夫婦ともにフルタイム・高収入という「パワーカップル」が注目を集めています。「パワーカップル」という言葉は住宅・不動産をはじめとした高額消費市場で使われることが多いようですが、購買力がある共働き夫婦という意味で用いられています。フルタイムの共働き家庭では、ある程度の家計のゆとりが生まれるのが通常ですが、ただ共働きをしている夫婦と、パワーカップルでは何がどのように違うのでしょうか。

  • 「パワーカップル」はどこが特別?

    「パワーカップル」はどこが特別?

「パワーカップル」とはどんな世帯?

共働き夫婦が珍しくなくなったとはいえ、一般的には夫婦間の年収格差がある場合がほとんどです。共働きといってもパートや時短勤務で働いている人も多いですから、収入に差があるのは簡単に想像できるでしょう。総務省の「労働力調査(2017年)」をみても、配偶者のある働く女性のうち62%が非正規社員と、正社員よりも圧倒的に多い状況です。

では正社員同士なら年収の男女差はないのでしょうか。厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査(2017年)」によると、正社員男性の平均月額賃金は34.84万円、対して正社員女性は26.36万円となっています。たとえば35~39歳に年齢階層を絞ってみても、男性33.12万円、女性26.94万円と6万円強の差。ボーナスを考慮しなくても年間74万円程度の差があります。

そんななか、夫婦ともに高収入とされるパワーカップルとはどんな世帯なのでしょうか。パワーカップルについてはさまざまな機関が研究しており、実は決まった定義はありません。そのうち、ニッセイ基礎研究所のレポートに注目してみると、「夫婦ともに年収700万円超の世帯」がパワーカップルとされています。これは、夫も妻も同様に高い購買力を持つことや所得税の税率区分が20%から23%へ上がる「695万円」という金額を考慮したものであるようです。

パワーカップルの家計状況は?

高い購買力を持ち、消費市場を牽引しているとも言われてるパワーカップル。総務省の「家計調査(2017年)」からパワーカップルの家計の様子を覗き見してみましょう。

世帯の消費支出のうち、食費の占める割合を示すエンゲル係数をみてみると、年間収入1,250万~1,500万円では20.5%、1,500万円超の世帯では19.1%と2割を切る状態。食べることは生命を維持するのに必要不可欠なことで、所得水準が低くても一定以上の食費は必要となるため、所得水準が低いほどエンゲル係数は高くなる傾向にあります。550万~600万円世帯では25.3%、400万~450万円世帯では26.8%となっていることをみると頷けます。

では、パワーカップルは残りの8割強をどんなことに使っているのでしょうか。1,500万円超世帯と550万~600万円の世帯と比べてみました。

550万~600万円世帯 1,500万円超世帯
1カ月あたりの消費支出額 27万2,149円 59万5,095円
うち基礎的支出(総支出に対する割合) 14万9,694円(55%) 23万9,074円(40%)
うち選択的支出(総支出に対する割合) 12万2,455円(45%) 35万6,020円(60%)

※注: 総務省「家計調査(2017年)」より筆者作成

収入額が異なれば支出額にも差が出るもの。まずは金額は考慮せず、割合に注目してみましょう。支出の内訳をみると、食料,家賃,光熱費,保健医療サービスなどの必需品的支出である「基礎的支出」と、それ以外の贅沢品的支出といわれる「選択的支出」にかける割合が逆転しているのがわかります。さらには、550万~600万円世帯では両者の差は10%。1,500万円超世帯では20%も選択的支出が多い状況です。

実は支出の詳細をみると品目内容はほとんど同じ。しかしながら、パワーカップル世帯では品目ごとにかける価格が高いことがわかります。たとえば、自動車購入にかける平均価格は550万~600万円世帯が約134万円なのに対し、1,500万円超世帯では223万円と100万円近く上回ります。身近な品目では、たとえば婦人服一着にかける平均価格が前者は6,370円程度ですが、後者は2万2,130円と約3.5倍です。

パワーカップルになるにはどうすればいい?

数カ月後には消費税が上がり、家計へのゆとりが狭まっていくことが予想される現在、パワーカップルに憧れる人は多いでしょう。

厚生労働省が発表している「国民生活基礎調査(2017年)」によると、総世帯5,043万世帯の年間平均所得は560.2万円。年間所得が1,400万を超えている世帯は全世帯の4.4%にすぎません。

確かに、家庭と子育てを担いながらフルタイムで働くのは決して容易いことではありません。一旦職場を離れると、職場復帰するとはいえ高収入を得るのも難しいものです。預け先問題の解消、配偶者の理解や協力など、まだまだ解決すべき問題は多いですが、「女性の活躍促進」などで女性も働きやすい職場環境が整えられつつある昨今、職場を離れずフルタイムで働き続けることが大切なのかもしれません。

それでも冒頭に男女間の賃金差を示したように、700万円超の高い年収を得られる女性はまだ少数派。「フルタイム、年収700万円以上」が定義だとすれば、そこから外れてしまいますが、少なくとも若いうちから投資などに取り組み、労働収入以外で収入実績を上げることができれば、「高収入」という定義はクリアできるかもしれません。

労働収入、運用収入のいずれの場合もモチベーションとスキルがあることが第一条件です。夫婦ともに自分自身の経済的自立を目指し、スキルアップを図ることがパワーカップルへの近道だといえるでしょう。

※画像と本文は関係ありません

著者プロフィール: 續 恵美子

女性ファイナンシャルプランナーによるお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。