円谷プロダクションが製作する「ウルトラマン」シリーズの最新作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』が、2018年7月7日よりテレビ東京系全国ネットでスタートする。

ウルトラマンシリーズの新たな魅力を追求した『R/B』では、ウルトラマンロッソ(兄)とウルトラマンブル(弟)の「兄弟ウルトラマン」の登場が話題を集めている。平和な街「綾香市」でセレクトショップ「クワトロM」を営む湊ウシオの息子、湊カツミと湊イサミの兄弟は、街を襲撃する怪獣グルジオボーンから人々を守るため、変身アイテム「ルーブジャイロ」に「ルーブクリスタル」を装填することによって、ウルトラマンへと変身。カツミが変身した「ウルトラマンロッソ フレイム」は炎のエネルギーを力に変えて戦うタイプで、イサミが変身した「ウルトラマンブル アクア」は水のエネルギーを力に変えて戦う。2人のルーブクリスタルを交換することでタイプチェンジし、戦況に応じたさまざまな戦い方を行うことが可能で、次々と襲い来る強力な怪獣たちに負けないパワーを発揮するという。

メイン監督として作品の骨子を築き上げ、第1話、第2話、第3話の演出を手がけるのは、武居正能監督。助監督として『ウルトラマンコスモス』(2001年)に参加して以来、新時代のウルトラマンシリーズの担い手として数々の作品で手腕をふるってきた武居監督は、『R/B』では「家族の絆」「親近感を持てる登場人物」「コメディタッチの物語」を主軸に、子どもたちに楽しんでもらえる最高の作品を創造するべく意欲を燃やしている。ここでは、そんな武居監督に『R/B』製作の狙いや、作品の見どころを大いに語ってもらった。

――武居監督が『ウルトラマンR/B』のメイン監督に、というお話は、いつごろ知らされたのですか。

『ウルトラマンジード』のテレビシリーズが終わって、仕上げが終わったころですから、昨年の11月中旬でした。そのとき円谷プロさんから「来年も声をかけようと思っています」と言われましたが、そのときはまだ『ジード』と同じくローテーション監督として……だと思っていたんです。11月の末になって改めて電話をいただいたとき、今度はメインでやってほしいと依頼があったので、「やります!」と即答しました。シリーズの骨子を担うメイン監督は、助監督を務めていた『ウルトラマンコスモス』(2001年)のころから、ずっと自分の目標でしたから。

――武居監督が企画に参加された段階で、キャラクター設定などはどのあたりまで進んでいたのでしょう。

今度のウルトラマンはヒーローが2人であるとか、大まかなデザイン、変身アイテムなどはだいたい決まっていました。まずヒーローまわりのキャラクター設定を固めてから、それらを脚本の中に落とし込んでいくという作業を行いました。今回の『R/B』ではシリーズ構成として中野貴雄さん、武上純希さん、伊藤公志さんの3人がいらっしゃって、各登場人物の設定や、ひとつの家族を舞台にしたストーリー展開などを組み立てながら、僕や鶴田幸伸プロデューサーたちを交えて意見を出し合って、物語全体の大きな流れを作り上げていくという作業を重ねたんです。

  • 武居正能(たけすえ・まさよし)。1978年生まれ。山口県出身。2000年に日活芸術学院映像学科を卒業後、助監督として『ヌイグルマーZ』『永遠の0』など、多くの作品に参加する。「ウルトラマンシリーズ」には『コスモス』『ネクサス』『マックス』『メビウス』『X』で助監督を務めたほか『オーブ』第13、18、19話『ジード』第7、8、22、23話を監督している。撮影:大塚素久(SYASYA)

――武居監督が『R/B』で特に強く打ち出したいと思われたのは、どんなことでしょうか。

「ドラマ重視の作品を作りたい」というところです。あくまでも子どもが観て楽しく面白い作品にするのは当然ですが、大人の目線からも楽しめる作品でありたいと。鶴田プロデューサーとも、やりたいところが合致していましたので、方向性としてはそれほど分かれることもなく、話し合いながら詰めていきました。また「コメディテイストで」というのは最初から命題としてありましたので、カツミ、イサミ兄弟のキャラクター性の対比を軸に置いて、物語を展開していこうと思いました。脚本の段階で大きな性格付けをして、現場に行ってから、おのおののキャラクターをそれぞれの俳優の持ち味に合わせてという感じですね。

――コメディといえば、カツミ、イサミ兄弟の父・ウシオがセレクトショップを経営し、自身のデザインしたTシャツを販売しているという設定があります。今回の取材でも武居監督がTシャツを着ていらっしゃいますが、ウシオの独特なデザインセンスのため、着ているだけでコミカルな空気をかもしだしますね。

ウシオがセレクトショップ「クワトロM」を経営していて、自身のブランド「Ushio Minato」を展開している、というのは第1話の脚本に書かれていることですが、そのデザイン性を「ダサかわいい」あるいは「ダサかっこいい」風にしようと提案しました。普段はおよそ買わないだろうな、でも、買って着てみると意外にいけるかな、というラインのTシャツを毎回出していこうと思っています。

――監督が普段着ている私服とセンスが似ていますか? あるいは、ぜんぜん違いますか?

こういった文字の入ったTシャツはふだん着ていませんね。でも着てみると、なかなか周囲からの評判がいいんです(笑)。こういう部分からも『R/B』の存在を際立たせたい、という思いはありますね。

――さきほど『R/B』はひとつの家族が舞台だとうかがいましたが、それまでのシリーズのように、専用ユニフォームに身を包んだ特捜チームや超科学を備えた秘密基地などが登場しない、というのは斬新といいますか、かなり思いきった設定ですね。

今回、いちばんおもしろいと思っている部分です。これまでのウルトラマンに変身する主人公って、あまり家族構成などが明らかになっていないんです。ときどき単発エピソードで両親や兄弟が出てくるケースもありますが、そこに主軸を置くということはしなかった。今回の新しい試みだと思います。カツミ、イサミ兄弟って、ウルトラマンに変身しない人生があって、普通に暮らしていたら彼らの人生はまっとう出来るんです。カツミは「クワトロM」で父を支えているし、イサミは大学生で、いずれは研究者になろうとしている。兄弟の家庭環境、自分の世界をしっかり持っている上に、ウルトラマンというさらなる要素が加わってくる形です。「湊家」という設定が作りこまれ、完成されているという面白さを狙いたいですね。