映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』の大ヒットを記念し、「平成仮面ライダー映画リバイバル上映イベント」として、2010年に公開された『劇場版 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』の応援上映と、『仮面ライダーW』のプロデューサー・塚田英明氏、脚本の三条陸氏、映画の監督を務めた坂本浩一監督を招いたトークイベントが行われた。

  • 左から塚田英明プロデューサー、坂本浩一監督、三条陸氏

1月18日~1月30日にわたり、『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』公式サイトで実施された「平成仮面ライダー映画・あの名作をもう一度!キャンペーン」にて、「みんなで応援したい平成仮面ライダー映画」No.1に『劇場版 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』が選ばれ、実施された今回のイベント。9年前の作品にもかかわらず、チケットは即完売する人気ぶりであったという。

『W』単独の映画である『劇場版 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』では、死から甦った者たちによる特殊部隊「NEVER」のリーダー・大道克己(演:松岡充)が次世代のメモリであるT2ガイアメモリとロストドライバーを使って「仮面ライダーエターナル」へと変身。最強の敵として、Wとアクセルを窮地に陥れた。

また劇中では、変身不能になった翔太郎がロストドライバーで全身真っ黒の「仮面ライダージョーカー」に変身するイレギュラー展開も、ファンの興奮を呼んだ。さらには、テレビ放送に先がけて後番組の『仮面ライダーオーズ/000』(2010年)より、仮面ライダーオーズ/火野映司(演:渡部秀)がいきなり登場し、「仮面ライダーは助け合いでしょ」と言いながらWに代わってルナ・ドーパントを粉砕するという、サプライズ演出も大いに話題を集めた。

まずは今回、作品が「みんなで応援したい平成仮面ライダー映画」No.1に選ばれたことについて、塚田氏は『仮面ライダーW』の重要人物である園咲琉兵衛(演:寺田農)と園咲冴子(演:生井亜美)の映画でのやりとりを取り上げ、「冴子が『仮面ライダーが街を救った』と言うのに対し、琉兵衛が『街に救われたな、仮面ライダー』というセリフが大好きなのですが、今回のNo.1という結果も、作品がNo.1を獲ったというより、応援してくれている皆さんに獲らせていただいたという感じ」と、その喜びを語った。

後方から客席の反応を見ていたという三条氏は、劇場での応援について「"ここだ"という場面で、"これだ"という声が上がって、すごくわかっていただけている」。さらに当時、「塚田さん、坂本監督から一つ一つのキャラクターに決めゼリフをもたせて、"ここぞ"というところや、意外なところで発する使いどころを入れてほしいというリクエストがあった」と明かし、応援上映で客席からその決めゼリフが飛び出していたことに、「あの時考えた甲斐があった」と目を細めていた。

同じく、客席から見ていた塚田プロデューサーは「スクリーンで見ることができるのがうれしくて、つい見入ってしまいました」と当時の思い出がよみがえった様子。「いろいろなことを考えながら見ていました。スタッフも若いなとか、この時は制作予算あったなとか(笑)」と語ると、三条氏も「分身こんなにいっぱい出せるんだ……とかね」(笑)と応じ、客席の笑いを誘っていた。

ここで、映画を手がけた坂本監督もトークに参加。テレビシリーズが最終回に向けて話が展開するタイミングの映画だっただけに、三条氏は映画の脚本もクライマックスまでの流れと関係性を意識していたという。塚田プロデューサーも、「シュラウドの正体を気にしました。ディレクターズカット版では最後に変なのがあるじゃないですか、監督」と水を向けると、「……ねえ」と監督と顔を見合わせた。「今見ると、やっぱり切って正解だったなと……」と語る塚田プロデューサーに、坂本監督が「とりあえず劇場版はね」と応じる、長年作品をともにしてきた二人ならではのやりとりにも、客席から笑いが起こっていた。

