西日本鉄道は12日、地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の試乗会を実施した。報道関係者らを乗せ、「地域を味わうランチの旅 -CHIKUGO LUNCH COURSE-」として天神大牟田線を走行した。

  • 地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の試乗会が行われた(写真:マイナビニュース)

    地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の試乗会が行われた(写真は3月11日撮影)

地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は3月23日から運行開始し、金曜日と土日祝日に西鉄福岡(天神)発大牟田行「地域を味わうランチの旅 -CHIKUGO LUNCH COURSE-」、大牟田発西鉄福岡(天神)行「地域を味わうディナーの旅 -CHIKUGO DINNER COURSE-」を運行。6月からはこれら2コースに加え、西鉄福岡(天神)発大宰府行「地域を味わうブランチの旅 -DAZAIFU BRUNCH SET-」も運行開始する予定となっている。

列車は既存の通勤用電車6050形を大規模改造した3両編成。1・3号車にそれぞれ22席、キッチン併設の2号車に8席、計52席を設ける。大型キッチンには電気窯が設置され、メインディッシュのピザをはじめ、沿線地域の新鮮な食材を用いたメニューを列車内で調理し、できたての温かく美味しい料理を提供。車内は大川家具や城島瓦、八女の竹細工など沿線地域の伝統工芸品を使用し、沿線の新たな魅力を感じられる空間を演出している。

  • 「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の車内。乗車後の席上にアミューズが用意されている

  • アミューズは「苺とトマトのタルティネ」と「ラディッシュバター」。ウェルカムドリンクは「あまおうプレミアムスパークリングワイン」と「季節のフルーツジュース」を用意

3月12日の試乗会では、運行開始後の「地域を味わうランチの旅 -CHIKUGO LUNCH COURSE-」とほぼ同一行程で天神大牟田線を走行。西鉄福岡(天神)駅の発車時刻は11時50分とされた。3番のりばに停車中の列車に乗車し、3号車(天神方先頭車)の指定された席に座ると、席上にアミューズの「苺とトマトのタルティネ」「ラディッシュバター」が用意され、ウェルカムドリンクとして「あまおうプレミアムスパークリングワイン」または「季節のフルーツジュース」が提供された。アミューズには福岡県産のあまおうとバター、北野町産のラディッシュが使用されているという。

西鉄福岡(天神)駅を発車し、福岡市街地から郊外の住宅街へと車窓風景が変化する中、車内では前菜の1品目となる野菜のプレート(人参のグリル、蒸しアスパラにセロリマヨネーズ、王リンギのバターソテー)を提供。大木町産のアスパラガスや王リンギ(雪嶺茸とエリンギを掛け合わせたキノコ)、みやま市産のセロリなどを使用し、これらの野菜類が苦手という人でもおいしく食べられるように調理されてあった。蒸しアスパラとセロリにかかるマヨネーズは、うきは市「ゆむたファーム」の卵を使用して作られている。

  • 車内ではソフトドリンクやアルコール類も注文できる。西鉄福岡(天神)駅を発車した後、前菜として野菜のプレート・肉のプレートを提供

前菜の2品目は肉のプレート。やわらかくジューシーな博多和牛のローストに柳川市産の刺身海苔がかけられ、意外な組み合わせだが磯の風味の効いた刺身海苔が牛肉とよく合う。なお、今回の試乗会では、前菜の2品とも1つのプレートで2名分が提供された。

列車は春日原駅で特急の通過待ちのため停車し、その後も西鉄二日市駅や筑紫駅などで停まりつつ、久留米方面へ向かう。筑紫駅の手前でJR筑豊本線(原田線)の築堤をくぐり、この前後から車窓の景色に田園地帯の緑と菜の花の黄色が目立つようになる。

ここでメインディッシュのピザが提供された。筑後産の小麦を使用した生地に、大木町産のアスパラガスと八女市産の筍(たけのこ)をのせたハーフ&ハーフのヘルシーな野菜のピザで、筍のほうは柚子や菜の花も使用しているとのこと。アスパラガスの緑は見た目にも鮮やかで、緑の広がる車窓風景とも相まって春の訪れを感じさせる。

