映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』(監督:山口恭平)の公開を記念し、歴代平成仮面ライダーシリーズをふりかえる企画の第13弾として、今回は『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)をとりあげる。本作は『仮面ライダージオウ』の常磐ソウゴと同じ"高校生"の主人公が仮面ライダーに変身し、ひとつの高校が物語の舞台となる「学園ドラマ」の要素が打ち出されているのが大きな特色となっている。ではここから、「異色」にして「直球」の熱きヒーロードラマを追求した『仮面ライダーフォーゼ』の作品世界をご紹介していこう。
『仮面ライダーフォーゼ』とは、2011(平成23)年9月4日から2012(平成24)年8月26日まで、テレビ朝日系で全48話を放送した連続テレビドラマである。本作は平成仮面ライダーシリーズの第13作であると共に、1971年4月より放送を開始した第1作『仮面ライダー』(主演:藤岡弘、)から40年という節目の年に作られたため「仮面ライダー生誕40周年記念作品」とも銘打たれている。
本作の大きな特徴は、物語の主な舞台がひとつの「学園」であることと、キャラクターのモチーフに「宇宙」が採り入れられていることである。ヒーローである仮面ライダーフォーゼは、宇宙服をイメージした「白いボディ」にロケットを思わせる「先端の尖った頭部」という、どこからどう見ても「宇宙」的なスタイルが強烈なインパクトを与えている。いわゆる「仮面ライダーらしさ」を感じさせる記号として「赤い複眼」と「2本のアンテナ」があしらわれているが、それ以外は従来の仮面ライダーと似た要素がまったく見当たらない、奇抜かつ斬新なヒーローデザインといえる。
生徒の個性を伸ばす校風の「天ノ川学園高校」2年B組に、風変わりな転校生がやってきた。その名は如月弦太朗(演:福士蒼汰)。リーゼントに短ラン、ボンタンというひと昔前の「ツッパリ」風な出で立ちの彼は「学校の全員とダチ(友だち)になる」と宣言するものの、周囲の反応は冷ややかなものであった。そんな中、学園内に暗躍するとささやかれていた怪物「ゾディアーツ」が姿を見せ、生徒たちを危険に陥れる。弦太朗は歌星賢吾(演:高橋龍輝)が持っていた「フォーゼドライバー」を装着し、学園の自由と平和を守るためにゾディアーツと戦うことを決意する……。
弦太朗が変身した姿である「仮面ライダーフォーゼ」は「街の危機を人知れず救う仮面のヒーロー=仮面ライダー」という"都市伝説"にならって、弦太朗が自ら名乗った名称である。第2話では、インターネット上に出回っている不鮮明な映像として、仮面ライダー1号や仮面ライダースーパー1、仮面ライダーBLACK RX、仮面ライダークウガ、仮面ライダーWの姿が確認できる。このあたりは、仮面ライダー40年の系譜を受け継ぐ「記念作品」としての側面が強くうかがえる部分だろう。
仮面ライダーフォーゼ(ベースステイツ)の戦闘スタイルは、今は亡き賢吾の父・歌星緑郎(演:風間トオル)が研究・開発していた「アストロスイッチ」が用いられている。アストロスイッチとは、宇宙にある未知のエネルギー「コズミックエナジー」の力を物質化するための小型アイテムで、賢吾が月面基地「ラビットハッチ」内の研究室で実験・調整を行うことで使用することができる。フォーゼドライバーに4つのスイッチをセットすることにより、フォーゼの右手、左手、右足、左足にそれぞれのスイッチに対応したモジュールを装着する。右腕に「ロケット(01)」、左足に「ドリル(03)」を装着し、ロケットの推進力とドリルの破壊力を組み合わせた「ライダーロケットドリルキック」はフォーゼの力強い必殺技となった。
