テニスプレーヤーなら誰もが一度は夢見る舞台、歴史と伝統のウィンブルドンテニスが7月2日から、いよいよ今年も開幕する。WOWOWでは、俳優の石黒賢がスペシャルナビゲーター、1996年にウィンブルドンでベスト4入りを果たしている伊達公子がWOWOWテニスアンバサダーとして出演、連日生中継される。「芝はボールが滑ったり撥ねたりバウンドが不規則で、プレーすればするだけ難しいサーフェス。それでもウィンブルドンはすごく好きでしたね」と聖地への思いを語る伊達に、ウィンブルドンでの勝ち方、そして、ウィンブルドンで勝つことがいかに難しいかなど、今年の大会のみどころを聞いた。

  • 伊達公子

まず、日本のテニスファンにとって注目すべきは、2人の日本選手だろう。全仏オープンで3大会ぶりにグランドスラムに復帰した錦織圭、そして3月のインディアンウェルズでWTAツアー初優勝を果たした大坂なおみだ。

全仏オープンでは4回戦でドミニク・ティームに敗れた錦織だが、右手首のケガからの回復状態は問題ないように見える。それでも、「元のレベルに戻るには、まだ時間がかかるのではないか」と見ている。

「ケガから復帰する段階では、ショットのフィーリング、試合の中でのショットの選択というところで迷いが出たりするもの。それを埋めるためにはやはり時間がかかってくると思う」と語る一方で、「大会で勝ち上がっていく中で自信を取り戻し、試合勘が戻っていくものなので、試合をこなしていくことがカギになる」とも。試合勘が戻ることで、錦織らしい多彩なショットを、どんな場面でどう使うかといった発想も、芝だからこそより生きてくるだろう。また、重要なのは大会前半に「取りこぼしなく勝ち上がること」だと伊達は指摘する。雨の中断などが頻繁に起こるウィンブルドンだけに、いかにいい精神状態をキープしてプレーするかも大切だという。取りこぼしなく勝ち上がった先に、自身初のウィンブルドンでのベスト8進出、さらには初優勝も見えてくる。

一方、大きな可能性を秘めた大坂については、「彼女のサーブ力、一発のショットの威力を考えれば、優勝の可能性もゼロではない」と、そのポテンシャルを高く評するが、だからこそ「技術という面でもメンタル面でも、まだまだ成長している過程。プレッシャーから解放されて、のびのびとプレーしてほしい」と語る。

ビッグサーブ、ビッグフォアハンドという彼女ならではの武器は試合の大きなみどころになるが、大坂に期待したいのは「勝てる試合をいかに楽にものにしていくか」だという。「それを覚えていくと、2週目が簡単に見えてくるし、相手に圧倒的な脅威を与えることができる」。ドローにもよるが、「カギとなるのは、1週目の後半にいかにギアを上げていくか」。格上に強い大坂だけに、ランキングの中堅どころと当たる可能性が高くなる1週目の後半の戦い方が大きなカギと見る。ここを乗り越えれば、一気に頂点へと駆け上がる可能性も出てくるだろう。

そのほかではやはり昨年、ウィンブルドンで歴代最多となる8度目の優勝を果たしたロジャー・フェデラーは、今年も優勝候補の筆頭だ。注目選手として、伊達も第一声にその名前を挙げた。「プレーが芸術といっていい。強い中に美しさ、柔らかさがある」と、ウィンブルドンのフェデラーのプレーには大絶賛。そのフェデラーは、今年は、全仏オープンをはじめとするクレーの大会をすべてスキップして、ウィンブルドンに照準を合わせてきた。「普通ならブランクを作るということは選手には怖いことですが、それよりも体力の温存を選んだ。それだけ自信があるということでもあるし、エネルギッシュでいられるということを選んだ。よりパワーアップしてウィンブルドンに入ってくるでしょう」と期待を込めた。

フェデラーの対抗馬となりそうなのは、全仏オープンで決勝へと進んだドミニク・ティームや今季ツアー2勝と好調のアレクサンダー・ズベレフといった二十代前半の若手か。「彼らの勢いを見れば、いつフェデラーやナダルなどのポジションと逆転してもおかしくないものがあり、それは最大のみどころになる」とベテラン対若手の構図を男子トーナメントのみどころの一つとして挙げる。

また、「ここに、長身でビッグサーブを武器とするマリン・チリッチやフアン マルティン・デル ポトロといった選手も絡んでいくのでは」と男子シングルスを展望する。  一方、女子は誰が勝ってもおかしくない混戦だ。全豪オープンはカロライン・ウォズニアッキ、全仏オープンではシモナ・ハレプがそれぞれ悲願のグランドスラム初優勝を果たしたが、伊達が優勝候補として挙げたのは2011年と14年にウィンブルドンを制しているペトラ・クビトバと前年王者のガルビネ・ムグルッサ。

「芝というコートサーフェスを考えれば、サーブ力、主導権を握れる一発のショットを持っている選手が有利になる。クビトバは、それに加えてレフティーというアドバンテージがある。芝は切り返しのフットワークが難しいので、オープンスペースができやすい。その意味で攻撃力のあるレフティーというのは優位になる」とクビトバに関しては、ウィンブルドンではランキング以上の強さを見せそうだ。これに、史上最多のグランドスラム優勝24回の大記録にあと1勝と迫ったセレナ・ウイリアムズ、ウィンブルドンで5度の優勝を誇り、昨年も決勝に進出したビーナス・ウイリアムズといったウィンブルドン上位常連が優勝争いに絡んでくるか。

経験値が大きなアドバンテージとなるウィンブルドンだが、新たなスターが生まれるのもまた聖地の一面でもある。テニス界に刻まれる大記録が生まれるのか、新たなスターが誕生するのか――。聖地が紡いできた歴史に、どんな1ページが加わるか、今年も見逃せない。

ウィンブルドン選手権は、7月2日~15日の期間、WOWOWで連日生中継。また、事前番組『錦織圭・大坂なおみ 世界の頂点へ!ウィンブルドンテニス開幕直前スペシャル!』も7月1日(19:00~)に放送される。