これからの季節、特に気をつけたいのは風邪やインフルエンザなどの感染症。感染を避けるためにできる限りのことはやっておきたいものだ。連日患者と接する医師が自身で行っている対策を教えてもらった。

話を聞いたのは、池袋大谷クリニック院長で、呼吸器内科のスペシャリスト・大谷義夫氏。このほどエーザイが開催した「イータックプレスサロン2018冬」での特別講演「この冬の感染症対策最前線~インフルエンザにならないために出来ること~」をまとめた。

  • 池袋大谷クリニック院長で、呼吸器内科のスペシャリスト・大谷義夫氏

まずはワクチン接種

今の時期にやっていただきたいのは、インフルエンザワクチン接種。インフルエンザは1、2、3月がピークで、11月~12月頃から出始める。いつ打つかというとまさしく今。ワクチンが有効な期間は約5カ月間で、4月上旬までもたせたいから、11月~12月に打っていただきたい。成人と13歳以上の小児では4価(A型2種類、B型2種類)の混合ワクチン1回の接種で十分で、2回接種する必要はありません。

手洗い・消毒をする

感染症の感染には、「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」があります。呼吸するだけで空気感染の可能性があるという論文報告も2018年春に発表されましたが、インフルエンザは基本的には飛沫感染と接触感染が重要です。そのうち接触感染は完全に防げるかもしれません。

まず手洗いが基本。簡単に洗うのではなくて、手のひら、手の甲、指の間、爪先、手首まで30秒以上かけてしっかり洗います。腕時計は外してください。

インフルエンザウイルスは、衣服、紙や繊維では8時間しか生存できないのに対し、表面が平滑な物質(金属、プラスチックなど)では24~48時間生存します。衣服や繊維は15分程度は活性が高いですが、金属の場合の活性は24時間持続です。やはり金属やプラスチックなどが怖いのです。ドアノブや電気のスイッチなど、家庭や会社、学校には危ない場所がたくさんあります。

私はドアノブや電気のスイッチはなるべく指では触らず、手首を使用します。また、スマホなど危ないと思われる場所は消毒で対処しています。クリニックでもインフルエンザの患者さんが受診されると、その度に消毒してまわります。1日30人インフルエンザの患者がいたら30回ドアノブなどを消毒します。

家庭でもクリニックでもペーパータオルを使い、感染のリスクを避けるようにしています。

風邪予防には水うがい

昔は「外出後は手洗い・うがい」が常識でしたが、インフルエンザ感染対策については、現在は厚労省のホームページでも手洗いだけが推奨されています。インフルエンザのウイルスは早期に細胞に入ってしまうので、それを防ぐために数十分おきにうがいをするのは不可能ですから、現実的にうがいでウイルスを除くことはできません。

以前、「緑茶うがいがインフルエンザ予防に有効だった」とする論文を拝読し、私はカテキンの作用に期待し、「緑茶うがい」を大谷流に変法して、緑茶を頻繁に飲んでいます。緑茶を飲むことで喉の乾燥も防げます。

風邪に関しては手洗い・うがいが重要です。風邪予防のうがいは、うがい薬(ヨード液)よりも水うがいが有効だったとする医学論文があります。風邪予防は水うがいで、風邪をひいたらうがい薬の使用がお勧めです。

マスクを正しくつける

飛沫感染対策にはマスクが重要です。しかし、同じマスクを使い続けてはいけません。一つのマスクをつけて、はずしてというのを繰り返すのは危険なのです。マスクの表面にはウイルスがついているので、そこで接触感染が起きてしまう可能性があるのです。半分に折っておいたり、ポケットやかばんに入れておいたりしても、再度マスクを触ってウイルスが手について、接触感染のリスクが増加してしまいます。私は1、2、3月のインフルエンザのシーズンには日に20枚くらいはマスクを使います。

マスクはサイズの合うフィット感があるものを選んでください。隙間ができないマスク選びが重要です。鼻をはずしてマスクをつけるのは論外ですよね。

マスクは、つけるだけではなくてはずし方も重要です。マスクの表面を持ってはずしてしまう人が多いですが、片手でマスクのひもだけ持ってはずせば表面をさわらないので接触感染を避けられます。

湿度を上げて免疫を高める

湿度は50~60%に保つことが目標です。2018年夏に発表された論文では、湿度が高くてもインフルエンザウイルスの感染力は弱まらないことが報告されました。夏インフルエンザ、秋インフルエンザで学級閉鎖が生じるのはこのためです。

しかし、湿度は重要です。湿度が高いほうが喉の線毛の動きがよくなりますので、われわれの免疫が高まりウイルス・異物を排除できるのです。

口の中をきれいにする

歯科領域とインフルエンザも密接な関係があります。口腔ケアを丁寧にするとインフルエンザの発症率が1/10になるというデータがあります。丁寧に口腔ケアすることによって、口の中の細菌が減ることが重要なのです。

