JR九州は4日、創建当時の姿に復原される門司港駅の駅舎2階を一部公開し、3月10日のグランドオープンに合わせて営業開始する「みかど食堂 by NARISAWA」の試食会を実施した。グランドオープン当日のイベント等に関する記者会見も行われた。

  • 門司港駅の復原駅舎

    門司港駅の復原駅舎は昨年11月に先行開業。3月10日にグランドオープンを迎える

門司港駅の駅舎は1914(大正3)年に創建され、1988(昭和63)年に鉄道駅では初という国の重要文化財に指定された。2012(平成24)年9月から保存修理工事に着手し、約6年間の工事を経て「世界に一つだけの魅力的な駅」として蘇る。昨年11月に先行開業し、コンコースと券売機、「みどりの窓口」といった駅機能はすでに復原駅舎に切り替えられている。

今回公開された駅舎2階では、大正時代の開業当時から高級洋食店「みかど食堂」が営業し、駅ホーム側に貴賓室と次室も備えていたという。保存修理工事により、駅舎2階も建設当時の姿に。腰壁と天井にこげ茶色のワニス塗装が施され、壁は白い漆喰壁に。シャンデリアも復原される。

  • 復原駅舎2階の旧貴賓室と旧次室。門司港駅ホーム側にあり、窓からホームの列車を眺められる

「JRKYUSHU SWEET TRAIN『或る列車』」のスイーツコースを手がける「NARISAWA」オーナーシェフ、成澤由浩氏が監修するレストランもオープン予定。1981年に閉店した「みかど食堂」を「NARISAWA」とともに再興するとの思いを込め、名称を「みかど食堂 by NARISAWA」とした。九州の食材にこだわりつつ、ビーフカレーをはじめ伝統的な日本の洋食メニューを提供。旧貴賓室をレストランの一部として使用する予定もあるという。

「みかど食堂 by NARISAWA」の試食会では魚料理とビーフカレーが提供された。成澤シェフがメニューの説明を行い、ビーフカレーに鹿児島県産の牛肉や長崎県産の有機米を使用したこと、魚料理の名称は「門司港近海の鮮魚まるごと一匹ロースト、焦がしバターソース」で、今回は鯛・イトヨリ・カサゴを使用したことなどを紹介。門司港の近海は魚種が豊富とのことで、「地元の魚介類を気軽に楽しんでほしいとの思いでメニューを作っています。その日獲れた魚をシンプルに料理し、日替わりで魚料理を提供できたら」「鯛・イトヨリ・カサゴの他にも、スズキやアジなどバリエーション豊かに提供したい。季節によってメニューも変わってくると思います」と話す。

  • 「みかど食堂 by NARISAWA」の試食会では魚料理とビーフカレーを提供

試食会に続いて門司港駅グランドオープンに関する記者会見が行われ、JR九州代表取締役社長執行役員の青柳俊彦氏、北九州市長の北橋健治氏が出席。3月10日に門司港駅グランドオープン式典を開催し、大正生まれの蒸気機関車8620形の特別展示、811系のラッピング列車「わたせせいぞうラッピングトレイン」の出発式などを行うことが発表された。休日の日中時間帯を中心に、門司港駅へ臨時の普通列車が運転されるほか、博多駅から門司港駅まで乗換えなしの特急「きらめき」の臨時列車も設定される。

青柳社長はJR九州が発足した1987(昭和62)年当時の門司港駅を振り返り、「このスペースは開業当時の面影がほとんどない状態で、舞台が作られ、講堂のようになっていたと記憶しています。ここに昔あったレストランはどんなものだったか、自分なりに思いをはせていたのですが、今回の復原で当時の姿を取り戻し、聞いていた通りの立派な空間が出現しました」と語った。

北橋市長も、門司港レトロ地区の玄関口となる門司港駅のグランドオープンに期待している様子。「門司港レトロは年間220万人以上が訪れる、本市を代表する観光地。今回の開業でさらなる集客の効果が期待されています。平成31年3月を『門司港駅グランドオープニングマンス』と位置づけ、プロジェクションマッピングなどさまざまなイベントを開催します。開業を祝うとともに地域の活性化につなげていきたい」と述べた。

  • JR九州の青柳社長と北九州市の北橋市長が握手

  • 記者会見後、青柳社長は成澤シェフとも握手した

  • 「みかど食堂 by NARISAWA」のスタッフと撮影も

青柳社長は会見の中で「みかど食堂 by NARISAWA」についても触れ、「成澤シェフの下で修業したスタッフが腕によりをかけ、レストランの雰囲気に合った素晴らしい食事を提供できると思います。門司港レトロ地区にもうひとつの楽しみを追加できれば」とコメント。記者会見の終了後、青柳社長と成澤シェフが握手し、「みかど食堂 by NARISAWA」のスタッフとともに写真撮影を行う場面もあった。

今回、試食会と記者会見が行われた「みかど食堂 by NARISAWA」は3月10日のグランドオープンまでに内装を仕上げるという。旧次室は展示スペースとして使用されるほか、旧貴賓室との間に設けられたトイレ・洗面所への動線としても活用される。門司港駅の復原駅舎ではその他、1階の旧三等待合室に新店舗「スターバックス コーヒー 門司港駅店」がオープン。隣接して待合室と展示スペースが設置され、イベントスペースとしても使用される。駅舎1・2階を移動するためのエレベーターも設置される。

  • 復原駅舎の階段・通路と旧貴賓室・旧次室の内部