  • メインディッシュのピザは2号車のキッチンに設置された電気窯で焼き上げる

  • 春の訪れを感じさせる車窓風景を見ながら食事を楽しむことができた

筑紫駅から先は通常の列車よりゆっくりとした速度で走行する区間もありつつ、宝満川に続いて筑後川を渡り、久留米市街地に入る。西鉄久留米駅の次の花畑駅では1番のりばに停車し、特急など数本の列車を先行させる。花畑駅を発車した後、JR久大本線・鹿児島本線の線路をまたぎ、天神大牟田線の高架よりさらに高い九州新幹線の高架をくぐったところで、車内ではハーブティとプティフルの提供が始まった。

ハーブティは八女市「中村園」オリジナルブレンドの「The Waterway」(煎茶+ペパーミント)、「The Adventure」(ほうじ茶+レモングラス)、「The Townscape」(和紅茶+カモミール)から選べる。プティフルはうきは市「cake.cafe.miel」オリジナルセレクトの焼き菓子を提供。マカロン3種(あまおう・レモン・八女市産の抹茶)とチョコレートのパウンドケーキ、うきは市産の和紅茶を用いたクッキーの計5種類の味を楽しめた。

  • 乗客向けに列車や沿線の情報などを紹介するノート。クルーの手作りだという

  • ハーブティは3種類ある中から「The Adventure」(ほうじ茶+レモングラス)を注文。プティフルは沿線地域の食材を使ったオリジナル焼き菓子を提供

「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」では運転士・車掌のトレインクルーに加え、キッチンクルーやメニューの提供などを行うサービスクルーも乗務しており、各クルーとも久留米絣をあしらい、みやま市「クロキビスポークルーム」が仕立てた専用の制服を着用している。食器類も地元業者や窯元などにより製作されたという。試乗会の途中、クルーが作成した「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」や沿線情報を紹介するノートが披露される場面も。最初のページに、「この列車に携れていることに乗務員一同 誇りと責任を感じています」との一文もあった。

大善寺駅を通過した後、三潴保育園付近で列車は徐行運転。園児たちが列車に向かって手を振り、車内の関係者らも手を振って園児たちを見送った。やがて縦横に水路が通る田園地帯の景色を眺められるようになり、西鉄柳川駅に到着。ランチの旅では降車のみ、ディナーの旅では乗車のみ取り扱う予定となっている。西鉄柳川駅までで車内サービスはひと段落となるが、ここから先も緑豊かな車窓風景が続き、西鉄中島駅付近で矢部川沿いの漁港の町ならではの景色も見られるなど、見所は多い。

  • 大善寺駅を通過した後、三潴保育園の園児たちが列車に手を振る様子を見られた。西鉄中島駅の通過後に矢部川を渡り、漁港の町ならではの車窓風景も眺められる

  • 「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」のクルーは専用の制服を着用

途中、江の浦駅で特急の通過待ちのため停車。西鉄銀水駅の前後でJR鹿児島本線の線路が近づき、天神大牟田線と並走しながら大牟田市街地に入る。14時14分、列車は終点の大牟田駅に到着した。5・6番ホームに入線し、降車時にはトレインクルー・サービスクルーが出入口付近に立ち、試乗会に参加した関係者らを見送った。列車はその後も、ディナーの旅が始まる17時台まで大牟田駅にいるとのことだった。

なお、今回の試乗会で提供された春メニューは3~5月の運行時に提供し、6月以降は使用する食材を一新した夏メニューを提供するとのこと。「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の料金には運賃とコースの食事代、サービス料金が含まれ、ランチの旅・ディナーの旅はともに8,000円(税抜)、6月から始まるブランチの旅は3,000円(税抜)とされている。

  • 「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の外観・車内(3月11・12日撮影)