『東海テレビドキュメンタリー劇場』が第66回菊池寛賞を受賞し、7日、都内のホテルで行われた贈呈式で、同局の内田優社長が喜びを語った。

  • 東海テレビの阿武野勝彦報道局専門局長(左)と内田優社長

今回は「『ヤクザと憲法』『人生フルーツ』など、独自の視点から地方発のドキュメンタリー作品を制作。作品は映画としても公開され、他のローカル局がドキュメンタリー映画を発信することに大きな影響を与えた」として受賞。

内田社長は「テレビのドキュメンタリー番組というのは、長い時間をかけて作るんですけど、放送はたったの1回、しかも深夜、これが一般的であります。理由は簡単でして、視聴率が取れない、CM(出稿)が期待できない、当社もかつてはそうでした。でも、本当に丹精込めた自分たちの作品を、1人でも多くの人に見ていただいたほうがいいのではないか。そのために、土曜日とか日曜祝日の明るい時間帯に放送することを決めました」と編成の決断を振り返った。

さらに、多くに人に見てもらえるよう映画化にもチャレンジし、「全く0からのスタートでした。そこにいる阿武野(勝彦)プロデューサーが本当にコツコツ道を切り拓きまして、これまでに10本を送り出しました」と説明。昨年から公開された『人生フルーツ』は動員25万人という、この種の映画としては異例のヒットを記録し、他局でもドキュメンタリー番組の映画化という動きが出てきていることも踏まえ、「今回の受賞は、こうした先駆的な取り組みに対するご褒美と受け止めています」「ローカルテレビ局の経営環境は本当に厳しものがございますけど、映像文化、そしてテレビジャーナリズムを堅持するためにも、これからも良質なドキュメンタリー番組の制作とその映画化に取り組むことをお約束します」と意欲を示した。

また、内田社長は、『人生フルーツ』でナレーションを務め、他の作品にも出演した故・樹木希林さんとのエピソードも披露。「初めてお会いしてごあいさつしたときに、希林さんは私の名前を見てニヤッとされまして、『嫌な名前ね』とおっしゃいました。私、内田優(まさる)というんですが、読みようによっては“うちだゆう”と読めるんですね(笑)」と、夫の内田裕也を連想されたことを回想しながら、「そんなユーモラスな一面も忘れられません。あらためまして、感謝とともにご冥福をお祈りしたいと思います」と偲んだ。

  • (左から)松任谷由実、明治書院の三樹蘭社長、東海テレビの阿武野勝彦報道局専門局長、同局の内田優社長、作家の佐伯泰英氏