「映画」と「演劇」という異なる2つのエンターテインメントの融合を狙った東映の新企画「東映ムビ×ステ」の第1弾『GOZEN』がいよいよ動き始めた。まず2019年夏に映画『GOZEN -純恋の剣-』が公開され、続いて2019年秋に舞台『GOZEN -狂乱の剣-』が上演される。「映画」と「演劇」は別々の作品でありながら、ひとつの作品世界を作り上げており、物語が連動している。メディアの境界線を行き来する物語は、これまでにない新しい感覚を呼び覚ましてくれるに違いない。

  • 左から望月卓氏、塚田英明氏 撮影:宮川朋久

ここでは、東映プロデューサー塚田英明氏と望月卓氏にお集まりいただき、両氏がこれまで作ってきた数々の「特撮ヒーロー作品」の実績から、新企画『GOZEN』の成り立ち、およびキャスティング秘話、映画『純恋の剣』の見どころなど、興味深いお話の数々をうかがった。

塚田英明(つかだ・ひであき)。1971年生まれ。1994年に東映入社。1995年『名奉行遠山の金さん(第7シリーズ)』でプロデューサー補となり、2004年『特捜戦隊デカレンジャー』、2005年『魔法戦隊マジレンジャー』、2007年『獣拳戦隊ゲキレンジャー』ではチーフプロデューサーを務めた。近年は『科捜研の女』や3月25日(月)20時から放送予定の『大奥 最終章』(フジテレビ系)といったテレビ作品や、東映特撮ファンクラブオリジナル配信作品『シリーズ怪獣区ギャラス』などを手がける。東映テレビ企画制作部次長。

望月卓(もちづき・たく)。1986年生まれ。2009年に東映入社。2009年『仮面ライダーW』でプロデューサー補を務めた後、2011年『海賊戦隊ゴーカイジャー』、2012年『特命戦隊ゴーバスターズ』などに参加。2013年『仮面ライダー鎧武』でプロデューサーとなり、2014年『仮面ライダードライブ』2016年『動物戦隊ジュウオウジャー』などを経て、『宇宙戦隊キュウレンジャー』ではチーフプロデューサーとして作品作りの要を担った。

――まずは、塚田さんと望月さんの最初の出会いからお聞かせ願えますでしょうか。

塚田:望月は僕がプロデューサーをやっていた『仮面ライダーW』(2009年)の途中から入ってきたんだよね。

望月:そうです。第35、36話を作っているころにAP(アシスタント・プロデューサー)として加わらせていただきました。ケツァルコアトルス・ドーパントが出てくる回で、今でも細かな部分までよく覚えています。

塚田:檀臣幸さんが演じられた井坂深紅郎の最後が描かれる回でしたね。ちょうど『W』の物語の節目になるエピソードで、第2部・完、第3部スタート、というところでした。

――当時のお互いの印象はいかがでしたか?

塚田:印象ねえ……。人当たりのいい青年というか、うまく人付き合いが出来ている人だなと思いましたね。ただ、『W』をやっているときは作品を作ることに専念していたので、若い人材を育てようなんてことは考えていなかったんです(笑)。

望月:僕も『W』が初めてのテレビドラマ製作現場でしたから、体験することがすべて「そういうものなんだな」としか思いませんでした(笑)。比べるものがないから「ここは違うな」なんて感覚は持たなかったんです。教育係のようなことは、主に高橋一浩さん(『W』ではプロデューサーを担当)がやってくださっていましたね。

塚田:高橋も他部署から異動してきたのでプロデューサーとして就いたのは『W』が初めてなんですよ。僕はといえば、ガーッと「作品を作るぞ!」としか思っていなかったので、下の連中からは「キャスティングの仕方とか、プロデューサーの仕事を教えてもらってない!」と恨み節を言われている感じです(笑)。

望月:まあ、今の僕も後輩を手取り足取り教えているわけではないですから。彼らもまた「こういうものか」と思いながらやっていくものなのでしょうね。

塚田:『W』では、2話完結のエピソードを作る際にイメージイラストを描いて説明していたことがあったんです。今回はこういうキャラクターの配置ですとか、重要なキャラはこれとか、自分の趣味もあって、ホン打ち(脚本打ち合わせ)のときに出したりしていたんですけれど、そのときも望月は「プロデューサーはみんな絵を描いて打ち合わせをするのか」って驚いていたね。

望月:そうでしたね。自分は絵心がありませんから焦りました。

塚田:絵が描けなくとも、プロデューサーとしては何の問題もないですから(笑)。