新宿駅から中央本線を走行し、富士急行線へ直通して河口湖駅へ向かう臨時列車として運転された快速「ホリデー快速富士山」。3月16日のダイヤ改正後、これに代わる列車として特急「富士回遊91・92号」が設定される。

  • 「ホリデー快速富士山」にも使用されるE257系500番台(写真:マイナビニュース)

    「ホリデー快速富士山」にも使用されるE257系500番台。3月16日のダイヤ改正後に運転される臨時列車の特急「富士回遊91・92号」もE257系(5両編成)で運転される

JR東日本が実施する今春のダイヤ改正で、中央本線(中央東線)で定期運転を行う特急列車はすべてE353系に統一され、これにともない一部の「あずさ」「かいじ」で運用されていたE257系が運行終了となる。あわせて富士五湖エリアの観光に便利な列車として、中央本線から富士急行線へ直通する特急「富士回遊」がデビューする。

■「ホリデー快速富士山1号」快速ホームから発車

今回はダイヤ改正にともない運行終了が見込まれる快速「ホリデー快速富士山」と、運行終了間近となったE257系の特急「かいじ」などに乗車し、新宿~河口湖間を往復した。

新宿駅に8時前に着くと、すでに「ホリデー快速富士山1号」のE257系500番台が入線していた。それも特急ホームの9・10番線ホームではなく、おもに中央線快速が使用する11番線ホームである。

普段の11番線ホームは中央線快速の交互発着で使用されるものの、休日なのでこのような運行形態は見られない。特急ホームが8時0分発の「スーパーあずさ5号」、8時2分発の「あずさ53号」で埋まっているため、「ホリデー快速富士山1号」はここで乗客を待っているのだろう。この列車に乗車し、指定された(はずの)座席に座る。発車時刻の8時14分になると、ドアが閉まる。

列車が発車し、東中野駅を過ぎたところで、ようやく様子がおかしいことに気づく。車内の表示が「2号車」となっているのだ。しかも「自由席」と表示されている。指定券の券面にある座席は4号車の14D席。なぜか2号車の14D席に座っていた。もちろん指定された席へと移ったのだが、それにしてもなぜ、こんなことが起こったのか……。

  • 「ホリデー快速富士山」のきっぷ

中央本線の特急列車は通常、新宿方先頭車が1号車(一部列車を除く)とされ、新宿寄りの号車が自由席となることが多い。

一方、「ホリデー快速富士山」に使用されるE257系500番台の場合、5両編成の5号車が新宿方先頭車となっている。つまり、号車番号が通常の中央本線特急列車と逆になっている。それゆえ勘違いしてしまったようだ。本来座っているべき席に座り、ようやく違和感のない状態となる。

三鷹駅付近では先行列車が多く走っている影響か、スピードが遅くなる。武蔵小金井駅あたりから速度を上げ、特急形電車としての本領を発揮する。

E257系500番台の車内を見ると、青を基調とした配色となっている。もともと房総方面の特急列車向けに導入された車両であり、その合間で「ホリデー快速富士山」の運用に就いていることはひと目でわかる。特急列車ではないということもあってか、ヘッドレストのカバーもない。

「ホリデー快速富士山1号」は特急列車の停まらない高尾駅にも停車し、いよいよ山岳区間へと入る。小仏トンネルを過ぎると相模湖駅に停車。ここで下車する人も多い。

車内を見て回ると、指定席にはベビーカーを持ち込んだ家族連れなどが多く、自由席もほぼ埋まっているという状態になっている。

■E257系500番台、富士急行線の山岳区間に挑む

大月駅には9時34分に到着。ホームに富士急行の乗務員が待っていた。大月駅でも下車する人がそれなりにいる。大月駅の標高は358m。ここまででも十分に上って来た印象だが、この列車がめざす終点、河口湖駅の標高は857mだ。

発車前に、富士急行の女性車掌が車内アナウンスを行い、英語のアナウンスも聞かれた。列車が発車すると、そろりそろりと中央本線から分かれ、富士急行線に入っていく。スピードは上がらない。曲線も多い。富士急行線は40パーミルの急勾配路線。カーブでなんとか緩和することで、その水準にまで抑えているという厳しい条件の路線である。最高速度は60km/hとされているものの、それだけのスピードが出せる区間も多くない。

田野倉駅では、かつて205系だった富士急行の車両6000系と行き違い。9時43分ころに山梨リニア実験線の真下を通過する。まっすぐな高架のリニア実験線と異なり、富士急行線は地上をくねくねとゆっくり進む。壬生(かせい)駅で富士急行8500系「富士山ビュー特急」、下吉田駅で富士急行1000系「富士登山電車」と行き違う。

10時17分、富士山駅に到着。もともとの駅名は富士吉田駅だったが、2011年に富士山駅に改称した駅だ。富士山駅の標高は809m。スイッチバックする駅でもあり、列車は10時21分ころ、進行方向を変えてこの駅を発車した。

  • 富士急行線の終着駅、河口湖駅

  • 河口湖駅前で保存されているモ1形

富士山駅から先は運転が軽快になる。富士急ハイランド駅に停車し、多くの乗客が下車した。河口湖駅到着前に車内アナウンスがあり、車内がにわかに活気づく。河口湖駅には10時26分到着。ホームや駅周辺は多くの訪日外国人観光客でごった返していた。