マンションでも一戸建てでも、「家を買おうかな」と思ったときに気になるのが、「家の買い時」です。全国宅地建物取引業協会連合会が2018年に実施したアンケート調査によると、この家の買い時について、「わからない」と答える人が6割を超えるというデータもあるほど。

気になるけど、よくわからないのが「家の買い時」といえるでしょう。では、いったい「家の買い時」はいつなのか、探っていきましょう。

「家の買い時」を断言するのは信用ならない人!? そのワケは?

「今は買い時だね~」「ちょっと待ったほうがいいかな」などと話のネタになることもある「家の買い時」。

ただ、ひと口に家の買い時といっても、住宅市場の要素(新築・中古の流通する物件の数、金利、住宅価格、住宅ローンといった各種制度など)と、家を買う人の要素(年齢や収入、頭金の有無、資金援助、家族構成、ライフプラン)の掛け合わせによって決まるので、断言しにくいのが実情です。ゆえに、不動産会社、FP、不動産鑑定士など、「どこを重視するか」で見解が異なるということもよく起こります。

言い換えれば、「家は今が買いです」「マンション価格は必ず暴落します」などと、いくらでも言えるのです。いわゆる「理屈と膏薬はどこへでもつく」というものですね。1つのわかりやすい答えがあるというよりも、人の数だけ答えがあると思ったほうがいいでしょう。ですから、家を探しているときに、安易に「今が買い時です!」などという営業担当者の言葉を鵜呑みにするのはおすすめしません。

2019年は「決断しにくい状況」ではある

ただ、単純に現在の日本の住宅市況を分析するのであれば、新築マンションが買いにくい・決断しにくい状態であることは確かでしょう。理由はずばり、新築マンション価格の高止まりと中古マンション価格の上昇にあります。

主に家の買い手となる働き盛りの30~40世代の手取り収入は伸び悩んでいますが、新築マンション価格は高止まりが続いていて、東京23区の駅近物件などでは、サラリーマンの夫婦共働き世帯でもなかなか手が出にくい状況が続いています。

このマンション価格高騰の背景には、地価の高騰、原材料高や職人不足などがあります。いわば構造的なものですので、これが2020年の東京オリンピック以降、一気に解消できる問題ではありません。ですから、一部メディアで言われているような「マンション価格大暴落」は起きにくいと思われます。

一方で金利については、超低金利が続いていますが、若干上昇傾向にあり、2019年は金利上昇の年と予測する人もいます。2019年10月には、消費税率引き上げも予定されていて、その前には駆け込み需要が発生すると予想されます。

その後の駆け込み需要の反動を抑えるべく、政府は手厚い支援策を打ち出ていますが、それがどこまで奏功するのか誰にもわかりません(制度をフル活用すれば消費税率引き上げ後に購入したほうがおトクだと見込んでいますが、すべての人が当てはまるわけではないので)。

以上のように不確定要素が多く、「難しい」というのが「2019年の住宅市況」なのです。

東京オリンピック後まで待つ? そんなのアリ?

とはいえ、2020年以降まで「待つ」のが賢い選択なのかというと、断言できないのも事実です。「子どもの小学校入学前に」「第2子が大きくなって今の住まいでは限界」など、「今年中に買わないと!」という人もいることでしょう。

自分たちのライフステージによっては、「今、決断することがベスト」という人も少なくありません。そうした人が家を探していて「コレだ!」という物件がある場合は、素直に「買い時」ともいえるでしょう。

ただ、中長期的に日本の人口が減っていくのは間違いありませんし、新築マンションの供給数そのものが減っていくことも予想されています。つまり、時代の流れとともに自分たちの「買い時」を見極める必要があるのです。そのためには、周囲の声に影響されて慌てないこと、自分と家族でよく話し合うこと、時期や目的、優先順位を明確にするのが、遠ようで一番早道だと思います。

「サポートをお願いしやすい実家の近くの土地が売りに出た」
「とにかく駅近。再開発物件に絞って買う」
「保育園に入園が決まったからその近くで買う」
<b 決断の理由・タイミングは人それぞれ。「消費税率引き上げ前に!」「東京オリンピック後にマンション価格は暴落する」などには惑わされず、自分たちが一番大切にしたい「価値観」を軸に、家族でよく話し合って決断するとよいでしょう。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。