人事管理系の業務には、知っておかなければならないビジネス用語がたくさんあります。今回はその中から「役職定年」について解説します。

  • 役職定年の意味を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    役職定年の意味を理解していますか?

大手の半数にある役職定年

役職定年とは「55歳前後になったら管理職から外れる」という制度です。主として大手企業に導入されています。役職定年後はマネージャー職を離れ、プレーヤーとして同じ部署あるいは別の部署に配属されたり、別会社に出向したり、あるいは再就職先をあっせんされたりします。

少し古いデータですが、厚労省による大手企業を対象にした『退職金、年金及び定年制事情調査(2009年)』を参考にすると、約半数の企業が役職定年制度を設けています。役職定年には必ずしも明確な規程があるわけではありません。慣行によって制度を運営している大手企業は1割を超えます。

役職定年制度の誕生背景

2013年に改正された「高年齢者雇用安定法」により、60歳の定年退職年齢が廃止され、従業員の雇用を65歳まで確保することが企業に求められています。その結果、「65歳定年制度」を多くの企業が導入するようになりました。

実は、このように定年の年齢が引き上げられるのは初めてのことではありません。高年齢者雇用安定法は1986年にも改正され、このときに60歳定年制度が生まれました。30年以上前の定年は55歳だったのです。

年功序列によって役職についている55歳の従業員を、さらに5年間雇用することは、人件費の面から見て企業にとって大きな負担となります。そこで「雇用は続けるが、年収は削る」ために役職定年の制度が生まれました。

組織全体から見れば、役職定年制度は有能な若手が昇進するチャンスを増やし、新陳代謝が生まれるメリットをもたらすかもしれません。しかし、これまで部長や課長として働いていた人物が、給与の低い現場仕事を覚え直すことはなかなか容易ではありません。

役職定年経験者の実態

明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団による「50代・60代の働き方に関する意識と実態(2018年)」によると、役職定年経験者の9割以上が年収減となっています。数百万円単位で年収が減ることもあり、役職定年経験者の約6割が「モチベーションの低下」を回答しています。

働く意欲が低いままの元管理職を、若手社員が目の当たりにすることは、組織全体のモチベーションにも悪影響をもたらすおそれがあります。企業では、役職定年前に「次のキャリア」を支援する動きも積極的になっているようです。

【例文】
「役職定年になる部長に飲み会を企画することになったけど、会の名前はどうしよう」
「役職定年になったらどれくらい給料が減るのか、知るのが怖い」