主要20作がそろった2019年の冬ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、全作品の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視!」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(2019年冬ドラマの傾向分析! 真木よう子ら超個性派ヒロイン、攻めのNHK)において、2019年冬ドラマの主な傾向を「【1】超個性派ヒロインが百花繚乱」「【2】シリアス一辺倒を避けるポップな演出」の2つと分析。

おすすめドラマとして、『トクサツガガガ』(NHK 金曜22時)、『みかづき』(NHK 土曜21時)、『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK 土曜23時30分)、『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』(テレビ東京系 月曜22時)、『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系 日曜22時30分)の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。

『トレース~科捜研の男~』 月曜21時~ フジテレビ系

新木優子

新木優子

出演者:錦戸亮、新木優子、船越英一郎ほか
寸評:確信犯とも言えるサブタイトルに「絶対に失敗できない」という思いがにじむ。バラバラ殺人を筆頭に陰惨な事件を扱い、船越の演技を過剰にさせたのは差別化への意志表示か。映像の質が高く技を凝らしているだけに、テーマもキャスティングも無難にまとめたところが残念。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆☆】

『よつば銀行 原島浩美がモノ申す! ~この女に賭けろ~』 月曜22時~ テレ東系

真木よう子

真木よう子

出演者:真木よう子、丸山隆平、柳葉敏郎ほか
寸評:銀行が舞台で決めゼリフがあるところは『半沢直樹』を思わせるが、原作漫画は90年代とこちらが先。リアリティと時代のズレは感じるものの、爽快なビジネス作としてのパッケージは上々。『ドラマBiz』初の女性主人公に起用された真木のセリフ回しが気になる人は辛い。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『後妻業』 火曜21時~ フジ系

木村佳乃

木村佳乃

出演者:木村佳乃、高橋克典、木村多江ほか
寸評:『サイレーン』『僕のヤバイ妻』のカンテレらしい悪女モノだが、共テレのベテランチームが絡んだからか、当作は一周回ってポップな仕上がりに。佳乃は映画版の大竹しのぶと比べられると胡散臭さの点でつらいところか。資産家の老人たちの演技は何気に見応えアリ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『初めて恋をした日に読む話』 火曜22時~ TBS系

深田恭子

深田恭子

出演者:深田恭子、永山絢斗、中村倫也ほか
寸評:3年前の『ダメ恋』を踏襲する座組とコンセプト。タイプの異なるイケメン3人との恋、受験失敗と毒母によるトラウマ、塾生徒の東大受験と、テーマが混在して散漫な印象に。恋が動かない序盤をどう乗り切るか。バックハグなどのベタなシーンに頼ると苦戦しそう。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『家売るオンナの逆襲』 水曜22時~ 日テレ系

北川景子

北川景子

出演者:北川景子、松田翔太、仲村トオルほか
寸評:昨年1桁視聴率に沈んだ『水曜ドラマ』が手堅くシリーズ作で勝負。ライバルの登場や夫婦エピソードなどの新要素もあるが、大枠は変わっていない。孤独死、LGBT、働き方改革など各話のテーマはステレオタイプで、変人キャラを利用した現代人へのお説教にも見える。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『刑事ゼロ』 木曜20時~ テレ朝系

沢村一樹

沢村一樹

出演者:沢村一樹、瀧本美織、武田鉄矢ほか
寸評:「刑事になってからの記憶をすべて失ってしまう」という極端な設定だが、沢村のパーソナリティーで違和感はゼロ。序盤はバディの瀧本が魅力に欠けるキャラだけに、早々の改善が求められる。記憶を失った理由にどう必然性を持たせるか。脚本家の腕が試される作品だ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『ハケン占い師アタル』 木曜21時~ テレ朝系

杉咲花

杉咲花

出演者:杉咲花、小澤征悦、及川光博ほか
寸評:遊川和彦が脚本だけでなく演出も手掛けることから、クセの強さは折り紙付き。「個性的なヒロインが弱さや悩みを抱える人々を変えていく」というプロットは、過去作を踏襲している。同枠にしては冒険的な企画だが、「これを伝えたい」というメインテーマが見えない。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』 木曜22時~ フジ系

竹内結子

竹内結子

出演者:竹内結子、水川あさみ、斉藤由貴ほか
寸評:関和亮をチーフ監督に迎えただけあって映像はスタイリッシュ。竹内と水川の会話もおしゃれで、PVのような仕上がりに。ただ、各話のエピソードが小さく、スキャンダルで追い込まれるというムードも薄いのが気がかり。弁護士ならではの知識と技術をどこまで盛り込めるか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『人生が楽しくなる幸せの法則』 木曜23時59分~ 日テレ系

夏菜

夏菜

出演者:夏菜、高橋メアリージュン、小林きな子ほか
寸評:「神様」による人生指南というファンタジー設定は、いかにも深夜ドラマで発展性は望めず、教訓から逆算して作られた物語も自然さに欠ける。放送前の「ちょうどいいブス」バッシングの影響をモロに受けてコメディとして笑いづらいのが痛い。夏菜はまたも不運だった。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』 金曜20時~ テレ東系

