キッズデザイン賞発表! 最優秀賞は逆転の発想で「開いちゃう」ファスナー

キッズデザイン協議会はこのほど、「第12回キッズデザイン賞」受賞作品252点の中から、内閣総理大臣賞など優秀作品33点を発表した。その中から、授賞式で編集部が注目した作品を紹介しよう。

• 「第12回キッズデザイン賞」受賞作品252点の中から最優秀賞に選ばれたのは……

厚生労働省によると、2015年の1～14才の死亡原因は、交通事故や誤えんなど「不慮の事故」が第2位だったという。子どもたちのこうした不慮の死やケガを少しでも減らすべく創設されたキッズデザイン賞は、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ、優れた製品や空間、サービス、活動、研究などを毎年顕彰している。

最優秀賞はYKKのファスナー

今年、最優秀賞となる内閣総理大臣賞を受賞したのが、YKKのファスナー「QuickFree」だ。ファスナーのスライダー部品を改良し、子どもでも一人で開閉しやすく、親も着せやすくなったという。

• YKKのファスナー「QuickFree」、子どもも大人も開閉しやすい工夫が施されている

この製品でとくに注目したいのが、左右に一定の力が加わると、自動的にスライダーが外れてファスナーが開くという機能を備えている点だ。

• 左右に一定の力が加わると自動的に開く

昨今、衣服のフードが遊具やドアノブに引っかかって、重大なケガにつながる事故が問題視されている。この製品は、フードが引っかかるなどして引っ張られると自動的にファスナーが開くため、自分で開閉できない子どもでも脱出できるようになっている。

• フードが引っかかったときなどに自動でファスナーが開く解放機能

通常「いかに外れないか」を考えて作られるファスナーを、「外れた方がいい場合もある」と逆転の発想で開発された点が評価され、今回最優秀賞を受賞した。

プログラミングがここまで身近に

クリエイティブ部門で優秀賞の経済産業大臣賞を受賞したのが、ソニーの「MESH(メッシュ)」。センサーやスイッチなどの7つのブロックを、身近なものと組み合わせてプログラミングすることで、さまざまな仕組みを自分で作ることができる。

• ソニーの「MESH」は直感的にプログラミングを楽しむことができるキット

たとえば、小学5年生が作ったというこちらの作品は、右側のほうきを振ると、動きを感知する青のセンサーが反応して左のブラシが動き出し、そうじを手伝ってくれるというもの。

• 小学5年生の作品。そうじを手伝ってくれる「おそうじロボット」を作った

こうした、「〇〇すれば××が起きる」といった仕組みを自分で考えて実現するという過程で、問題解決力やプログラミング的思考を身につけることができるという。

無料のMESHアプリでアイコンをつなぎ合わせるだけでプログラミングできるため、小学1年生くらいでも操作できるのだそう。すでに小学校から高校、大学まで幅広い教育機関の授業などで導入が進んでいる。一般購入も可能。

• 小学校でのプログラミング必修化に向けて、教育機関でも導入が進んでいる

こんなウォーターサーバーがほしかった

一般部門で経済産業大臣賞を受賞したのが、富士山の銘水のウォーターサーバー「FRECIOUS dewo」だ。ワンプッシュで冷温水が出るウォーターサーバーは、ミルク作りなどに非常に便利な反面、子どもの手の届く位置に80度以上のお湯が出るボタンがあるなど、やけど事故が多発している。

• 富士山の銘水の「FRECIOUS dewo」給水ボタンが上部に設置されているのが特徴

この製品は、子どもの手が届かない上部に給水ボタンが配置された安全な設計になっている上、大人はかがまなくていいため、従来よりも楽な姿勢で操作ができる。また、一袋が7.2リットルと軽量で女性でも交換しやすくなっている。

• 子どもに安全な上、大人も使いやすくなっている。チャイルドロック機能つき

病児保育が一括予約できる

個人・家庭部門で奨励賞のキッズデザイン協議会会長賞を受賞したのが、CI Inc.の病児保育ネット予約サービス「あずかるこちゃん」。

• CI Inc.の「あずかるこちゃん」は病児保育施設が予約できるアプリ

病児保育を利用する上でハードルとなるのが、朝の電話予約や施設ごとの登録など煩雑な手順だ。出勤前にこれをこなせず、利用を断念した経験がある人も多いのではないだろうか。

このサービスで予約申し込みをすると、周辺の病児保育施設とのマッチングを行い、一括で複数施設を予約することができる。さらに、より希望順位の高い施設でキャンセルがあれば、自動でそちらに予約変更をしてくれるという。

• 煩雑だった病児保育の予約や利用申し込みを一括化して、保護者と施設の負担を軽減してくれる

現在はベータ版のみだが、12月から本格運用を開始する予定。このサービスが広がれば、病児保育を利用する親の負担軽減だけでなく、朝、予約電話の対応に追われる施設側の負担も少なくなるだろう。

車の動きを光で知らせる

一般部門でキッズデザイン協議会会長賞を受賞したのが、三菱電機の「安全・安心ライティングに関する研究」だ。車が後進する時にはバックライトが点滅するが、子どもや運転免許を持っていない人は、これが後進の合図だと気づかない場合が多い。

• 三菱電機の「安全・安心ライティングに関する研究」

そこでこの研究では、車が進む方向やドアが開くことを示す図形をLEDライトで路面に表示し、子どもでも直感的に車の動きが分かるような技術を開発した。また、車内でもドアを開ける時や後進時に人が近くにいることを示すライトが点灯するという。

• 後進時やドアを開ける時など事故が起きやすいタイミングで路面にライトが表示される

光で示す技術のため明るい昼間は見えないが、子どもの交通事故の45％が起こってるという夕方から夜間や、立体駐車場などで効果を発揮するのだそう。今後、各自動車メーカーに導入されることで、さらなる安全性の向上に貢献するだろう。

そのほかの受賞作品は以下。

• 優秀作品33点一覧