――その"ほかのノウハウ"や、内向き傾向に対するものとして、白倉さんご自身が今外部のもので興味を持たれているものはありますか。

インド映画です、インド映画。インド映画しか(笑)。ここ数年、本当は90年代後半くらいからなんでしょうけれど、インド映画っていま大変なことになっていますよね。すごい勢いだなと思います。アメコミ・ヒーローものもそうなんですけれど、感心するのは、ものすごく熱心だということ。すごく考えている。

マーベル作品なんて、月イチで公開されているんじゃないかというくらい恐ろしい本数じゃないですか。だけど一本一本が、出来不出来はあるんでしょうけれど、すごく練り込まれている。これだけ本数があれば、「こうしておけばいいんでしょ」とマンネリ化しそうなものなんだけれど、細かいところまで妥協なしに考えている。少しでも新しいものを取り入れようと工夫しているんですよね。

インド映画も、どうせ歌って踊っているんでしょ、みたいな『ムトゥ踊るマハラジャ』(1998年)以来の誤解があるけれど、その"歌って踊る"要素も、「歌って踊れば観客なんか黙るんだろう、どうせ映画を観に来てるんじゃなくて涼みにきてるんだろう」と馬鹿にしないで、どうせだったら少しでも楽しませようと工夫している。編集とか演出の創意工夫がすごく積み重ねられています。そんな切磋琢磨の中で、ミュージカルシーンだけじゃなくても演出という面において、下手するとほかの世界の追随を許さないんじゃないかという域に到達しているんですよね。

同じことをやっているということ自体から新しいものが生まれてくることもある。でもそれは、マンネリだとかワンパターンだとかというものを馬鹿にしないで、こうしておけばいいんでしょと投げ出さないで、そこにあぐらをかくんじゃなくて、最後の最後まできちんと真剣に取り組んで工夫し続ける、考え続ける。そういうことをやった人間だけが、その次のステージに行けるんだということをあらためて突きつけられた気がします。

――最後に。さまざまな視聴環境ができたことで、最近ではテレビシリーズをやりながら、配信ではAmazonプライム・ビデオで『仮面ライダーアマゾンズ』をやるという、「仮面ライダー」シリーズの多方面展開が行われました。今後もこうした展開は狙っておられますか?

考えたいですよ。考えたいんですけれど、個人的にうっかり『仮面ライダージオウ』というテレビシリーズを担ってしまったのでまったくその余裕がない。

我々は「スーパー戦隊」シリーズというものを、未就学児童に向けて"生まれて初めて見るライブアクション"と位置づけていて、「仮面ライダー」に関しては、現行のものはどうしても「スーパー戦隊」シリーズよりも後からなので、「スーパー戦隊」と食い合わない形に、パイを食わず、その上というくらいに本当は位置づけたいんですよ。

「スーパー戦隊」を卒業したら「仮面ライダー」がお待ちしておりますと。そして「仮面ライダー」に一回入ったら、もう卒業しなくてけっこうですと(笑)。東映の都合としていいますと、こうした位置においておきたいんですよね。ですがなかなかそうもいかず、『電王』あたりが悪いのかな、「仮面ライダー」がターゲット年齢的に「スーパー戦隊」のパイを食い始め、いつのまにかベルトも楽しいベルトになってしまい……。そうかといって、「スーパー戦隊」シリーズが日本においてハイターゲット化することはないので、どうにかしてシェアの食い合いだけは避けたいところです。

「仮面ライダー」という名前を冠さずに、これまでとは違ったものが我々の手で作れて、それがむしろ「仮面ライダー」を脅かす、というふうになってくれるといいんですよね。なんか黒船がきても、「仮面ライダー」業界の方たちって屁とも思ってないんですよ。すっかり天下取ったような気になって天狗になっているから。

――そこで白倉さんが率先して敵にまわると怖いですね……。

そうですね。打倒ライダー(笑)。

東映による特撮プロデューサー応募は、東映の採用情報ページで受け付けており、エントリーは12月17日締め切りで、書類送付は12月19日必着。

プロフィール
白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう)
1965年、東京都出身。東映株式会社取締役テレビ第二営業部長兼ハイテク大使館担当。1990年に東映入社後、『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)よりプロデューサー補として作品制作に携わる。以後、『五星戦隊ダイレンジャー』(1993年)や『超光戦士シャンゼリオン』(1996年)、『仮面ライダーアギト』(2001年)『美少女戦士セーラームーン』(2003年)など、主に特撮ヒーロー作品のプロデューサーを務めて多くの作品をヒットに導いた。著書に『ヒーローと正義』(寺子屋新書/2004年)『小説 仮面ライダー電王 東京ワールドタワーの魔犬』(講談社キャラクター文庫/2013年)がある。