シンガーソングライターの松任谷由実が7日、都内のホテルで行われた「第66回菊池寛賞贈呈式」に登壇し、受賞の喜びを語った。

第66回菊池寛賞を受賞した松任谷由実

松任谷は「1972年のデビュー以来、高い音楽性と同時代の女性心理を巧みに掬いあげた歌詞は、世代を超えて広くそして長く愛され、日本人の新たな心象風景を作り上げた」として受賞。受賞の知らせを聞いた際は「軽い気持ちで、ちょっとかっこいいかな。ボブ・ディランっぽいかもしれないなんて思った」というが、「メディアで取り上げてくださる方とか、周りの音楽関係者の方々が本気で喜んでくださっている様子を見て、これは意義があることなのかもしれないと思うようになりました」と心境の変化を振り返った。

また「“5分で味わえる短編小説”を作るつもりで、45年間たくさんの歌を作ってきたわけなんですけど、このたびそれらもノベルのお仲間に加えていただいて本当に心から光栄に思っております」と喜びをコメント。「この菊池寛賞を励みにして、これからも細心の注意力、集中力を働かせ、大胆なパフォーマンスを続けていきたいと持っております」と、今後の創作に意欲を示した。

このあいさつで松任谷は、まるで歌詞の一節のような言葉で、次のようにも語った。「音楽は“時間をデザインする”ということです。そこが他の表現と大きく違うところ。私の場合、歌作りは、ある音律にそれしかないという音律を持った言葉を乗せて編んでいきます。プロットが先に浮かぶこともあります。大好きな日本語、インターネットの暴力などによって、この先、英語に駆逐されていく運命にある美しい表現、美しい響き…歌はそれらをより軽やかに鮮やかに、あるときは憂いを含み、雨の匂いや風の色を運んで人々に届き、思い出に刻まれ、無限のストーリーになっていきます。こうしている今も、世界中で年間に500に近い部族やその言語が失われていっていると聞きます。歌はそれを口ずさむ人が死に絶えてしまったら消滅します。そう遠くない未来に私が死んで、私の名前が消え去られても、私の歌だけが詠み人知らずとして残っていくことが私の理想です」。

  • (左から)松任谷由実、明治書院の三樹蘭社長、東海テレビの阿武野勝彦報道局専門局長、同局の内田優社長、作家の佐伯泰英氏