JR西日本は13日、おおさか東線の新線区間である新大阪~放出間の報道機関向け試乗会を実施。321系が新大阪駅まで往復した。

  • 321系

    JR西日本がおおさか東線の新線区間で試乗会を実施。321系が使用された

おおさか東線は大阪外環状鉄道とJR西日本により整備が進められ、2008年3月に南区間の放出~久宝寺間が開業。北区間の新大阪~放出間は2019年3月16日のダイヤ改正に合わせて開業し、新駅として南吹田駅・JR淡路駅・城北公園通駅・JR野江駅が設置される。大阪東部地域から新幹線の拠点駅である新大阪駅への利便性が飛躍的に高まるだけでなく、JR線・他社線に乗り継ぐことで大阪都心部への利便性向上も期待される。

全線開業後のおおさか東線では、7両編成の321系または207系による直通快速が新大阪~奈良間(おおさか東線・大和路線経由)で運転される予定。今回の試乗会も直通快速用の321系を使用して実施された。往路は放出駅を11時40分頃に発車し、新大阪駅まで約30分かけて、通常の営業運転よりゆっくりとした速度で走行した。

おおさか東線は大半の区間において既設の城東貨物線を活用しつつ、旅客線用に複線化された。放出駅から鴫野駅までは線路の増設工事などにより、学研都市線(片町線)とおおさか東線の列車が並走する区間となる。島式ホーム2面4線の放出駅を発車後、学研都市線木津方面の線路がおおさか東線の線路を乗り越す。鴫野駅のホームは3面4線となり、学研都市線木津方面からおおさか東線新大阪方面へ同一ホームで乗換え可能な構造となる。

  • 放出駅から鴫野駅までは学研都市線(片町線)とおおさか東線の線路が並ぶ

鴫野駅から先は、単線だった城東貨物線を盛土拡幅などで複線化した区間。途中のJR野江駅は京阪本線や地下鉄(Osaka Metro)谷町線と乗り換えられる。続く城北公園通駅を通過した後、列車は淀川橋りょうを渡る。この橋りょうはかつて「赤川鉄橋」と呼ばれ、鉄道線路(単線)と歩行者道路が一体となった全国的に珍しい橋だったが、おおさか東線として複線化されるにあたり、歩行者道路は役目を終えたという。

JR淡路駅は阪急京都本線・千里線との乗換駅。阪急電鉄の淡路駅は将来的に高架化される予定となっている。おおさか東線は東海道新幹線の高架線をくぐった後、神崎川の手前で城東貨物線と分かれ、新設の神崎川橋りょうを渡る。ここから梅田貨物線に合流するまでが新線建設区間となり、カーブを描いた高架線の途中に南吹田駅のホームがある。梅田貨物線と合流する部分は勾配となっている。

  • 城北公園通駅を通過後、淀川橋りょうを渡る。JR淡路駅を通過し、東海道新幹線の高架線をくぐった先で城東貨物線が分かれていく

  • 城東貨物線と分かれた直後に神崎川橋りょうを渡る

  • 南吹田駅で試運転を行う201系とすれ違う

  • 東淀川駅付近を通過。おおさか東線のホームは設置されない

その後は新大阪駅までJR京都線と並走するが、東淀川駅付近におおさか東線のホームは設置されていない。新大阪駅では1号ホーム(1・2番のりば)をおおさか東線の発着ホームとして使用予定。321系の試乗会列車は12時10分頃、新大阪駅1番のりばに到着し、15分以上停車した後、12時27分頃に新大阪駅を発車。放出方面へ折り返した。

おおさか東線では全線開業に向けた試運転が続いている。試乗会が行われている間、往路・復路ともに試運転を行う201系6両編成とすれ違った。

試乗会の後、取材に応じたJR西日本大阪支社の副支社長、宮本芳明氏は、おおさか東線の全線開業まで約1カ月となったことを受け、「多くの方々にご協力いただき、ようやくここまで来ました。残り1カ月、万全の準備を行い、安全運行に努めたい」とコメント。おおさか東線の全線開業による効果として、大阪東部地域を南北に結ぶ鉄道ネットワークの形成により、「たとえば東大阪市から北摂方面へ行く場合、鉄道だと大阪の都市部に一度入ることが多かったと思いますが、これをショートカットして行けるようになります。通学・通勤から旅行まで、便利に利用できるのではないかと思います」と説明した。

■おおさか東線の途中駅はすべて「大阪市内」の駅に

おおさか東線では全線開業後、新大阪~奈良間の直通快速を上下各4本設定。平日は朝に奈良発新大阪行4本、夕方以降に新大阪発奈良行4本、土休日は午前に奈良発新大阪行2本・新大阪発奈良行2本、午後に奈良発新大阪行2本・新大阪発奈良行2本を運転する。停車駅は新大阪駅・放出駅・高井田中央駅・JR河内永和駅・久宝寺駅と王寺~奈良間各駅。新大阪~奈良間の所要時間は52~60分とされている。

普通列車は201系6両編成を使用し、新大阪~久宝寺間の各駅に停車する。日中時間帯に1時間あたり上下各4本、おおむね15分間隔の運転を予定し、新大阪駅からの所要時間は放出駅まで16分、久宝寺駅まで34分となる。

おおさか東線では全線開業に合わせ、特定の都区市内を発着する場合の特例制度における「大阪市内」の適用エリアを拡大。吹田市に所在する南吹田駅なども含め、新大阪駅から新加美駅までの各駅が「大阪市内」の駅として扱われる。宮本氏によれば、久宝寺駅の1駅手前にある新加美駅が大阪市に所在することもあり、「お客様の利便性という面でも、特例制度を適用したほうがご利用いただけるだろうと思いました」とのこと。

一例として、東京~新大阪間で新幹線を利用する場合、乗車券には「(区)東京都区内 → (阪)大阪市内」と表示されている。特例制度の適用により、おおさか東線の途中駅も「大阪市内」となるため、新加美駅までの乗車なら乗越しなどによる運賃精算は不要だという。なお、おおさか東線の新線区間は大都市近郊区間(大阪近郊区間)にも追加される。

宮本氏との質疑応答では、おおさか東線の普通列車に使用される201系について、「新車に置き換える予定は?」との質問も。「現時点で具体的な計画はありませんが、古くなってきましたら、そのタイミングで更新をかけたいと考えています」と答えていた。

  • おおさか東線新線区間の車窓など

  • 試乗会に使用された321系の車内・外観。車体前面・側面に「直通快速」の種別表示も