平成仮面ライダーシリーズの20作目を記念し、現在テレビ朝日系で放送されている『仮面ライダージオウ』(2018年)では、平成仮面ライダーそれぞれの"歴史"をめぐる「時の王」こと仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ(演:奥野壮)の物語が描かれている。

12月2日に放送された第13話「ゴーストハンター2018」では、『仮面ライダーゴースト』(2015年)の仮面ライダーゴースト/天空寺タケル(演:西銘駿)が登場する「ゴースト編」でありながら、もうひとり、いくつもの時空を超える"世界の破壊者"と異名を取る仮面ライダーが意外なポジションで姿を現した。それが『仮面ライダーディケイド』(2009年)の仮面ライダーディケイド/門矢士(かどや・つかさ/演:井上正大)である。かつて、歴代の平成仮面ライダーの姿に変身(カメンライド)して戦ってきたディケイドだが、今回はどういうわけかジオウの行く手をはばむ脅威として登場した。果たして、ディケイドはジオウの敵なのか、味方なのか……?

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』の公開(12月22日)を記念し、平成仮面ライダーシリーズをふりかえる企画の第10回は『仮面ライダーディケイド』を取り上げる。平成仮面ライダーの歴史において、まさにひとつの転換期を迎えた作品として名高い本作について、いくつかの解説を試みたい。

『仮面ライダーディケイド』は、2009(平成21)年1月25日から2009(平成21)年8月30日まで、テレビ朝日系で全31話を放送した連続テレビドラマである。『仮面ライダークウガ』(2000年)から始まった「平成仮面ライダーシリーズ」の10作目・10年目を記念し、「平成仮面ライダー10周年プロジェクト」の一つとして企画された作品となった。

本作がそれまでの「平成仮面ライダー」と大きく異なる点は、「世界観」の捉え方にある。1作目『仮面ライダークウガ』から9作目『仮面ライダーキバ』(2008年)までの歴代平成仮面ライダーシリーズでは、1作ごとに世界観が刷新されており、たとえば『仮面ライダー龍騎』(2002年)の世界に『仮面ライダーアギト』(2001年)が干渉することは絶対にありえない。もしあったとしても、雑誌『てれびくん』(小学館)特製オリジナルビデオのように、世界観をあえて無視した"夢オチ"的な共闘くらいしか実現しなかった。昭和の仮面ライダーシリーズのような「作品世界をまたいで複数のヒーローが存在する」設定をあえて廃し、1作ごとに創意工夫に満ちた世界観、設定を生み出してバラエティ豊かな作品を作り続けてきたのが、「平成仮面ライダー」が9作もの長きに渡って続いてきた要因だったと言いかえることができるだろう。

しかし、このように1作1作が強烈な個性、独自性を打ち出してきた「平成仮面ライダー」もついに10作目・10年目を迎えることになり、『ディケイド』では「平成仮面ライダー」を"総括"する意味で、『クウガ』から『キバ』まですべての作品を今一度見つめ直し、それぞれの作品、それぞれの仮面ライダーの魅力を現在の子どもたちに感じてもらうための"掘り起こし"作業が使命とされた。もともとつながりのない、バラバラな9作品をどのようにつなげていくのか、という問題については、ディケイドの「時空を自在に超える能力」が大きな意味を成してくる。

第1話で士は、謎の青年・紅渡(演:瀬戸康史)と遭遇し、彼から「いま世界が崩壊の危機を迎えている」と告げられる。世界の崩壊を止めるためには、士が「クウガの世界」から「キバの世界」までの、9つの世界を旅するしか方法がないという。ディケイドライバーとライダーカードを手にした士は、居候先である光写真館の光栄次郎(演:石橋蓮司)、そして孫娘の光夏海(演:森矢カンナ/当時:森カンナ)と共に時空を飛び越え、それぞれの「仮面ライダーの世界」を旅することになった。

しかし士が変身したディケイドは、行く先々の世界で出会った仮面ライダーたちから「悪魔」と呼ばれ、世界を滅ぼす破壊者だとして攻撃を受ける……。最初に士が「クウガの世界」を訪れたとき、彼は警察官の姿をしていた。本来の世界の住人でない士は、それぞれの世界で適当な役割を与えられ、それに応じたコスチュームを身に着けて現れるようだ。このように、すべての「世界」から一歩"退いた"状態で物事を見つめる士の立ち位置は、作品内のキャラクターでありながらもテレビを観ている私たちに近い、一種の「メタフィクション」的な存在だといえる。

また第1話冒頭では、世界の破壊者であるディケイドを倒すべく、『クウガ』から『キバ』までの9作品に登場した、ありとあらゆる仮面ライダー(ライオトルーパー軍団までも!)がマシンを駆って登場し、凄絶なる戦いを繰り広げた「ライダー大戦」が映像化され、その圧倒的な迫力が視聴者の度肝を抜いた。最初の時点ではディケイドが何者なのか、まったく観る者にはわからない状態でありながら、あれだけの数の仮面ライダーを相手にして真っ向から立ち向かっていくという、不気味なまでの強さと風格を印象付けることになった。