マイナビニュース編集部がオフィスを構える東京・竹橋のパレスサイドビル。ここがドラマ撮影の御用達になっていることをご存じだろうか。現在放送中の4月クールのドラマでも5作品が使用しており、特にここ数年、多くのロケが行われている。

都心に星の数ほどビルが建つ中で、なぜパレスサイドビルが重宝されているのか。管理会社の毎日ビルディングを取材した――。

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    波瑠(左)と高田純次=『未解決の女 警視庁文書捜査官』第1話より(テレビ朝日提供)

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    ロケ場所の廊下=毎日ビルディング提供

最初に撮影された作品は…

パレスサイドビルが開館したのは、ビートルズが初来日し、近くにある日本武道館で公演を行った1966年。巨大な長方形のビル2棟がスライドするようにそびえ立つという現在でも斬新なデザインで、建築業協会(BCS)賞、空調衛生工学会賞、BELCA賞、モダニズム(近代主義)建築20選など、さまざまな建築賞を受賞している。

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パレスサイドビル外観=同

ここで初めて撮影が行われた映像作品は、開館翌年の67年に公開された大島渚監督の映画『日本春歌考』。当時の最新ファッションに身を包んだOL役の小山明子(大島監督夫人)が、地下鉄東西線の竹橋駅の改札口を出て、エントランス天井下に見える「パレスサイドビル」の文字の下からエスカレーターに乗るシーンだ。

その後も、73年の『化石の森』(篠田正浩監督)で使われ、吉永小百合が新聞記者を演じた94年の『女ざかり』(大林宣彦監督)では、なんと毎日新聞社の編集局内で撮影。同年に公開された『トカレフ』(阪本順治監督)では、当時ビル内にあった輪転機が回る地下印刷工場、エレベーターホール、正面玄関など、館内の各所が大きく映し出された。新聞社が入居するビルならではの事例と言えるだろう。

転機は天海祐希主演『BOSS』

そんな中、09年4月クールに放送された天海祐希主演のドラマ『BOSS』(フジテレビ系)で、警視庁のシーンとしてロケが行われると、これをきっかけにテレビドラマでの使用が増加する。同年10月クールには『不毛地帯』(同)で、唐沢寿明演じる壹岐正が入社した近畿商事のロビー、小栗旬主演『東京DOGS』(同)で、警視庁の屋上という設定で使用。こうしてフジのドラマから他局にも広がっていったという。ここ数年は、ドラマ以外に映画やCMなども含め、年間30件程度の撮影が行われ、今年も同じペースで推移している。

パレスサイドビルのドラマロケが増加した理由を毎日ビルディングに聞いてみると、ドラマの制作サイドからは、都心という利便性の良さ、平日も撮影可能でスケジュールが組みやすいこと、皇居を見渡すような立地で緑の向こうに高層ビルが立ち並ぶという絶景が撮影できること、といった点が挙げられているそうだ。マイナビニュースが局に取材すると、大きな撮影機材を運ぶトラックが横付けしやすいという声も複数から聞かれた。

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    屋上から皇居を臨む=同

増加の背景に刑事ドラマ人気

そして、近年は視聴率が見込める刑事ドラマが増加。実際は桜田門にある警視庁の屋上という設定で撮影しようとすると、パレスサイドビル以外に皇居を臨むロケーションがないことから、おのずと建物内も含めて使用する作品が増えることになったようだ。人気シリーズ『相棒』(テレビ朝日系)でも、数回にわたって利用されている。

今クールでは、きょう7日に最終回を迎える波瑠主演の『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレ朝系、毎週木曜21:00~)の第1話で、朋(波瑠)が配属先に向かうため、財津(高田純次)に連れられて警視庁の廊下を並んで歩くシーン。坂口健太郎主演『シグナル 長期未解決事件捜査班』(カンテレ・フジ系、毎週火曜21:00~)では、警視庁のエントラスシーンで使用されている。

警視庁の設定以外でも、長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』(フジ系、毎週月曜21:00~)では、第4話の佐野史郎演じる2代目社長の会社「俵屋フーズ」、江口洋介主演『ヘッドハンター』(テレビ東京系、4日終了 ※Paraviで配信中)では、第5話の板尾創路演じるサラリーマンが勤める「北東鉄鋼」と、いずれも企業のロビーとして使われた。

さらに、ディーン・フジオカ主演『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジ系、毎週木曜22:00~)では、第1話で暖(ディーン)が取り調べを受ける警視庁の外観を、パレスサイドビルの屋上から撮影したそうだ。

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    企業などのロビーのシーンで使用される正面玄関の階段=同

今年で築52年となり、普通のビルなら建て替えてもおかしくない年数だが、パレスサイドビルは計画的に改修を実施しており、実際に働いていても老朽化を感じることはない。毎日ビルディングの村田真人業務部長は「安心安全、そして伝統あるこのビルをいかに大事に守っていくかを考えて、築60年、70年、80年も見越してメンテナンスしています」と話しており、制作現場の人気ロケスポットとして、今後もまだまだ活躍することになりそうだ。