テレビの向こう側であるスタジオとお茶の間との“接着点”の効果があるのだと思いますが、今のテレビのロジックで言うと、『ここはどうでもいい情報だよね』とか『視聴者が見たいのはびっくり人間が出てくる瞬間だよね』となってどんどん削られて、その最たるがものが『衝撃映像100連発』といった番組ですよね」と変化を語る。

それを踏まえ、「やっぱり今のテレビのほうが、クオリティとして圧倒的に面白いと思います。それは、先人たちが試行錯誤して、制作方法が研ぎ澄まされてきたからなんです」と、あらためて実感したそう。今回の『グレイティストTVショー』では、それぞれのジャンルで、古い年代から現代に向かって紹介する構成となることから、テレビ番組の進化の過程を垣間見ることもできそうだ。

■生放送でフジが久々“お祭り”に

一方で、各曜日を彩るMCにも注目。高島彩&中野美奈子(25日)、加藤綾子&椿原慶子アナ(26日)、河野景子&八木亜希子(27日)、内田恭子&木佐彩子(28日)、小島奈津子&西山喜久恵アナ(29日)と、フジ出身のレジェンド&現役女子アナが、日替わりで登場する。同期コンビや、高島&中野の『めざまし』ペアなど、ゆかりのある2人がタッグを組むことで、「給湯室で話すようなイメージで、フジテレビを楽しく振り返ってもらえれば」と期待を込める。

同期で同じ番組に起用されることはあまりないため、在局当時にも見られなかった貴重な2ショットも実現。「世間を賑わせた人編」を担当する河野&八木ペアは、自身も“世間を賑わせた人”であり、女子アナブーム最盛期のエピソードなども含め、生放送での発言に注目が集まるだろう。

生放送にすることで、緊張感やリアル感を出すことや、ゴールデン帯の特番からゲストが登場して番宣をするという狙いがあるが、通常はドラマやバラエティの再放送を編成する枠で、ベルトの生特番を放送することによって、「久々に“お祭り”をやってる感じがあるんです」とのこと。「フジテレビっぽい“ノリ”でやっちゃおうと成立した番組なので、ワクワクしながら準備を進めています」と、記念WEEKの盛り上げに火をつける番組にもなりそうだ。

  • (左から上下に)高島彩、中野美奈子、加藤綾子、椿原慶子アナ、河野景子、八木亜希子、木佐彩子、内田恭子、小島奈津子、西山喜久恵アナ (C)フジテレビ

●情野誠人
1983年生まれ、東京都出身、慶應義塾大学卒業後、06年にフジテレビジョン入社、以来編成部で、『サザエさん』『志村けんのバカ殿様』『おたすけJAPAN』などを担当。