北大路欣也

北大路欣也

出演者:北大路欣也、風間俊介、上白石萌音ほか
寸評:記憶力を生かした知的な推理と、過剰な演出に頼らない落ち着きは、刑事ドラマの良心。北大路に加えて勝野洋、宅麻伸、石黒賢、余貴美子ら同枠のファンにはうれしい顔ぶれが頼もしい。各話の事件に特筆すべき点はないが、テレ東と北大路の円満な関係を感じさせる。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『トクサツガガガ』 金曜22時~ NHK

小芝風花

小芝風花

出演者:小芝風花、倉科カナ、木南晴夏ほか
寸評:『透明なゆりかご』『昭和元禄落語心中』から当作へ。特撮というモチーフも、小芝の主演起用も、「全力で攻めるぞ」という『ドラマ10』の気概を感じる。ヒーローのディテールやオタク隠しのコメディなど、映像化困難な要素もきっちり。時間、人、お金が贅沢に使われている。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『メゾン・ド・ポリス』 金曜22時~ TBS系

高畑充希

高畑充希

出演者:高畑充希、西島秀俊、小日向文世ほか
寸評:元警察官のおじさんと新人女性刑事のコントラストは明快で破綻はないが、「テレ朝かテレ東の刑事ドラマ」の感が強い。『金曜ドラマ』での放送は、名門枠だった月曜20時の刑事ドラマ枠が消滅したことの影響か。各話の事件と謎解きは、まだ既存ドラマの枠を出ていない。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『私のおじさん~WATAOJI~』 金曜23時15分~ テレ朝系

岡田結実

岡田結実

出演者:岡田結実、遠藤憲一、城田優ほか
寸評:「妖精のおじさん」がすべての作品だが、序盤はビジュアル優先で、ヒロインの隣で“効いている”という印象は薄い。ただ、番組制作現場のシニカルな物語は密かに過激で楽しめる。岡田は若手らしくパンスト相撲などに体当たりで挑んでいるが、主演は明らかに早すぎた。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

『フルーツ宅配便』 金曜24時12分~ テレ東系

濱田岳

濱田岳

出演者:濱田岳、仲里依紗、徳永えりほか
寸評:ディープな題材は「さすが『ドラマ24』」と納得。濱田や仲らキャストと、白石和彌・沖田修一監督らスタッフの地力で、怖さをベースにしたヒューマン作に仕上がっている。しかし、「お金に困った女性が風俗へ」という貧困目線は、いかにも男性目線で古さを感じてしまう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『イノセンス 冤罪弁護士』 土曜22時~ 日テレ系

坂口健太郎

坂口健太郎

出演者:坂口健太郎、川口春奈、藤木直人ほか
寸評:「冤罪弁護より科学検証」という印象は、他の弁護士ドラマとの差別化か。作品全体から重さが感じられないのは、刑事の杜撰さをベースにした物語だからだろう。坂口と川口の若手バディは、序盤のかけ合いに不安アリ。若年層と中高年層の両方を狙って空振りのパターン。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

『僕の初恋をキミに捧ぐ』 土曜23時15分~ テレ朝系

野村周平

野村周平

出演者:野村周平、桜井日奈子、生瀬勝久ほか
寸評:映画では多いが連ドラではひさびさのスクール純愛モノ。野村は『結婚相手は抽選で』に続いてイメージとは真逆の役に挑み、座長として若手をけん引している。感動を誘う難病モノだが、この枠はハジけたシーンを見せたいところ。原作漫画からの思い切った脚色がほしい。
【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

『みかづき』 土曜21時~ NHK

永作博美

永作博美

出演者:高橋一生、永作博美、風吹ジュンほか
寸評:一見地味だが、実は情熱的で突き抜けたサクセスストーリーは朝ドラを思わせ、いかにもNHKのドラマ。高橋と永作のやり取りは二人舞台のようで、1時間すべてでも見ていられる。ほどよくコミカルで、ほどよく破廉恥。わずか5話で終了させてしまうのが惜しい作品。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』 土曜23時30分~ NHK

石橋菜津美

石橋菜津美

出演者:石橋菜津美、土村芳、瀧内公美ほか
寸評:『カメラを止めるな!』の余韻も冷めやらぬ中、ゾンビを選んだのはNHK。ただ、ゾンビはモチーフに過ぎず、本題は欲望や闇と向き合うことになる人間の姿か。石橋のヒロイン抜てき、劇作家・櫻井智也の起用、ユーチューバーの尾崎乏しいなど、攻めの姿勢しか感じない。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『グッドワイフ』 日曜21時~ TBS系

常盤貴子

常盤貴子

出演者:常盤貴子、小泉孝太郎、唐沢寿明ほか
寸評:海外ドラマの名作リメイクだけあって、堂々たる安定感。常盤の魅力も全面に出て、大人が楽しめるリーガルドラマとなっている。反面、意外性はなく、刑事モノと同じように定刻で予定通りに収まっていく物足りなさも。毎クール活躍の塚原あゆ子監督が今期もいい仕事。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『3年A組―今から皆さんは、人質です―』 日曜22時30分~ 日テレ系

菅田将暉

菅田将暉

出演者:菅田将暉、永野芽郁、椎名桔平ほか
寸評:出落ち感の強いコンセプトだが、次々にネタバレさせるハイテンポな展開と、サスペンスからハートフルにガラッと変わりそうな脚本は意欲的。最後まで飽きさせずにどう見せるのか要注目だ。生徒役の若手は発展途上であり、菅田と対峙したときのギャップに難しさが。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

■著者プロフィール
木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。