ヤマハ発動機はこのほど、電動トライアルバイク「TY-E」の開発に至るショートストーリーを公開した。

  • 電動でエンジンに負けない競技車両を、という目標のもと開発された「TY-E」

自動車のEV化が進むなか、同社は2002年に小型スクーター「Passol」を発売して先鞭を付けた。現在も「E-VINO」の販売・普及活動を続けながら次のステップに向けた取り組みを進めているが、その一方、社員の自発的な研究・開発を支援する活動の中から、EV開発の課題である「コンポーネントの高出力小型軽量化」「意のままに操れる運転のしやすさ」を克服する試みを行なっており、その結果、本格的な電動トライアルバイクが誕生したという。

  • 東京モーターサイクルショー2018のプレスカンファレンスで発案・開発リーダーが自ら「TY-E」をお披露目

「TY-E」は、従来の開発プロジェクトとは一線を画すプロセスを経て誕生した。同社の研究部門には、通称“5%ルール”と呼ばれる「エボルビングR&D活動」という制度が存在する。これは、事業に直結した日々の研究活動とは別に、5%の時間とエネルギーを業務に関わりのない研究活動に使おうというものである。「TY-E」の発案・開発リーダーは、プライベートタイムにトライアルを楽しむライダーであり、この制度を利用して「世界で戦える電動トライアルバイクにチャレンジしよう」と試みたという。

  • 「SixONy」というヤマハ独自のナノ膜コーティング技術を使った新しいカラーリングにもトライしている

電動二輪車のもっとも大きな課題は航続距離だが、トライアルは長い距離を走る競技ではない。そこを割り切ることで、競技で必要とされる低速トルクの立ち上がりや発進時の機動性にリソースをかけることができる。複数のエンジン車と乗り比べてテストを行った結果、「意のままに操れる運転のしやすさ」といった項目では、電動「TY-E」がもっとも良いスコアを記録した。

こうしたステップを経て、「FIMトライアル選手権 TRIAL Eクラス」へ、全日本選手権のファクトリーライダー黒山健一選手のライディングで「TY-E」の出場が決定。その檜舞台には、開発リーダーも同行する予定となっている。