これが初めての「仮面ライダー」映画で、気合が入っていたという坂本監督は、「こういう仮面ライダーが見たい!」というものを三条氏にリクエストしたという。三条氏は、「塚田さんと坂本監督から大量の要望をいただきました。塚田さんがまずそういう方。それに坂本監督もバイクシーンなどやりたいことがたくさんあり、二人の要望を脚本に組み込むと、もう箱が埋まってしまっているという状況でした」と当時の苦労を語っていた。

アクションについて坂本監督は、「JAE(ジャパンアクションエンタープライズ)と、ワイヤーアクションを担当したチームとが初めてコラボした作品だった」と回顧。また、現在では超人気俳優となっている菅田将暉について、「菅田くんにとって初めての"泣き芝居"で、どういうふうに感情をもっていったらいいかわからない状態だったので、そうしたところでもコミュニケーションを取りながら撮影していた」と振り返った。

塚田プロデューサーも、「菅田くんは『W』でデビューしたばかりで、"今度の映画はフィリップメインでいきます"といった時も、当時ざわつきがありました。でも見事に大役を果たしてくれた」と、思い出を語った。

映画の最重要人物・大道克己を松岡充が演じたことについて質問が飛ぶと、塚田氏の招きで高橋一浩プロデューサーが登壇。劇中で仮面ライダーエターナルに変身する大道は、Vシネマ『仮面ライダーW_RETURNS』も制作されるなど、高い人気を獲得した。高橋プロデューサーは、松岡がボーカルを務めるロックバンド・SOPHIAの曲「街」が、風都で物語が繰り広げられる『仮面ライダーW』の世界観と合うのではないかということで提案したのだという。

高橋氏は熱い思いを手紙にしたため、出演を依頼しようとしたが、当時ライブ真っ最中であったこともあり、「松岡さんのマネージャーさんから、ライブ中に話をするとそのことで頭がいっぱいになってしまうので、ライブが終わるまで待ってくださいという話になった」と当時のやりとりを明かした。その後、塚田氏を加えた3人で会い、出演が決まっていったという。

大道のキャラクターについて三条氏は、「左翔太郎(演:桐山漣)たちは私立探偵で、これはプロとアマチュアのあいまいなところがあります。それに対する完璧なプロフェッショナルとして役を作っていきました」とコメント。さらに、「仮面ライダーエターナルのデザインは先にできていたんです。『仮面ライダーW』のライダーはそれぞれツノがアルファベットになっていて、仮面ライダーWが『W』、仮面ライダーアクセルは『A』、仮面ライダースカルはツノはありませんが顔に『S』、そして敵のライダーは『E』にしようという話がありました。『E』のメモリで変身するライダーで、しかも塚田さんから、『みんな"ル"で終わっているから、"ル"で終わる名前を考えてください』と言われて大変だった」と、エターナルのネーミングにまつわる苦労話も飛び出した。

また話題は、『仮面ライダーW』の正統続編として「週刊スピリッツ」(小学館)で連載中の『風都探偵』の話へ。そもそもは編集部から塚田氏へ提案があったのは、翔太郎が一人で戦っていた一年間を描く『仮面ライダージョーカー』であったという。しかし、三条氏は「『仮面ライダージョーカー』の時の翔太郎ってもうフィリップがいないので、悲しみをこらえながら戦っている。それを週刊連載で見たいのか。書く方もつらいし、読む方もつらいんじゃないか」と考え、「翔太郎とフィリップというコンビがみんな見たいのだから、その二人を漫画という媒体でももう一回見せたい」という思いに至ったという。映像化が難しい、大掛かりな漫画ならではの演出も取り入れられた『風都探偵』は、『W』ファンのみならず、従来の「スピリッツ」読者からも支持され、現在大ヒットとなっている。

最後に塚田プロデューサーは、「僕にとって『W』はずっとやっていたい作品。10年近くたってもこんなに愛していただいて、本当にうれしく思っています。これからも、何が起こるかわかりませんので、応援し続けてください」とコメント。それを受けた三条氏は「僕にとって『W』はいつまでもやっている作品」と、小説版などさまざまな形で愛され続けている『W』のイキの長いキャラクターたちに言及し、変わらぬ熱量で応援し続けてくれているファンへの感謝を述べた。

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』は現在大ヒット公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。