肩こりや腰痛は、多くの人が経験する身近な不調です。そのため、「いつものことだから」と深く気せず過ごしている人も少なくありません。しかし、中には肺や心臓、消化器、婦人科系の病気など、整形外科以外の疾患が隠れているケースもあります。長引く痛みや「いつもと違う」と感じる変化を見逃さないために、肩こり・腰痛との向き合い方について整形外科医の鞆浩康先生が解説します。
その不調、実は内科かも? 腰痛・肩こりの意外な原因
「肩こりがなかなか良くならない」
「腰痛が続いているが原因がはっきりしない」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。
多くの場合、整形外科でレントゲンやMRI検査を行い、骨や関節の異常を確認したうえで治療が進められます。そのため、「医師に診てもらっているから大丈夫」と安心してしまっている方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、その症状の裏に別の疾患が隠れている場合もあり、注意が必要です。特に、長年同じクリニックに通院している場合は、自分から症状の変化を伝えない限り、診療方針が大きく変わらないことも少なくありません。そのため、自分自身が体の変化に意識を向けることがとても重要になります。
一般的に、長年続く肩こりや腰痛は、筋肉の緊張や姿勢の悪さ、運動不足などが原因とされることが多いです。デスクワークやスマートフォンの使用時間が長くなる現代では、こうした要因による不調は確かに増えています。
ただし、ここで大切なのは「原因が分かっているから安心」と考えすぎないことです。姿勢や筋肉の問題が指摘されていたとしても、「本当に原因はそれだけなのか」と一歩踏み込んで考えてみることが大切です。実際の医療現場では、一つの症状に対して複数の原因が重なっているケースも少なくありません。
肩こりや腰痛の裏に隠れていることがある病気とは
例えば、肩こりの原因として見逃されがちなのが、肺や心臓などの内科的疾患です。実際に、肩こりや背中の違和感をきっかけに、肺がんや心臓の病気が見つかる場合もあります。
背部痛や腰痛についても同様で、整形外科的な異常が見つかっていたとしても、それだけが原因とは限りません。内科的な要因が重なっている可能性もあります。代表的なものとしては、肝臓、腎臓、膵臓、消化器系の疾患などが挙げられます。特に注意が必要なのは、動いたときだけでなく、安静にしていても痛みが続く場合や、夜間に痛みが強くなるケース、食事のタイミングで症状が変化するケースです。このような場合には、整形外科以外の原因を疑う必要があります。また女性の場合、腰痛をきっかけに子宮や卵巣の病気が見つかることもあります。
「いつもと違う」は見逃してはいけないサイン
症状の「経過」も重要なポイントです。治療を受けているにもかかわらず徐々に悪化していくケースは、特に注意が必要です。治療を続けているけれど改善が乏しい場合だけでなく、症状の性質が変わってきた場合や、新たな症状が加わった場合など、これまでと違う変化を感じたときには、整形外科疾患以外の可能性も考えることが大切です。
日常的に肩こりからくる頭痛に慣れている方も注意が必要です。いつもと同じような頭痛であれば問題ないことが多いですが、「これまでと違う」と感じる頭痛が出現した場合は要注意です。急性の脳血管疾患など、早急な対応が必要なケースもあり、放置すると重大な結果につながる可能性があります。
また、同じ症状であっても原因は一つとは限りません。例えば、もともと姿勢の問題で肩こりがあった方に、内科的な疾患が加わることもあります。そのため、症状の原因を一つに決めつけるのではなく、「他にも原因があるのではないか」という視点を持つことが重要です。
どのタイミングで内科を受診すべき?
では、どのようなタイミングで内科の受診を考えるべきなのでしょうか。一つの目安としては、「これまでと違う」と感じたときです。症状の強さや性質、出るタイミングが変わった場合や、全身のだるさ、体重減少など他の症状を伴っている場合は、早めに別の診療科での評価を受けることが重要です。また、そこまで明確な変化がなくても、「何となく気になる」という感覚も大切にしてください。ふとした違和感を「気のせい」と片づけず、一度内科を受診してみることも一つの選択です。結果的に何もなかったとしても、「異常がない」と確認できること自体が安心につながります。
体のサインは、時に分かりにくい形で現れます。だからこそ、自分の感覚を大切にしながら、「少しおかしいな」と感じたときには早めに対応することが大切です。
