今年も年末調整の季節がやってきました。会社員は、年末調整をすることで確定申告をしなくてもすみますが、中には確定申告をした⽅がいい⼈やしなければいけない⼈がいます。どのような場合に確定申告が必要なのかをお伝えします。

年末調整の仕組みを知る

会社員の場合、毎⽉⽀払われている給与やボーナスから所得税が天引きされています。

所得税は、1年間働くと仮定して、その⼈の所得によっておよその⾦額を天引きしています。そして、1年が経過した12⽉に実際の所得額をもとに今まで天引きした税⾦額を計算し直します。そして、所得税を払い過ぎている⼈は還付され、逆に所得税の⽀払いが⾜りない⼈は追加で⽀払います。これが、年末調整の仕組みです。

皆さんの中でも、年末調整の時に⽣命保険会社から届いたハガキを提出したことがある⼈がいると思います。これは、⽣命保険の保険料を⽀払っていた⼈は、⽣命保険料控除を受けることができるからです。このように、給与所得からできるだけ多くの控除を差し引くことで納める税⾦が少なくて済むのです。

年末調整で還付されない税⾦は?

会社員の場合、年末調整をすることで、払い過ぎた税⾦を還付してもらえるとお伝えしましたが、実は年末調整では還付してもらえない控除が4つあります。それらの控除を受けるためには、⾃分で確定申告をする必要があります。どのような場合に確定申告が必要なのか、1つずつみていきましょう。

1.医療費控除

医療費の合計が10万円を超えた場合、⽀払った医療費から⾼額療養費や保険⾦などで補てんされた⾦額と10万円を差し引いた⾦額(総所得⾦額等が200万円未満の場合は総所得⾦額等の5%)が医療費控除の対象となります。

また、2017年からセルフメディケーション税制が開始され、健康診断や予防接種を受けている⼈が、1年間のOTC医薬品の購⼊額から保険⾦等で補てんされた⾦額を差し引いた⾦額合計1万2,000円を超えた場合に利⽤できます。

今までの医療費控除とセルフメディケーション税制は併⽤することはできないので、どちらかの選択になります。

2.雑損控除

2018年の夏は⾃然災害が多い夏でした。皆さんの中にも、被害を受けられた⽅がいるのではないでしょうか。

⾃然災害や盗難、横領などにより個⼈の資産について損害を受けた⼈は(1)か(2)の多い⽅の⾦額を雑損控除として差し引くことができます。損害額が⼤きくてその年に控除しきれない場合は、翌年以降(3年が限度)に繰り越して控除することができます。

(1)差引損失額(※1)-総所得⾦額×10%
(2)差引損失額のうち災害関連⽀出の⾦額(※2)-5万円
※1: 差引損失額=損害⾦額の合計+関連したやむを得ない⽀出の⾦額-保険⾦等により補てんされる⾦額
※2: 災害関連⽀出の⾦額=災害により滅失した住宅、家財などを取り壊し⼜は除去するために⽀出した⾦額

3.寄附⾦控除

国や地⽅公共団体などに寄附をした場合、寄附⾦控除を受けることができます。その年に⽀出した特定寄附⾦の額の合計額またはその年の総所得⾦額等の40%相当額のいずれか低い⾦額から2,000円を差し引いた額になります。

ふるさと納税も寄附⾦控除の対象になります。ただし、ワンストップ特例制度を利⽤した場合の確定申告は不要です。寄附をした場合は寄附⾦受領証明書が必要なので、保管しておいてくださいね。

4.住宅借⼊⾦等特別控除の1年⽬

今年、住宅ローンを利⽤してマイホームを購⼊した⼈は、住宅借⼊⾦等特別控除を受けることができる場合があります。

1年⽬だけ確定申告をすると、2年⽬からは年末調整で控除できるので、忘れずに確定申告をしてくださいね。

確定申告をしなければいけない場合は?

会社員でも、確定申告をしないといけない場合があります。これは「した⽅がおトク」ではなく、する義務があるというものです。

1.他の所得が20万円を超える⼈

最近は副業を認める会社も増えつつありますね。このように副業などで給与所得以外に20万円を超える所得があった場合は、確定申告をする必要があります。

フリマアプリなどでハンドメイド作品を販売している⼈は、売上から経費を引いた所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。経費と認めてもらうために、レシートなどは保管しておいてくださいね。

また、仮想通貨の売買の利益は雑所得になります。仮想通貨で20万円を超える利益が出た⼈は確定申告が必要ですよ。

2.年収が2,000万円をこえる⼈

たとえ会社員でも、給与が2,000万円を超える場合は年末調整が⾏われません。ですから、⾃分で確定申告をして納める税⾦額を計算する必要があります。

税⾦が還付されるのは嬉しいですが、税⾦を払うのは何となくイヤという気持ちはわからないでもないですが、もともと払う必要のあるお⾦です。きちんと確定申告をして、正しい税⾦の知識を持つようにしましょう。

※画像と本⽂は関係ありません

著者プロフィール: 安部 智香

女性ファイナンシャルプランナーによるお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター/ファイナンシャルプランナー。安部智香ファイナンシャルプランニングオフィス代表。短大卒業後、証券会社に勤務。在職中は、資産運用を担当。結婚退職後は「もっとお金のこと、家計のこと、資産運用のことを伝えたい」という思いで、個人事務所を立ち上げ、個別相談、執筆業務、セミナー、マネーセミナー講師として活動中。