会社員の大半は年に1回、定期的に健康診断を行っている。毎年診断が近づいてくるにつれ、アルコールやタバコを控えて少しでも〝健康体〟にみえるよう、悪あがきをしている人も少なくないだろう。そして、春先に健康診断を受けたならば、既に手元に診断結果が戻ってきているはずだ。
ただ、その結果を見て、普段あまり見聞きしない「ヘマクリット」などの単語に「?」となったり、「要経過観察」などの総合評価に対し、「病院に今すぐ行くべきなの?」などと戸惑ったりした経験はないだろうか。
健康診断は受けるのが大切ではなく、その診断結果を踏まえて日常生活を改善させることが重要。そこで今回は、内科医の大川原華織医師に健康診断の結果の見方についてうかがった。
――先日、健康診断の結果が返ってきましたが、あまりにも検査項目が多すぎて何をどう見たらよいのやら、いつも悩みます。診断の結果で特に着目すべき項目は何なのでしょうか
検査結果の項目がたくさんあり、よくわからない方が多いと思いますが、その中でも特に注目してほしい点は、「緊急性があるかないか」ということです。採血やレントゲン結果、超音波など、たくさんの項目別に結果が載っていると思いますが、「要再検査」「要精密検査」が出た方は内容次第で、そして「要治療」などが出た方は待ったなしで早めに病院を受診してください。
「自分には無かった」という方は一安心ですが、要生活改善や要経過観察などがある方は生活習慣病、つまりは将来に虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や脳梗塞を起こす原因となる項目の血圧や脂質異常症、血糖値の項目に上記の記載がないかよく見てください。
――「要再検査」と「要精密検査」とのお話がありましたが、具体的にこの2つはどう違うのでしょうか
要再検査と要精密検査って同じ感じがしますよね。しかしながら、両者はその緊急性が違います。要再検査は、検査結果が日常生活や検査前の食事の影響などで変化しているかもしれないので、「もう一度検査をして確認したい」との意味です。そのため、二次検診をしている病院ならどこに行っても基本的には問題ありません。一方の要精密検査は結果が明らかに異常な範囲であり、当該項目の専門医への受診が望ましいです。
どちらにしても、「ガンなどの悪性疾患の疑い」と出ている場合は早急な二次検査が必要です。それ以外の場合でも、要再検査は二次検診を行っている医療機関、要精密検査は当該の専門医への速やかな受診をお勧めします。
――幸い、今回の結果報告書には「要再検査」も「要精密検査」も見当たりませんでした。次回以降にこれらの文言を見かけたら、可及的速やかに医療機関を訪れたいと思います。ところで、今回の結果では血圧が最低も最高も基準値ギリギリでした。どうも高血圧の気があるみたいなのですが、最低血圧と最高血圧の概念がいまいちよくわかりません……
最高血圧は収縮期の血圧を示します。これは心臓から体へ血液を送り出すために血管が収縮した際に血管壁にかかる圧力を示しています。これに対し、最低血圧は拡張期の血圧を示します。これは心臓に血液が戻ってくる状態で、体の血液量は減少し血管壁にかかる圧力が低下することから低い値となっています。
加齢に伴い収縮期血圧は上昇を続けますが、拡張期血圧は60歳以降に上昇が止まります。最高血圧と最低血圧の差が大きいほど、動脈硬化が進行していることを示しています。ただし、動脈硬化がさほど進行していない若年者や中高年で拡張期血圧が上昇していると、将来の病気の危険性が高まっていることを意味するため、より注意が必要です。
――つまり、加齢に伴って最高血圧は上がり、最低血圧は値が落ち着く傾向にあるということですね。そして、この2つの差の値が大きくなると、動脈硬化リスクが高まると。なるほど、中高年以降は血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞が発生しやすいと言われている理由が理解できました
日ごろから血圧が低めだと虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や脳梗塞のリスクになると言われているため、現在は140/90mmHg以下が推奨されています。糖尿病や腎臓が悪い方などはさらに低い値が推奨されております。また、循環器病に最もなりにくい至適血圧は120/80mmHg未満と言われています。