アストロスイッチの総数はぜんぶで40個あり、これらが生み出すモジュールによってフォーゼの多彩な戦闘スタイルが作り上げられた。また、いわゆる「キリ番」である「エレキ(10)」や「ファイヤー(20)」、「マグネット(30・31)」を用いると、フォーゼの体全体がパワーアップする(エレキステイツ、ファイヤーステイツ、マグネットステイツ)。これら40個のアストロスイッチは、ボタン式、ダイヤル式、スライド式といったように幅広いバリエーションがあり、『仮面ライダーディケイド』(2009年)のライダーカード、『仮面ライダーW』(2009年)のガイアメモリ、『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010年)のオーメダルの系譜を受け継ぐ「コレクション(ミニ)アイテム」として、すべてが商品化され好評を博している。
学園の平和を乱すゾディアーツは、ゾディアーツスイッチを用いて人間(主に天ノ川学園高校の生徒)が変身した姿である。ゾディアーツスイッチを押した者はコズミックエナジーによって常人を超える能力を備えるが、人間の感情に悪影響を及ぼす危険なアイテムである。複数回変身を行うとスイッチから「ラストワン」の音声が発せられ、本体と分かれた「エネルギー体」となって暴れ出す。本体の人間を救い出すには、エネルギー体を倒してスイッチを破壊するしか方法がない。このように危険なゾディアーツスイッチだが、学園の内部で何者かが生徒を特定し、スイッチを密かに渡しているふしがある。いったい誰が、何の目的でそのようなことを行っているのか、そこが本作の物語の重要な「鍵」となっている。
仮面ライダーフォーゼに変身してゾディアーツと戦う弦太朗には、常に信頼できる仲間が存在する。最初は小学生時代の幼なじみ・城島ユウキ(演:清水富美加)だけが弦太朗の友だちで、他はみな非協力的だったのだが、学園の自由と正義を守る「仮面ライダー部」が立ち上がってからは、学園のクイーン・風城美羽(演:坂田梨香子)、学園のキングでアメフト部の部長・大文字隼(演:冨森ジャスティン)、オカルト好きのゴス少女・野座間友子(演:志保)、学園内外の情報に通じているチャラい遊び人・JK(ジェイク/演:土屋シオン)といった個性的な面々と弦太朗が1人ずつ「対立」と「和解」を経て強い友情を育むようになり、それぞれ仮面ライダー部の部員となっていった。
ちなみに、仮面ライダー部の部員たちのネーミングは、第1作『仮面ライダー』から第4作『仮面ライダーアマゾン』(1974年)までの「昭和仮面ライダー」に変身するキャラクターの名前の文字を入れ替えた「アナグラム」によって作り上げられている。歌星賢吾は「本郷猛(ほんごう・たけし/仮面ライダー1号)」、大文字隼は「一文字隼人(いちもんじ・はやと/仮面ライダー2号)」、風城美羽は「風見志郎(かざみ・しろう/仮面ライダーV3)」、城島ユウキは「結城丈二(ゆうき・じょうじ/ライダーマン)」、JK(ジェイク/本名:神宮海蔵)は「神敬介(じん・けいすけ/仮面ライダーX)」、野座間友子は「アマゾン(日本名:山本大介/仮面ライダーアマゾン)」といった具合である。
なかなか部の存在を認めようとしなかった賢吾だが、第11、12話で起きた重大事件を経て弦太朗や仲間たちとの「友情」の強さを改めて実感。7人の部員で仮面ライダー部が本格的に始動した。仮面ライダー部部長としてリーダーシップを執る美羽、サポートメカの「パワーダイザー」でフォーゼを支援する隼、豊富な人脈を使ってゾディアーツ情報を探るJK、鋭い直感力で物事の本質を見抜く友子、持ち前の明るさと元気さで場の空気を和ませるユウキと、仮面ライダー部の仲間たちはそれぞれの特性を十二分に活かし、弦太朗と賢吾の戦いを全力でサポートする。さながら宇宙飛行士が地球上にいるサポートスタッフに命を託しているのと同じく、フォーゼ/弦太朗はかけがえのない仲間との友情の力によってゾディアーツとの戦いを続けられるのである。
仮面ライダー部の部室・ラビットハッチが月面にある、というのも『フォーゼ』ならではの大胆な設定といえる。天ノ川学園高校の使っていないロッカーを秘密の出入り口にして、部員たちは地上と月面基地とを自在に行き来することができる。ユウキは実際に月面へ立てることに感動しながらも、将来は自分の力で地球を飛び立ち、宇宙へ進んでいくようになりたいと夢を語っている。