口の中の細菌からは「プロテアーゼ」「ノイラミニダーゼ」というたんぱくが産生され、インフルエンザウイルスが気道の中に侵入して増殖するのに関与するのです。これらの口腔内細菌を口腔ケアで減らし、産生されるたんぱくを減らせば、インフルエンザが気道に入りにくいし増殖しづらいということになります。また、口腔内細菌を減らせば誤嚥性肺炎の予防にもなります。私は1日4回歯みがきしてフロスを行っています。

ビタミンDを摂る

食べ物で風邪予防というとビタミンCが重要ではないかとご質問いただくことが多いのですが、ビタミンCが有効なのは非常に疲れている環境です。ビタミンCを有効とするいくつかの論文は、海外の戦場にいる兵士やスキー学校の生徒を対象にした研究でした。われわれ一般市民を対象とした風邪予防の研究では、ビタミンCの効果は限定的です。

ビタミンDに関しては、風邪、インフルエンザ、肺炎などの呼吸器感染症の予防として日本からも海外からも多数のエビデンスがあります。ビタミンDを含む食材は、魚介類やきのこ類が代表ですね。

あとは手のひらだけでいいので日光浴するといいでしょう。関東だと20分、北海道は70分、沖縄は8分、手袋なしで歩くとよいでしょう。

適度な運動・睡眠

日本の常識では「風邪をひいたら寝て過ごしましょう」だと思いますが、アメリカだと風邪の初期ではジョギングやウォーキングに行くそうです。実際に感染後初期の軽度な運動は免疫をあげるといういくつかの科学的根拠があります。なお、過激な運動は免疫が落ちるので避けたほうがよいでしょう。

私は普段は週末に1km・30分くらいプールで泳いでいますが、「ちょっと喉が痛いな」「風邪もらっちゃったかな」という風邪の初期には5分だけ泳ぐようにしています。自分にとっての軽い運動で免疫をあげるのです。もちろん、ウォーキングやストレッチも有効です。

睡眠もやはり重要です。睡眠時間が7時間の人に対して、6時間未満では4.2倍、5時間未満では4.5倍風邪をひくリスクがあるという研究結果もあります。私も睡眠が6時間を切らないように、足りないときは昼寝を15分追加しています。

咳予防にいい食べ物

・ハチミツ
ハチミツは鎮咳薬である「デキストロメトルファン」より有効という論文報告があります。

・コーヒー
1日コーヒーを3杯以上飲むと喘息発症が28%低下したという研究データがあります。

・ブロッコリースプラウト
ブロッコリースプラウト中の「スルフォラファン」が喘息患者の気管支拡張作用があるとの論文報告があります。

・ヨーグルト
ヨーグルトが免疫バランスを整え、風邪・インフルエンザを予防するとの報告があります。

・トマトジュース
トマトジュースの「リコピン」の抗酸化作用で喘息患者の症状と肺機能データ改善の学会報告があります。

風邪・インフルエンザにまつわるQ&A

Q. 風邪の予防にヨードうがい液が有効か?

NO。
水がいいです。

Q.風邪をひいたら風呂に入らないほうがいいか?

NO。
昔は風邪をひいたら風呂に入ってはいけないといわれていましたが、それは銭湯に行っていた時代で湯冷めするから。さっとシャワー浴びたほうが髪や肌についたウイルスが流せるので接触感染対策にもなります。

Q.風邪をひいたら解熱剤を早く飲むべき?

NO。
インフルエンザに対しては、今年からの新薬「ゾフルーザ」や従来からの「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ラピアクタ」といった薬がありますが、風邪のウイルスは200種類あり、それらのウイルスに直接働く薬はなく、風邪薬はあくまで対症療法のみです。

高熱で38~39℃あってつらい日にも会社に行かないといけない場合は、頓服で解熱剤を飲むのはいいですが、1日3回飲んでしまうと回復が遅れてしまいます。前医で処方された解熱剤が切れたときにまた発熱し、肺炎に至っていた患者さんもいらっしゃいました。

熱は病気の重要なサインです。解熱剤は熱を下げるだけで風邪を治しているわけではありません。

Q.風邪のとき、抗生物質を飲むと早く治るか?

NO。
抗生物質は細菌にしか効きません。風邪ウイルスには効きません。ウイルスと細菌は違います。風邪の原因の90%はウイルス感染で、10%が細菌感染です。細菌感染したときは痰や鼻水が黄色や緑色になりますが、喉が痛くて鼻水や痰が透明だったらまず風邪のウイルス感染です。むやみに抗生物質を飲んではいけません。あまり飲みすぎると耐性菌ができてしまって薬が効かない体になってしまいます。

Q.風邪のとき、咳止めは有効?

NO。
咳をしてウイルスを外に排出しますので、むやみに咳止めは飲まないでください。風邪の咳はできれば咳止めは飲まないで去痰薬で痰を切ったほうがよいと呼吸器内科の教科書には記載されております。